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【書評】「集中」と「リラックス」一瞬で“脳”を切り替える技術/辻秀一/大和出版

「集中」と「リラックス」一瞬で“脳”を切り替える技術/辻秀一/大和出版
(このnoteは2019年3月26日に他サイトに掲載した記事の転載です)

シンプルに、本屋で目に止まった

辻さんの書籍は、大学生の頃に「スラムダンク勝利学」を読んで、それぶりになる。

この本のテーマは、「集中」と「リラックス」

アスリートにとっての永遠のテーマでもある、自分のメンタルのコントロール方法について。辻メソッドの概略から、そのメソッドを使ったケースワークなど。

自分に置き換えて当てはまるなと思えるところや、自分の周りにもこんなタイプの人いるなと思えるところなど、非常に読みやすかった。

以前に読んだ「禅」にも通ずるところもあると思ったのが、精神的な悩みや葛藤に終わりはなく、この本のように「こう考えてみたら楽しいよね。健康的だよね。パフォーマンスも上がるよね。」と助言してくれる本を定期的に何冊も読んでいきながら、自分なりのメンタルコントロールのスタイルが固まっていくのかなと感じた。

今回、自分の中で印象的で、特に心に残ったことは、以下の三つである。1「あらゆるものに本来意味はついてない」と気づく2「もらう」より「与える」ほうが脳にいい3「一日もあなたの作品である」

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1「あらゆるものに本来意味はついてない」と気づく

この本の中で常に使われている用語がある。

「認知脳」と「ライフスキル脳」だ。

「認知脳」は、物事を考える時に、外界の世界が主体で考える機能を持つ。

目で見た物の意味づけをしたり、人から言われたことを考えたり、何をしようかなと予定を立てたり。外界の事情を踏まえて思考するのが、認知脳である。

「ライフスキル脳」は、自分の内面(心)に向けて考えること。

自分がどうありたいか。焦らず気負わず、リラックスした状態を作り出す役割がある。

この「認知脳」と「ライフスキル脳」、生きていく上でどちらも大事なことなのだが、大切なのはこの2つのバランスが取れていることである。

集中した状態、リラックスした状態がなかなか作れない人というのは、「認知脳」が優位になりすぎてしまい、バランスが乱れているのだ。

このバランスが取れてごきげんな状態をフロー状態といい、バランスが乱れてふきげんな状態をノンフロー状態という。フロー状態は、心理学的にもモチベーションが上がり、持てる能力をフルに使うことができたり、医学的にも健康な身体で暮らすことができる。

そこで、その「認知脳」が優位になっている状態を作り出さないための方法、僕がこの本を読んでいて一番しっくりきたのが、

「あらゆるものに本来意味はついてない」と気づく

ということである。

全ての物事、現象にはもともと意味はない。それを自分の過去の経験や知識から勝手に意味づけをしてしまっている、ただそれだけなのだ。ポジティブな意味づけも、ネガティブな意味づけも、自分で勝手につけてしまっていること。

そのことに気づくことが、心を落ち着かせるためにとても大事である、と言うのだ。

ラグビーの試合中、極限の緊張や恐怖と戦っているなかで、ゲームは二転三転、いろんなシチュエーションが起こる。得点することもあれば、されることもある。自分が良いプレーをすることもあれば、良いプレーができないこともある。

そこで大事なのが、一喜一憂しないことなのかなと思った。良いプレーをして、そのことに満足して喜んでばかりでも、また次のプレーがくる。良いプレーができずに凹んでしまっていても、また次のプレーがくる。良いプレーも悪いプレーも自分で勝手に意味づけしてしまっているだけのこと。

意味づけ自体を止めることはできないが、意味づけをしているということに気づくことで、物事を俯瞰して見ることができる。

自分で意味づけした現象に心を乱されるのではなく、その瞬間を一生懸命にプレーし続けることが、試合中に高いパフォーマンスを出し続けるために必要なメンタルスキルなのではないかと思う。スポーツの現場でもよく言われることであるが、「コントロールできることに集中する」というのも手段の一つだ。またそれが、リーダーとしてどんなシチュエーションにも動じない強い心を持つことにも繋がってくる。

