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胸アツ考察。ローマ帝国、魅力的すぎるシステム

まだまだ残暑が続きますね。
私はこの夏、避暑とリモートワークをかねて熱海で過ごしています。
こちらもそこそこ暑いですが…

さて今回は、いずれどこかのタイミングで考察を深めたかった、「歴史に学べるビジネス戦略」について、ようやく触れてみようと思います。

私は今、大学でアートやデザインを学んでいますが、哲学と歴史についても、趣味程度ですがもう30年近く、本を始めとした色々なメディアを楽しんでいます。

簡単なことではないですが、このテーマの考察がうまく整理できれば、どんどん続けて書いてみたいと思っています。

最初はやっぱりこれです。

ローマ帝国のすごさをサマってみる

ローマ帝国は、紀元前27年に初代皇帝アウグストゥスの統治により始まり、その領土は最盛期に現在のイギリスから中東に至るまで広がり、東ローマ帝国が、オスマン帝国に滅ぼされる1453年まで、実質的に存続した帝国です。帝国の寿命、なんと約1,500年。
その強さの秘密は、もちろん軍事力だけではありませんでした。政治、経済、文化の多方面にわたる、いわば”多角的な成長戦略”にあり、特に、2世紀にわたる「パクス・ロマーナ(ローマの平和)」は、帝国の最盛期を象徴する時代でした。
ネルウァ、トラヤヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、マルクス・アウレリウス・アントニヌス帝の、いわゆる「五賢帝」を経て、内政の安定と経済的繁栄が進み、この時期に培われた要素はすでに、現代の企業経営にも多くの示唆を与えてくれます。

ローマ帝国の最盛期を支えた五賢帝

ここでは、ローマ帝国時代でも、私が非常に魅力を感じている、長期繁栄を象徴するような帝国の”システム”に注目し、語ってみたいと思います。

敗戦を糧にしたポエニ戦争をなぞる

ローマ帝国の繁栄を支える”システム”について、語るべきエピソードはたくさんあります。
なかでも今回は、カルタゴの最強軍略家「ハンニバル」と地中海の覇権を争ったことで有名な、ポエニ戦争について考察してみたいと思います。

このポエニ戦争は、第一次~第三次まで起こっており、いずれもローマ側が勝利する結果となるのですが、注目すべきはその過程です。
とにかくローマは敗北、しかも壊滅寸前までやられてしまう争いが目立つということです。
なのに、どうして「要所」では最終的に勝利を収められたのでしょう。

普通だったらあきらめるレベルの敗北の数々


ローマはカルタゴに、とにかくよく負けています。

例を挙げると、
第1次ポエニ戦争の始まりの海戦で、いきなり大敗を喫しています。失った兵力は5万とも7万とも。
敗因は、「海戦は、初めてだったから」といわれています。

また、第二次ポエニ戦争では、ローマは最大のピンチを迎えます。ローマ打倒に燃えるハンニバルが、なんと象を連れた軍を率いて、吹雪のアルプス山脈を越え、イタリア半島に直接侵攻してきたのです。

wikipediaより

さらに「カンナエの戦い」では、ローマ軍に壊滅的な打撃を与えるまでにいたりました。

一例を紹介しましたが、これほどの敗北を喫してなお、ローマはどうやってライジングしたのでしょうか。
ここに、ローマ帝国の強靭な「システム」の存在が見えるのです。

負けても負けても最後に勝つ。ローマ帝国を支えた強靭なシステムとは

ローマは大敗北にもかかわらず、耐え抜きました。
ローマの将軍スキピオがカルタゴ軍の戦術を分析し、カルタゴ本国を直接攻撃するという戦略を採り、最終的に「ザマの戦い」でハンニバルを打ち破るにいたったのです。
この勝利によって、ローマはカルタゴを屈服させ、地中海全域での支配権を確立しました。

そこには、ローマ帝国に根付いていた、強国たるにふさわしいいくつかのシステム、つまり、組織・個人の成長に役立つ洞察が詰まっています。

1.失敗から学ぶ冷静さと再起する強さ(個人の知を、集合知に)

ポエニ戦争を通じて最も注目すべき点は、やはり、あれほどの敗北を重ねながら、ローマが戦いをあきらめることなく、最終的に勝利を収めたことです。

大打撃を食らったローマは、すぐに反撃することはしませんでした。
なにをしていたのか?

