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【好きになる人はいつも海の向こう〜Episode 3〜】

一目惚れした彼がフランスへ留学して3ヶ月が経った頃、私たちはある場所で再会を誓った。

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全く色気のない一夜を共に過ごしながらも、

膝枕でグッと距離が縮まった(ような気がしていた)私たち。

なんだろう、あの歯がゆい空気感。

起きたら、まるで何もなかったかのように"友達"に戻っている。何もなかったんだけれども、膝枕は割と事件。

「おっすおはよ〜」

「お〜よくねれたか?」

みたいな。

その日は一日パリを観光し、夜は列車に乗って彼の留学先であるDijonへ行く。

フランスには、立ち飲みの「スタンドコーヒー屋」が多く点在し、

安くて上質なコーヒーがサクッと飲める。

フランス語が堪能な彼に任せてオーダーをしてもらう。

自分ができないことをできる人って、かっこいい。

美術館を周り、パリ観光を満喫。


観光を楽しんでいるというより、散歩して歩いている所にたまたま素敵な場所があったのか。それとも、好きな人といるからなんでも素敵になったのか。パリだからなのか。

付かず離れずの微妙な距離を保ち、私たちは手をつなぐこともなく、目に入るものなんでもゲラゲラと笑い飛ばした。


もうすぐ列車の時間だ。

行き当たりばったりで駅に行き、行き当たりばたりにチケットを買い乗り込む。


こんな風に、「しおりのない遠足」をこの9日間楽しむのだ。


決まっているのはただ1つ。

私は、パリへ到着し、9日後にイタリアから出国する。

ただそれだけ。


電車に乗り込み、数時間の列車旅行を楽しむ。

寒いから、と、彼が膝にブランケットをかけてくれる。

再会こそ「変態歓迎」のプラカードだったけど、

終始彼はジェントルマンだった。


また私たちは、天竺鼠がどうのと色気のない話をしてゲラゲラ笑う。


でも、たった一つだけ昨日の私たちと違ったのは、


ブランケットの下で、


私と彼は、しっかりと手を繋いでいたこと。


ブランケットの下で起こっていることは、別世界の出来事のように、私たちは"友達”な話をしている。

列車がカーブするたびギュッと強く握るのも気がつかないみたいに。


「このまま一生、Dijonに着かなきゃいいのに。」

とさえ感じた。

列車が着くと、

お互いパッと手を離す。


「現実世界」に戻るかのように。

そして、また"友達"に戻って話し始める。


彼の家に着く頃には日がすっかり落ちていた。


彼のアパートは、一本の木を中心に螺旋階段が張り巡らされ、ぐるぐると階段を登ると最上階に彼の部屋があった。


すごく、すごく素敵なおうちだった。


ワンルームのスタジオで、ソファに座ると、お手製の料理がたくさん出てきた。パンにパテを塗ったものや、オリーブオイルとお塩の効いたサラダ、美味しいワイン。シンプルなのにおしゃれこの上ないのにどこか素朴。完璧かよ。


夜が更けてもまだ私たちは"友達”を続けていた。


そろそろ寝ようか、ということになり、昨日も川の字で寝たのもあって自然に広いベッドでゴロリと寝転ぶ。


「男の子やのに意外と部屋綺麗にしてるな〜」

その一言で、彼の言葉が溢れ出す。


「…ほんまはさ、


瀬菜が来るから、めっちゃくちゃ掃除した。

このシーツだって買い換えた。

空港で待ってる時、

おしゃれなホテルめっちゃ検索して予約した。

ほんとは、ずっとずっと、瀬菜がここに来るのを楽しみにしてた。」


#思考回路がショート寸前 (再)!!!!


余裕に見せてたようで、影ですっごく計画立てて動いてくれてたことに感動した。


その時初めて、私たちはブランケットの下じゃなく、ちゃんと自分たちが行きてる"現実世界”でお互いの気持ちを確かめた。


4月のあの日から、ずっとお互い気になってたんだ。

友達がしょっちゅう会いにきていて、男女分け隔てなく交友関係の広い彼だから、この旅も深い意味なんてないんだろうと思っていた。


「しおりのない遠足」は、この日を境に

「予想不可能な長期間デート」へと変わった。


私の帰国はすでに7日後に迫っていることは、その夜は忘れることにした。


To be continued..


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