2「もらう」より「与える」ほうが脳にいい

「ライフスキル脳」を高めるやり方の一つとして紹介されており、一番心に残ったのが、この、

「もらう」より「与える」ほうが脳にいい

ということである。

「プレゼントが欲しい」「あの人にこうやって動いて欲しい」「褒めてもらいたい」など、、

「もらう」という行為は、自分ではコントロールできないことである。外界の現象に期待してしまう。そんな自分ではコントロールできないことを考えることというのは、心がノンフローに傾いてしまうのだ。

逆に、

「感謝の気持ちを伝えよう」「頑張ったあの人を褒めてあげたいな」「頑張るあの人を応援してあげたいな」など、、

「与える」行為というのは、自分でコントロールできること。「相手に喜んでもらったら嬉しいな」と想像することや、実際に喜んでもらえることというのは、心をフロー状態にしてくれるのだ。

ただ、勘違いしてはいけないのが、見返りを求めて人に親切にするというのは、「もらう」ことありきの行為になってしまうので、これは違う。与える行為そのもの、幸せになってもらいたいと思うことそのものが、大切なのである。

「与える」行為は、物やお金よりも、エネルギーを与えると考えると良い。

・感謝・・・ありがとうの気持ち

・リスペクト・・・相手への思いやり

・応援・・・がんばれという気持ち

組織の中で、このようなことが連鎖している組織は強いと思う。勝つとか負けるとか、試合に出るとか出ないとか、給料が高いとか安いとか、その場の結果ではなく、仲間のことを思って「与える」ことをし合える組織。見返りを求めず、そんな行為が組織の中で連鎖していく。

きっと、今から自分に対して、「よし、これからは与える人間になるぞ!」と言っても、なかなか意識していないところでできない部分もあるかもしれないくらいだから、一朝一夕で組織をそう変えることは難しいことであるとは思う。

それでも、自分はそんな人間になりたいとこの本を読んで感じたから、自分なりに「与える」行為を今日から実践していこうと思う。

良い言葉に出会えた。

3「一日もあなたの作品である」

これは、本の最後に、著者の辻さんが尊敬するジョン・ウッデン氏という、アメリカの大学のバスケ界の名将の言葉を紹介していた

のを、紹介する。

辻さんが最も好きな名言のようだが、自分にもすごく響いた。

一日一日を、最高傑作を作るつもりで生きていく。ということ。

自分の家族は、芸術一家である。祖父は画家、父は建築家、母は歌手、兄も歌手、叔母はピアニスト、叔父は陶芸家。それぞれ、趣味でやっているわけではなく、それを生業としている。

そんな家族みんなが本気で対峙している芸術活動は、「どんな心でやるのか」が作品に反映される。実際に自分が体感した作品の数々からは、思いが伝わってくる。

そんな風に毎日、自分と向き合って、自分にとっての最高傑作を作ろうともがいているのだ。

自分はスポーツの世界におり、思いを込めて何か実際に作品を作るわけではないが、この言葉のように一日を自分の作品のように過ごしていけば、いつまでもイキイキしている家族のようにいられるのではないかな、と感じた。

毎日寝る前に日記を書いている。もう7年になる。今日という日をどんな思いで過ごし、どんな作品になったのか。そういう視点でこれからは書いていこうと思う。

―――――

辻さんがスポーツ選手のメンタルトレーニングを手掛けているだけあってか、

非常に読みやすい本だった。

「集中」と「リラックス」をコントロールするためのヒントがたくさん散りばめられており、この書評の中では大きく3つを紹介したが、きっと読む人によって、引っかかるポイントは違うんだろうなと思ったし、自分がまた違うタイミングで読んでも引っかかるポイントは違うんだろうなとも思った。

今の自分にとってとても良い助言をもらえた。

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