「なぜ私たちは負けたのか」を徹底的に分析していた、とのことです。
ある文献によると、大敗を喫した将軍は、ローマに帰国しても罰せられるどころか、むしろローマ市民におおいに歓迎され、「よく戦った」と称賛さえされた、とのことです。

「これほど優れた将軍が敗北するというのは、どこか全体のしくみに欠陥があるのかもしれない」という、俯瞰と冷静さを働かせるシステムがあったようです。

つまり、「失敗を個の責任にせず、しくみの欠陥として冷静に分析する」ということが自然とおこなわれるシステムです。

そしてのちに、ローマ帝国でスキピオが頭角を現すのです。この若き軍略家は、冷静にハンニバルの戦術を分析し、戦略を練り直しすことにしました。新たな戦術を開発し、ローマ軍を再編成し、大勝利を収めることに成功したのです。

現代において、失敗を「個人の責任」としてなすりすけるような人もいます。これでは歴史に学んでいません。このような人を、「教養のない人」と言います。

「失敗は、みんなの責任」なのです。
失敗を生む今のしくみを分析することで、組織のナレッジが築かれます。個人の知が、集合知になるのです。それが、個人の成長の糧にもなります。
やはり失敗は学びの宝庫。次の成功に活かすことが重要なのです。

2.カリスマよりも戦略性と柔軟性(経験こそ知恵になる)

ポエニ戦争では、ローマもカルタゴもそれぞれ戦略的な柔軟性を発揮しました。
ハンニバルはアルプス越えという、奇想天外な戦術を駆使し、ローマに対して優位に立ちました。そんななかでローマのスキピオは、さんざんハンニバルの天才的な戦術を目の当たりにしてきました。
そして、カルタゴ本国を直接攻撃するという、これまた大胆な戦略を採用し、ハンニバルを打ち破る結果を生みました。

よくよく考察するに、2人の天才が直接ぶつかったこの第二次ポエニ戦争で、なぜスキピオが最終勝利したか。
これはひとつの見方として、「カリスマvs戦略家」リーダー対決と見えなくもありません。

そして最終的な結果は、、スキピオがやはり「敗北」を経験している、ということで決着しました。
そして、年齢制限にすら達していないスキピオを、軍の指揮官に任命した、という元老院の柔軟さがあったのではないでしょうか。

現代のビジネス環境でも、競争相手の予想を超える戦略的な柔軟性と革新性が求められますが、それを現実のものとするのは、「経験」です。
経験にまさるナレッジはないと思います。

さんざん競合に敗北を喫しても、それをみずからの戦術や工夫として、以下に相手の盲点を見つけるのか。
この冷静な視点は、同時に、柔軟性を生むのではないでしょうか。

さらに、「経験」を「学び」にまで昇華させられる、周囲の、器の大きさもローマ帝国のシステムの特徴です。
失敗したら罰、ではなく、失敗した者こそ成功に近づく、という信念のようなものに、ローマ帝国のおおらかさを感じてしまいます。


いかがでしたか?
ローマ帝国の強さは、もちろんこれだけですべてを語ることはできません。

今回取り上げたポエニ戦争は、ローマとカルタゴという二大勢力の激しい戦いでしたが、ローマが最終的に勝利を収めたのは、単なる軍事力だけではなく、学びを活かし、持続的な努力を続けることができる「システム」にありました。

カリスマ性やひらめきでは、圧倒的にハンニバルに分がありましたが、
ひたすら敗北に耐え、再起をしたスキピオの戦略性が、最後は勝利を呼びました。

徹底的に、個人の経験を、みんなの知恵にする。

私がローマ帝国のありように惹かれるのは、こんな魅力を感じるからです。歴史の教訓は、現代のビジネスや個人の成長においても多くの示唆を与えてくれますね。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

<今週の箴言>
われわれの高慢は、往々にしてわれわれがなにか一つ自分の欠点をなくすごとに、それだけふくれあがる。

ラ・ロシュフコー

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