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Mr.Childrenの旅に、いつか終わりが来るその時まで。

【6/12(日) Mr.Children「半世紀へのエントランス」 @ 日産スタジアム】

"終わりなき旅"から幕を開けた全国ツアー「半世紀へのエントランス」のスタジアム編、日産スタジアム公演2日目。1曲目の時点で、これは凄まじいライブになるだろうと感じた。そして、その直感は言うまでもなく的中することになる。

桜井和寿は、この"終わりなき旅"という楽曲について、「どんなものにも、きっと終わりはあるのだと、今はそう思っています。」と率直に伝えた。この楽曲を1998年にリリースしてから、今年で24年の歳月が経つことを踏まえれば、その長い旅路の過程でそうした心境の変化があるのは当然かもしれない。

しかし桜井は、だからこそ、いつまでもこの旅が続いていくことを願いながら今回のステージに臨むことを、力強く宣言した。先に結論から書いてしまえば、その鮮烈な決意と覚悟こそが、今回のツアーの本質そのものなのだと思う。まさか、今回の公演における至極のハイライトが、ライブ幕開け1曲目から訪れるとは全く予想もしていなかった。


今回のデビュー30周年を記念して敢行された超大規模ツアーには、「半世紀へのエントランス」というタイトルが与えられた。それはつまり、今回の30周年は、半世紀(50周年)へ向かうための入口に過ぎない、ということである。そう、彼らは、今回のツアーを通して過去30年間の歩みを総括しつつ、同時に、既に次の10年、20年へ向けた未来を見据えているのだ。そのフレッシュな心意気は、本当に凄い。

そしてもちろん、この「半世紀へのエントランス」という壮大なテーマは、決して口だけのものではない。アンコールで披露された新曲の勇壮なるロックアンセム"生きろ"が最も象徴的であったように、Mr.Childrenは、このデビュー30周年のタイミングで、自分たちのキャリアハイを鮮やかに更新してみせた。そんな快挙を成し遂げられるロックバンドは、長い歴史を振り返っても、広い世界を見渡しても、極めて稀有である。

今回のライブすらも、4人にとっては一つの通過点に過ぎないと思うと、もはや震える。何より、現在進行形で進化し続ける彼らと同じ時代を生きられることが、この国に生きるロックリスナーとして、とても嬉しいし、誇らしい。

なお、Mr.Childrenがデビュー50周年を迎える20年後の2042年に、4人は72歳となっている。それはとても果てしない旅路のようにも思えるが、ただ、ザ・ローリング・ストーンズやポール・マッカートニーが今もなお力強くロック史を更新し続けている勇姿を見ると、Mr.Childrenの旅も、まだまだこれからだと思える。


しかしもちろん、ライブ冒頭の桜井の言葉にもあったように、彼らの旅にもいつかは終わりが来るだろう。デビュー30周年のタイミングで発表された新曲"永遠"は、その曲名とは裏腹に、永遠なんて存在しないという苦い真実を知る者にしか歌えない切ないロックバラードであった。

そのことが象徴しているように、そして、ライブの終盤で次々と放たれた楽曲たちが伝えていたように、今、Mr.Childrenは、いつか必ず訪れる終わりと向き合いながら、目の前のステージの今この瞬間に、全てを懸けて臨んでいる。そして、その切実さこそが、彼らのロックバンドとしての表現を格段に力強いものへと押し上げているのだ。改めてにはなるが、デビュー30周年のタイミングで、自分たちをその次元へと高めることのできるロックバンドは、極めて稀有であると思う。


捨てるのに胸が痛んでとっておいたケーキを
結局腐らせて捨てる
分かってる  期限付きなんだろう  大抵は何でも
永遠が聞いて呆れる

僕らはきっと試されてる  どれくらいの強さで
明日を信じていけるのかを...  多分  そうだよ

World end(2005)


いつか誰もが大人になって
ちゃっかりした大人になって
失った宝物を探しに行こう!

fanfare(2009)


やがて音楽は鳴りやむと分かっていて
それでも僕らは今日を踊り続けてる
忘れない為に
記憶から消す為に
Oh Rock me baby tonight
また新しいステップを踏むんだ

エソラ(2008)


そして改めて思うのは、デビュー30周年のタイミングで発表された新曲”生きろ”は、他でもなく、自分たち自身を鼓舞するためのロックナンバーであったということだ。繰り返しにはなるが、そのロックバンドとしてのタフさと4人の意志の固さは、鳥肌が立つほどに凄まじいものである。


追いかけろ  問いかけろ
いっそ裸足のままで
血をたぎらせながら
ここから
またひとつ  強くなる
失くしたものの分まで
思いきり笑える
その日が来るまで
生きろ

生きろ

生きろ(2022)


Mr.Childrenの旅、その最後の日が来るまで、これからも4人の歩みを追いかけ続けていきたい。



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