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『教えないスキル』コーチ業に関わるすべての方々に読んでほしいぐらい素晴らしい本

 『教えないスキル』コーチ業に関わるすべての方々に読んでほしいぐらい素晴らしい本でした。 ​おはようございます。大橋です。 ​Noteのサムネイルというかこのリード文の箇所って、本当はアブストラクト的に書いてあげたほうが読者に親切なんだと思うのですが、どうしても本題に入る前の今週のトピック的なことを書きたくなってしまうんですよね(よくない)。
 私は、叱責したりするコーチングに強い否定的な意識を持っていて自分なりの教え方・伝え方の特徴をもっていたのですが、それをさらにアップデートしてもらえる本でした。 単に読書レビュということではなくて、自分なりの解釈がふんだんに盛り込まれてますので、その点はご容赦を。(タイトルからは【読書レビュ】は削除しました)


教えないスキル
ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術
佐伯 夕利子 著 
2021年2月の本


 
 文句なしの★5つの本です。 すごすぎる本でした。 ゴールデンウィーク明けのサンデースポーツに佐伯さんが出ておられたことを母から教えられ、発注した本。すごかった。感動した。 
 私は、スポーツに長いこと関わってきて、さらに今でも柏ラグビースクールというスクールでコーチをしています。 ラグビースクールのコーチをしていて、本当に『教えないスキル』には感動することばかりなのですが、特にポイントとなる点を先に二点抜粋しておきます。

P95 フットボールは高さ、強さ、速さを競うゲームではない。 むしろかたちにならず、可視化できず、数値化できないものを秒刻みで脳内で処理し、マネージメントしていく競技です。 莫大なファクターがからみ合い、ピッチ上は予測不可能な状況が90分間以上続きます。 準備して事前にリハーサルできる事柄は、決して多くありません。
 選手は、瞬時に情報をキャッチし、解析、分析して、可能な選択肢からひとつ選び(プレーの判断)、アクションに移します。これがフットボール選手のパフォーマンスと呼ばれるものです。
 (中略)これら一連のプロセスをより短時間(判断スピード)で、より正確に行うこと(プレーの精度)が、その選手の「クオリティ」になります。

P98 プレスをかけるタイミングや一を詳細にレクチャーして教え込む指導はリスクがある。 想定していなかったシチュエーションが発生したとき、選手はちょっとしたパニックに陥るだろう。なぜなら、教え込まれた時点から、「自分で考える」という脳の動きがすでに休止してしまっているからだ、と。
 つまりフットボールは、想定していた現象が起きる可能性が圧倒的に低いスポーツであり、教え込みの指導はまったく意味をもたなくなるのです。


以上二点。 ガーーンとなった。 ごもっともだ。 だからこそ、子ども達に判断させる練習を数多く取り入れている。 刻一刻と変化する状況の中で、何をどう判断し、プレイするか。フットボールにおいては、本当にそれが重要である。 
スクールのコーチを実施するようになって6年目を迎えている。大橋メソッド的にプラスのフィードバックをすることは意識をしてきたが、さらにもう一段意識を変えていかねば、と思いました。

 また、私は、ファザーリングジャパンというNPOでも活動をしています。 そこで「スポーツ(特にラグビー)から学ぶ子育て勉強会」という会をこれまで二回実施したことがあります。 その中のコンテンツの一つとして、ヒーローズカップの「ベンチ及び観客席からの指示は一切禁止」の取り組みに関して共有しています。
 この『教えないスキル』に関しては、これら思想の延長線上にある、素晴らしい概念と思いました。 



思いきりネタバレですが、本の主メッセージはここだと思います。

P159 「教える」は指導者や上司が主語です。 一方の「学ぶ」は選手や部下が主語になります。指導者はあくまで選手の「環境」の一部と言えます。
 したがって、彼らは教えません。 手取り足取り教える代わりに、選手が心地よく学べる環境を用意し、学習効果を高める工夫をする。「教え方がうまい」といった指導スキルではなく、選手が学べる環境をつくることが育成術の生命線なのです。

 考える癖をつけることに重きを置き、考える余白をつくってあげる。
 一方的なコーチングをせず、問いをつくることにこころを砕く
 選手たちが「学びたい」と自然に意欲がわくような環境を整備する。


そして「フットボールは、日本人が世界の上位に食い込んでいけるスポーツのひとつになりうるのです。(P170)」という応援メッセージも読みつつ、改めて、自分のコーチングスタイルをアップデートしていきたいな、と思った次第でした。
あらためましての『プレイヤーズファースト』です。
(柏ラグビースクールが、ラグビーキッズに紹介された記事も宣伝)




その他、抜粋引用となります。(今回も多いです)
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P22 「指導者は、選手の学びの機会を創出するファシリテーター(潤滑油)に過ぎません。 私たちのクラブでは、指導者個々の内省から、これを指導哲学のベースとしています。選手のみなさん、保護者のみなさん。選手をけなしたり、威嚇し恐怖を与えたり、責任を背負わせたりする人は支配者であり、決して指導者ではありません」

この哲学、素晴らしいですよね。 あくまでプレイヤーズファースト、彼らがどう成長したいか、を、支援することしかできないです。(さきほど紹介したラグビーキッズの記事内に 『ラグビーをやらせるのではなく自分たちで考えてプレーするように導く』 との文言もあり)


