現実的に可能で効果がありそうな少子化対策

少子化の原因は「個人の自由の尊重」や「男女平等」といった社会の価値観、風潮に基づくものが多く、それらはただ金を配るだけで解決するものではない。また、先進国全体で人権思想が浸透している以上、それらの原因に言及することも現時点では容易ではない。

その為、長期的には社会の価値観を変えることを目指しつつ、短期的にはそこに抵触しない形での対策を打っていく必要がある。今回は、筆者が有効だと思う対策とその理由についてまとめてみる。

1.インフラ系作業員の待遇引き上げ


先述の通り、女性には自分より上の男性としか結婚しようとしない上昇婚志向がある。ならばその志向をハックして、男性しか就けない、就こうとしない職業の待遇を改善すればいい。

その典型例がインフラ系の現場作業員である。肉体労働であるため女性は就業しにくく、また就業したいと考える女性も少ない。その為、現場作業員の収入を増やし若者を積極的に招き入れる事は、女性が結婚したいと考える男性を増やし婚姻を増やすことが出来る。

インフラ系の作業員は社会に必要不可欠な存在だが、近年では人手不足の声も囁かれている。政治が介入して待遇を改善することは社会維持の面からも十分に説得力がある。また、「給料を上げろ」という声は長らく世間で言われてきたことであるため、実際に政策を打った際に納得も得やすい。(たかが現場作業員ごときに!といちゃもんを付ける人も現れるだろうが、その人の方がバッシングされる風潮にもなってきているので無視するのが懸命である)

現状では最も効果のある施策と言えるだろう。

2.若者の地方移住促進


東京始め都会への若者の流入、集中が続いているが、これも非婚化や少子化の原因となっている。ひとりでも不自由なく暮らせる環境が整備されており、おひとり様を容認する価値観も強いために無理をしてまで結婚しようという意識が起きにくいからである。

その為、都心への若者の人口流入の抑制と地方への移住が非婚化を抑制する上で重要となる。特に、都心流出の著しい若い女性を地方に呼び込むことが重要である。

地方は都会のように煌びやかなモノを揃えるのは難しいため、地方にしかない暮らしの独自性を出して若者を呼び込む事が望ましい。雇用は勿論だが、例えばアウトドアが好きな女性向けにそれを楽しめる場所が多いことをアピールして呼び込むような取り組みをやってみてはどうだろう。

現代、特にネットでは地方暮らしはデメリットだらけであると酷評されがちなので、環境を整備しつつ外部に向けてアピールを行い、若者が地方へ来るよう働きかけるべきである。

3.婚活サービスの抜本的見直し


近年の若者が草食化した要因のひとつに、自由恋愛によってモテる人とそうでない人の格差が拡大し、実質二極化している事があげられる。

モテない男性はパートナーを得るためのハードルが高く努力を重ねても中々たどり着くことが出来ない。一方で女性も遊び目的のハイスペ男性と関係を持つことで男性に求める基準が跳ね上がってしまったり、ハイスペ男性から捨てられたあとに男性への恨みを募らせて結婚から遠ざかってしまう。また、こうした男女間での食い違いが(主にネットで)論争や対立を起こし、恋愛や結婚に否定的になる要因となっている。

その為、行き過ぎた自由恋愛社会を是正して、もっと違う形で結婚にありつける環境を整備する。

その為に、以下の3つが有効だと考える。

・マッチングアプリの規制、注意喚起
今の自由恋愛社会の形成に大きく関わっているのがマッチングアプリである。気軽に相手と出会える一方で気に入らなければすぐに関係を切られてしまい、よっぽど相性がいい相手でなければ関係を持続させる事は困難である。マッチング相手からこっぴどい扱いを受ける人も少なくなく、そのトラウマで恋愛や結婚を諦めてしまう人もいる。その為、マッチングアプリのサービス内容について規制をかけたり或いは利用上のトラブルについて注意を呼び掛けるといった対策を打つべきである。

具体的には有料の結婚相談所と同じく独身証明書などの書類提出を義務化する事や、snsのトラブルと同様の形式で注意喚起を行う事を行う。利用者の保護する方法として一定の効果は見込める。

・AI婚活の導入義務化
AI婚活は相性のいい相手を機械的に判別し相手に紹介できるため、容姿やプロフなどの主観的な判断に囚われずいい相手と出会うことが出来る。その為、通常の婚活と比べて金銭面、時間面、労力面での負担を減らし、婚活疲れで脱落する人を減らしたり効率よく良い相手と出会えたりすることが期待できる。婚活サービスへのサービス導入を義務付ければ、婚姻を増やせる可能性がある。

