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20211202、1203

1202
朝、布団のうえで目をひらいても、それが起きたということにはならないのだと彼女はいった。そこから体を縦にするのか、また眠るのか、選択しなければならないと。それで私は寝たまま本を読むことにしたのだけど、起きているのか寝ているのかわからなくて、それでもぐんぐんとページはめくられ、すっかり頭を乗っ取られてしまってからはもう外にはでたくないとなり、いよいよ大変だった。だって動きたくないんだもの。それなのに私を置いて時間は進み、引越しの手伝いをしにきてくれるひとが二人きてしまう。なにがなんだかわからないうちにすっかり我が家は段ボールだらけ。「悲しみというのは何度出会っても遠慮がないと思うのだ。」といった彼女の気持ちが今ならすっかりわかるようになった。だけどもほんとうに助かった。助かった。心と体が一致しないこの居心地の悪さはもうあまり経験したくはなくて、泥のように眠った。夫は帰ってきて早々に他人が家にいた形跡があるのってやっぱりちょっと、というようなことをいっていて、すっかり根暗夫婦。でもほんとうにありがたいことなんです。お礼に島の玉ねぎを送るつもり。


 もうわたし、ごはんの話していない、これは食のエッセイなのに、食べたごはんも思いだせない、もう何も、思いだせないって言ってみる、思いだせない口から編まれる言葉のすきまにときおりあなたとわたしだけに光ってみせる光があるから、地味で相も変わらずでどうしようもないようなこの鮮やかな難局を、あなたもわたしも乗り越えることができると思うのですがこれについてはいかがでしょうか。


1203
朝、布団のうえで目をひらいても、それが起きたということにはならないのだと彼女はいった。そこから体を縦にするのか、また眠るのか、選択しなければならないと。それで私は体を縦にすることにした。たのしみにしていたアメトーークの読書芸人をみて、新しいひとたちの選書がとても好みで私はもう嬉しくて嬉しくて。そこからは通院で、ご褒美にローソンで生クリームこっぺぱんを。本も。あと何時間か親友と電話も。ご褒美ばかりで困ってしまう。


 そのときにベランダからの様子が晴れているならば、なにか、今日こそはなにか、意味のあることをやってみようと思う、自分にもそれができるのだと、そんなふうに力強く少しだけ、思ったりもするのだけれど、しかし雨だったり低い雲の予感がしたらばこのまま目をつむって、何事も起こらないように、また、起きるかもしれない何かの可能性への見方になってはいけないような、そんな気もしてしまうので、動かないでいることのほうがいいと、誰も何も傷つかないと、生きてる年数が増えれば増えるだけ、そう思うようになってきた



■いつか深い穴に落ちるまで 山野辺太郎著

■十二月の十日 ジャージ・ソーンダーズ著


よもうね。


ほとんどのことは、未映子さんよ。
それじゃあまた明日。

よろこびます。