P42 アンラーン(unlearn)は、学びの棄却、学びほぐしなどと訳されることが多いようですが、感覚的にしっくりくるのは「学び壊し」という表現かもしれません。育成部に所属する約120名のコーチたちは、まずこの学び壊しにより、個々がこれまで信じて止まなかったスタンダードや、当たり前、常識を、根こそぎ覆されました。
 学び壊しの対象となったのは、例えば以下のようなものです。
 ホワイトボードとマグネットを使って、監督が一方的に選手の動きを指示する試合前のミーティング。
 トレーニングにおけるエクササイズの構築が自チームの「選手」ではなく、「相手チーム」に起因した発想(相手が長身だからハイボールの対応、など)。
 試合中の、選手に対する過度なアドバイス。

もちろん、コーチングする学年によっても考え方としては異なるけれど、「学び壊し」として、今までの価値観をぶっ壊される、相当なインパクトがあったと推定されます。 そして、昨今耳にすることが増えた「アンラーン」の概念もよりわかりやすく伝えてくださってことにも感謝。


P61 「指導が一方通行だ。 子どもの判断に対し、僕らは自分の考えを押しつけるばかりで、彼らの判断について尋ねてみたことがあっただろうか」

ここは確かにより具体的でより変えていこうと思った箇所。私のコーチングにおいては、よかったプレイを出来るだけ具体的に細かくその選手にフィードバック(伝えてあげる)ことによって、その選手の再現性を高めたい、ということを重視してきたため、『選手の判断について尋ねてみる』ということはより多く取り入れていきたい。(中学部をコーチングするときは、一部取り入れていたが)


P74 認知に関するアプローチでいうと、例えばフットボールの「団子になる」現象がありますが、子どもたちが団子にならないよう指導者が何らかの指示を出すことは一切ありません。 ついつい指示を出したくなる衝動と常に戦っています。

ここ、フットボールに関わっている(特に低学年担当)方だと、ものすごく身に染みる観点だと思います。 ヒント満載ですよね。



P78 スペインの教育現場は、先生が問いを投げ終わる前に「それはね、こうだと思う」とみんな一斉に答えを言い始めます。間違ってたらどうしようと逡巡する子はいません。(中略)コミュニケーションのありようがまったく違います。

ここ、僕はそういう子どもでした。それが正しいと思ってました。しかし僕が育ったのは日本でした。 中学生ぐらいでもそうでした。先生に注意されました。 みんなの理解スピードにも注意してあげてほしい、と。 この「コミュニケーションのありよう」に関しては、ここ日本では大きな課題だと思うので、例えばチーム内では、少なくともそうならないように、どんどん口から発してもらえるよう、促していかないとですよね。(もちろん会社のチームにおいてもそう)


P83 「ナイスプレーだったね」と言われ続けるだけではなく、一歩踏み込んだところで、「なぜそう思って(感じて)、なぜそのアクションをしたのか?」
 そのことを説明させてもらえる機会が与えられると、そこで彼らは自分を表現できます。

ここは、すごく勉強になった!! 細かく細かくフィードバックする方法をこれまで採用してきたが、選手たちに多く『説明させてもらえる』機会を取り入れていくことにしよう。



P103 言葉はアクションを生み、そのアクションがパフォーマンスを生むのであれば、まずは先頭の「言葉」のところで丁寧にイメージを合わせておく必要があるのです。 でなければ、目の前で起きる現象は違うものになってしまいます。

ここのところは、最近は特に気を付けているところ。 Same Pictureの話をよくするようになって、ほかのコーチにも指摘されているぐらい。しかしながら 『言葉のところで丁寧にイメージを合わせる』 は、ほんとにごもっともなところで、例えば 「内側からせりあげる」と言っても、細かいコースや角度がなかなか伝わらなかったりする。 よりシンプルな言葉でアクションを生みやすくするために 「いらっしゃいタックル」「2メートル前で判断して」 などを用いたりもする。 


P131 改革を始める前は、20人の選手がいたら、そのなかで2,3人の気のきいた選手、キャプテンシーのあるような選手が意見を言っておしまいでした。それがまるで「みんなの意見」みたいになっていました。 ところが、現在では20人が20人それぞれのレベル、それぞれの感覚でどんどん言葉を出していくのです

ラグビーなので、チームトーク、とかもよくさせるのですが、20人が20人のレベル、というところまでは、まだまだですね。 コーチとして、一番初めにあった「ファシリテーター」としてのスキルをもっと高めなきゃ、というところなんですよね。 「どんどん言葉を出して」というところ、会社でも、ほんと課題です。

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以上です。 最後までお読みいただきありがとうございました。単純に読書レビュというわけではなくて、自分のコーチングの考え方を振り返ったり、棚卸したりすること、この本から学んだことに自分の解釈を加えて発信すること、を意識してブログとしてまとめました。 はやく柏に帰ってコーチングしたい(コロナ禍のバカ!)。 10冊買って、コーチに配ろう。


いつものブクログレビューもつけておきます。(ほかの方のレビューも複数ありました)


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