・会員制お見合い制度の創設
かつてのお見合いのような相手探しから場所のセッティング、各種サポートまでを一律で受けれて結婚できる仕組みを、会員制の制度として導入する。これにより恋愛が苦手な人や自由恋愛では相手にされない人でも結婚できる確率を上げる。現在でも有料の結婚相談所で同様のサービスは存在するが、料金が高く一定の収入が無ければ相手として選ばれないなど参加のハードルは高い。その為、無料または低価格で参加できるように国や自治体主導で行うのが望ましい。独身証明書等の書類提出は勿論、入会時に誓約書を書いたり途中退会や違法行為発覚時は違約金をとるなどして真剣に結婚を希望する人のみが参加できるようにする。

恋愛結婚が当たり前の価値観や環境を見直し、かつての文化の良いところを再び取り入れることで結婚からあぶれる人を減らす。

5.独身を貫いて失敗した事例を取り上げる

詳しくは以前書いた記事を参照いただきたい。20代の頃の気分で一生暮らせると考えると、中年になって大きく後悔することになる。そうした事実を若い人に向けて絶えず発信することで道を踏み外す人を減らし最終的に少子化対策にも繋げる。


6.高卒就職者の給与や待遇を改善する


大学全入時代と言われるようになって久しいが、大学を出てから就職、結婚、出産という現代の人生設計は晩婚化や晩産化、それによる少子化や不妊の原因になっている。

近年では夫婦が望む子供の人数が減少傾向にあるが、その要因に「高齢で出産、子育てをしたくない」というものが高齢の夫婦で大きなウェイトを占めている。晩婚、晩産は不妊だけでなく子供を持つ意欲も低下させるのである。

第16回 出生動向調査より

また、大学へ子供を行かせることが当たり前となる社会は当然のことながら養育費も膨れ上がる。そして、学校の中でも良いポスト(=将来のエリートコース)を狙うべく受験競争や塾通いが始まれば養育費は一層膨れ上がる。

親にとっては子供を育てるハードルが高いと感じ、子供を作らないか、作っても少数でひとりにかけるお金を増やそうとする。あるいは子供が奨学金を借りてその返済の為に苦しく結婚から遠ざかる生活を送る事を余儀なくされる。

お金があっても少子化は解決しないことは海外の事例を見ても明らかであるが、それに起因する「子育てはハードルが高い」という風潮は産み控えの要因として無視できないだろう。

その為、大学に行くのが当たり前という風潮を見直し、高卒で社会に出ても十分な生活ができる社会設計をしていくべきである。収入面で大卒と格差がある状況を是正し、20代で家庭が持てるだけの経済力を(主に男性に)持たせるのである。

これによって、社会に出てから生活が落ち着くまでの年齢を繰り上げ、晩婚化の抑止を促す。また、親にとっては「最低限高校まで行かせれば良い」という考えを持たせて子育ての心理的なハードルを下げ、複数の子供を持つことに前向きにさせる。

(あまりにも政治的に正しくない考えであるが、高校を出たら就職という流れを男子だけでなく女子にも普及させる事で、一部の国で少子化の原因として調査結果が出ている女子の高学歴化にも間接的に対策をとることができる)

7.行き過ぎたジェンダー平等施策への抗議


男女関連の話題が世間で拗れてしまう理由にはジェンダー関連の学問や活動が多様性や男女平等といった社会の風潮に合わせて権力を持ってしまったこともある。

本来は男女それぞれの特性に合わせて振り分けた役割分担を「時代遅れの差別的な文化」と非難し、あらゆる分野を平等、ジェンダーレスにすることが正しいものとして広めた。この結果、元々の男女の特性と社会における望ましい振る舞いがミスマッチを起こし、恋愛や結婚でも障害を起こしている。

また、少子化対策について公で言及する際にも、自分達の思想にそぐわない発言が出れば差別的だとして批判し発言者をキャンセルに追い込む。故に対策についての議論が大きくできない状況を作り出している。

そのことから、ジェンダー学やそれに関連する活動についてNOを突き付け、影響力を持たせないようにすることが広義の少子化対策になる。

具体的には、

・男性が多い学問や職業はそもそも女性が行きたがらないこと

・専業主婦希望の女性が近年増加、女性のフルタイム就業者は30年近く全く伸びていないこと

・キャリアを積んだ女性でも自分より稼げる男性と結婚して自らハードな仕事から降りる、自分で家族を養う女性は少ないこと

一例:令和4年版 男女共同参画白書より(https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/html/honpen/b1_s00_01.html)

