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ELLEGARDEN、初のオンラインライブ敢行。20万人で分かち合った幸福な一夜を振り返る。

【8/28(金) ELLEGARDEN @ YouTube】

ELLEGARDEN、初のオンラインライブが実現。

まず、はじめに特筆しておかなければならないのは、今回 彼らが敢行した同公演は、間違いなく「特別」なものであった、ということである。

2018年の活動再開から約2年、コロナの影響を受けたこの半年間を別とすれば、今ではELLEGARDENは、あの頃と同じく、当たり前のようにライブを行うようになった。復活を果たした「THE BOYS ARE BACK IN TOWN TOUR 2018」こそ、激しいチケット争奪戦が巻き起こったものの、その後、フェスや対バンイベントなどで彼らと再会することができた人も多かったと思う。

ELLEGARDENは、「直接一人でも多くのリスナーに音楽を届けるために、一つでも多くの会場を周り続ける」という極めてシンプルな行動姿勢を貫くバンドだ。更に言えば、「直接リスナーの顔が見えるような、小さいライブハウスを周りたい」というのが彼らの本音だろう。(その意味で、2007年の幕張メッセ公演も、2018年のZOZOマリンスタジアム公演も、あまりにも「特別」なものであった。)

だからこそ、直接リスナーの顔が見えないオンラインライブへの挑戦は、4人にとって、とても勇気の要ることだったと思う。それでも、こんな時だからこそ自分たちにできることを模索し続けた結果、今回のYouTubeでの生配信という選択に至った。細美自身が語っていたように、もう二度と同じ形の公演は実現しないかもしれない。今回のライブは、やはりどうしようもなく「特別」なものなのだ。


開演時刻の20時を少し過ぎた頃、SEもなく、そっと煌びやかなアコースティックギターの調べが鳴り響き始める。野外にセッティングされたアコースティック編成のバンドセット、そして、椅子に座りながら、穏やかな表情で音を奏でる4人のメンバー。そう、この日の公演は、約20年ぶりのアコースティックライブだったのだ。

1曲目は、全く新しい装いの"BBQ Riot Song"。開演直後の時点で約86,000名だった視聴者数は、この曲の演奏が終わる頃には100,000名を超えていた。

初のオンラインライブの実現を祝した乾杯を経て、メンバー4人によるMC。2018年の活動再開以降、4人が揃ってメディアに出ることはなかったことを踏まえると、このラフで等身大な掛け合いそのものが非常に貴重である。活動休止以前のライブDVDや、そこに収められたオフカット映像を観ていた人は、きっと「あの頃のまま」の空気感を味わえたと思う。

2曲目は、"The Autumn Song"。少しずつ夏の終わりが差しかかりつつある今の季節だからこそ、冒頭の《Summer time is gone》の歌い出しが切ない。この時点で、視聴者は120,000名超。


今回の公演は、1曲演奏するごとに、4人によるMCが差し込まれていく構成であった。細美は、「こうやって昔話を始めると、最後のほう泣くよ、全員。」と笑いながら言っていたが、既に高橋の目には涙が浮かんでいた。

3曲目は、「活動休止前と再開後で、ずいぶんと意味合いが変わった楽曲」であるという"虹"。メンバーの思い入れも強く、復活後、必ずといってもよいほどに頻繁にプレイされ続けているナンバーだ。ただもちろん、アコースティック編成での披露は極めてレアである。繊細なコードワークと豊潤なバンドアンサンブルに、ずっと心を掴まれっぱなしだった。この時点で、視聴者数は150,000名超。

続いて4曲目は、盟友・ホリエアツシ(ストレイテナー )への想いが詰まった"スターフィッシュ"。エレキギターのパワーコードでは表現できないようプレイも随所に見られ、何より、通常のバンドセット時と比べても、生形のコーラスワークが前面にフィーチャーされている。

その後のMCで、細美は、ふと「この光景は思い出に残っていくと思うな。」と囁いていた。あまりにも「特別」で、だからこそ切ない時間がゆっくりと流れていく。


5曲目は、2011年の東日本大震災以降、細美が一人で歌い継いできた"Make A Wish"。「ずっと4人で演奏したかった」というこの楽曲は、だからこそ温かい響きを放っていた。この時点で、視聴者数は170,000名超。

感動的な演奏の後には、また同じようにMC(&チューニング)タイムへ移行する。まるで昨日のことのように、活動休止以前の思い出を語り合う4人の姿は、やはりあの頃と何も変わっていない。

「イントロでドラゴン(花火)が上がったらかっこいいかも」という細美の提案を受けて、信じられないくらい緩い(グダグダな)やり取りを経て演奏が始まった"Salamander"。激しく乱反射するアコギのリフや、鋭利なコードストロークの響きに痺れた。

続いては、活動を再開してから初披露となる"Alternative Plans"。なんてアコギ映えする楽曲なのだろう。そのメロディが誇る圧倒的な強度を、改めて感じさせてくれる。ちなみにこの曲では、細美が歌い出しのタイミングを間違え、演奏直後に深々と土下座する一幕も見られた。

トイレ休憩を経て、"Marry Me"。そして、いつまでも終わる気配を見せない思い出話を挟んで、"Space Sonic"が披露されていく。単なるアコースティックアレンジではなく、換骨奪胎の末に全く新しい楽曲として生まれ変わったロック・アンセムの連打に、ただただ圧倒される。


ライブもついに終盤。過去のノスタルジーを振り返る雰囲気に満ちていた今回の公演だが、ここで細美は、これから先の未来について語った。

「ゆったりするのはもっと先でもいい。」「俺たちにはまだ、もうひと暴れするチャンスがあると思うんだよね。」「てめえら全員、奥歯ガタガタさせてやるからな。」「またその時、ライブハウスで会いたい。」

今でも当たり前のようにバンド活動を続けているELLEGARDENは、これから先も、当たり前のように音楽を届け続けていく。その揺るがぬ決意と覚悟に触れることができたような気がして、強く心を動かされた。

そして、このタイミングで、ついに視聴者数が200,000名を超える。1画面を複数名が観ているパターンを含めて算出すれば、あの時、同じ時間を共有していたリスナーの数は更に多かったことが想像できる。いずれにせよ、通常のライブでは、とても実現できないほどの参加者数である。

細美は、途中のMCで、「唯一物足りないのは、みんなからの拍手や歓声。」と呟いていたが、YouTubeのコメント欄やSNSには、数え切れないほどの歓喜と興奮の声が溢れ返っていた。まさに、オンラインライブだからこそ味わうことができた体験である。200,000名の仲間たちと過ごした幸福な時間を、僕はいつまでも忘れたくはない。


10曲目は"ジターバグ"。後半、少しずつテンポが上がるに従って、通常のバンド演奏時に負けずとも劣らない熱量が放出されていく。

「今は、すごい大変な状況だけど、それでも人生は一回ですからね。がんばってやっていきましょう。」

細美の呼びかけを経て、ラストの"金星"へ。

《ねぇ  この夜が終わる頃  僕らも消えていく/そう思えば  僕にとって  大事なことなんて/いくつもないと思うんだ》

今、僕たちは、パンデミックという未曾有の危機に直面している。誰もが絶対的な指針を失い、迷い果てている。それでも、いや、だからこそ、僕たちの人生における大切なことだけを歌い届けてくれるELLEGARDENの音楽は、まさに今、かけがえのない真価を発揮するのだと思う。

今年も、こうして彼らのライブを観ることができて本当に良かった。




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