これらの統計や各種調査を基にした事実を広め、「女性が社会の中で一方的に抑圧されている」という筋書きを否定していく事が望ましい。当人たちは恐らく意識を変えない可能性が高いが、周りにいる人達を共に批判する側に呼び込むことは十分に可能である。

ジェンダー学の社会における影響力や権威を無くしていくことで、本格的に少子化問題の解決に向けた議論が行えるようになる。

8.子供を産んだ女性を労働面で優遇する


権利だけでなく責任面でも男女差を無くす真の男女平等政策を取る場合に有効になる策。

世界的に少子化が進む中でも経済発展と高い出生率を両立させているイスラエルの取り組みを参考とする。

イスラエルでは女性にも兵役の義務が課せられており、妊娠、出産した場合にはこれが免除される制度がある。これがイスラエルが高出生率を保つ一因ではないかと言われている。

論文『現代イスラエルにおける軍隊と女性』より

これを応用し、日本における女性の社会進出とキャリア進出を進めるのと並行して妊娠、出産時の労働免除制度を拡充する。

例として「女性が申請すれば子供一人あたり3年は育児休暇が取れるようにする」などといった制度を作ってみてはどうだろうか。28歳で第一子を出産すれば31歳まで育休を取れるようにし、第三子まで続けて産めば最大で37歳まで育休を取れるようにする、という形にするのである。こうすれば女性にとっては実質的な労働免除期間が得られ、子供を作ることに社会的なメリットを見いだせるようになる。それにより多子、多産の家庭を増やすことができる。

上記はあくまで理想論であるが、このような形で社会の側から子供を作り育てていくメリットを提供する事で子育てに前向きになれる社会を作る。

9.40歳以上への独身税導入


40代に入っても未婚、子なしの世帯に独身税を課すものである。要は「子供という形でリソースを提供する気がないのならせめて金という形でリソースを提供しろ」と圧力をかけるのである。

独身でいながらも社会保障や将来の介護は受け取り、他人の子供に負担を背負わせるつもりの者は実のところ少なくないだろう。故にそうした"タダ乗り"を防止し、ひいては早期に結婚や子育てをするよう若者に促すのである。

当然だが、独身税と公言して導入すれば世論が大荒れになるのは間違いないだろう。故に独身税の名前は出さず、違う名前で間接的に税をかける方法が現実的である。また、諸事情により結婚や子育てが難しい人への一定の配慮は必要であろう。

他の支援策が功を成さず行き詰まったときの最終手段として独身税の導入は考慮しておくべきである。

10.結婚しろ、子供を産めとしつこく口出しする


政治や企業等の努力に委ねるのではなく、我々自身が若い人に結婚や子供のことに言及して早いうちにするよう促す。

当記事で挙げた対策の中で一番手っ取り早くできる取り組みであるが、根本的な問題解決を目指すなら一番重要になる取り組みでもある。

そもそも少子化がこれほどまでに進行し、未だ解決の糸口が見えてこないのは社会全体で「結婚や子供に囚われない生き方を尊重しよう」と言ってそれを手放しで賞賛してきたからである。この風潮が蔓延したことで、「やらなくてもいいんだったら面倒くさいからやらない」と役割から降りる若者が増え、それに対する対策も「価値観や生き方を押し付ける差別的なもの」として大々的に打つことを出来なくしてしまった。

過去の時代の人達が結婚や子供に口うるさく言及し、それを規範にしてきたのは、人権意識の低い低俗な暮らしを送っていたからではない。そうしなければ社会が持続できないことを本能的に察知していたからではないだろうか。

故に、もう一度過去の規範に則り、結婚や子供の事について口うるさく若者に言っていくべきである。同時に、「子供を産んで育てればそれだけで一人前」という考えも復活させて、子供を育てることを躊躇う人達も前向きにさせる。子育てを「社会全体で行うもの」へ回帰させる。

冒頭で書いた通り、少子化は価値観や風潮によるところが大きな原因となっている。そのため、根本的な解決のためには、その価値観や風潮が変わる必要がある。それは政治に出来るものではなく、我々が率先して行わなければならない。故に、ウザがれても結婚や子供の事を率先して"口出し"していくべきなのである。


以上、10個の対策案を考えてみた。特にやりやすいのは5、7、10であろう。政治だけでなく、我々も率先して行動する事で少子化問題解決の糸口は見つかると考える。

読者の方の考えももしあれば是非コメント欄でお聞かせ願えればと思う。


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