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乃木坂46、次の10年へ。次世代への継承を通して更新される「かつての少女たち」の物語。

【5/14(土)〜15(日) 乃木坂46「乃木坂46 10th YEAR BIRTHDAY LIVE」 @ 日産スタジアム】

2012年2月に乃木坂46がデビューを果たしてから、今年で10年が経った。

今では思い出すのも難しいかもしれないが、もともと乃木坂46は、「AKB48の公式ライバル」としてデビューしたグループである。グループカラーの紫には、2010年代前半にJ-POPシーンの王道を闊歩していたAKB48に対するカウンターとしての意味合いがあったはずであり、つまり、当時の彼女たちは、王道に対するオルタナティブな存在であった。

そして、そうしたグループの位置付けは、結成当初の1期生たちにとって、非常に大きな重圧となっていた。2012年1月、AKBグループ恒例の楽曲ファン投票ライブ「リクエストアワー セットリストベスト100」にサプライズ出演した乃木坂46。会場の、そしてネット中継で視聴する全国のAKBグループのファンの前で、つまり完全にアウェイな状況の中で、「100位圏外」としてステージに立った彼女たちは、デビュー曲”ぐるぐるカーテン”を披露した。

当時センターを務めていた1期生の生駒里奈は、抑えきれない不安を胸にステージに立ち、涙を流しながら、それでも力強くこう宣言した。

「私たちには超えなければならない目標があります。その目標とは、AKB48です。まだまだ未熟ですが、同じステージに立たせて頂いたことに感謝します。全力以上に努力して、いつか本当のライバルと言ってもらえるように頑張ります。」

このように、乃木坂46の物語は大きな逆境の中から幕を開けた。しかし、もはや説明不要なように、その後、彼女たちは、誰も想像できなかったスケールで怒涛の快進撃を展開していく。現在まで続く紅白への連続出場。日本レコード大賞2連覇。2度にわたる東京ドーム公演の成功。こうした数々の快挙を挙げていけばキリがない。今や乃木坂46は、正真正銘の国民的アイドルとして、巨大な支持と期待を一身に受けながらステージに立ち続けている。

デビュー初期こそ、「AKB48の公式ライバル」という明確なコンセプトがあったものの、しかしすぐにそのコンセプトは後傾化していく。この10年間、彼女たちは1つ目の坂道グループとして、自分たちだけの坂道を駆け上がり続けてきた。

ただただまっすぐに、美しく可憐なアイドル像を追求し、ソニー・ミュージックが誇るクリエイティヴの力を追い風としながら、新しい表現の可能性を鮮やかに切り開く。そして、J-POPシーンの中心で、王道のアイドル像を果敢にアップデートしていく。その姿は、とてもしなやかで逞しいもので、どのような時もピースフルなオーラを放ちながら走り続ける彼女たちは、本当に芯の強いグループなのだと思う。



それでは、これまで10年間にわたり彼女たちが育んできた「乃木坂46らしさ」とは、いったい何なのだろうか。この10年間を短い言葉で形容することは非常に難しく、メンバーやファンの数だけ、この問いに対する正解があるのだと思う。その上で、あえて抽象的な形で答えるならば、「誰かにとっての希望であり続けること」こそが、乃木坂46というグループの本質であり、彼女たちの使命なのだと思う。

とてつもない逆境の中から、少しずつ認知と支持を獲得していったデビュー後の数年の物語は、数え切れない人たちの心を奮い立たせたと思う。そして、かつてと比べると、現在は、とても多くの子供たちが当たり前のようにアイドルを目指す時代になった。だからこそ、現行のトップアイドルである乃木坂46は、日本中の少女たちからの憧れの眼差しを一身に受けながら、そして、そうしたファンたちに希望を与える存在として、今日も覚悟と誇りを持ってステージに立ち続けている。

1期生と2期生に憧れてグループに加入した3期生と4期生は、かつては、ライブの観客席やテレビの向こう側から乃木坂46に憧れていた一人の少女であった。そうした「かつての少女たち」が、今では乃木坂46の未来を担う中核メンバーとなっている。自分が大好きなグループを守りたい。もっと大きく成長させていきたい。そして次は、自分が誰かにとっての希望でありたい。そうした清廉な願い、そして覚悟が、グループの変遷の中で世代を超えて継承されていくことで、乃木坂46の物語は10年間にわたり更新され続けてきた。

そして、今回の10周年記念のバースデーライブで、1期生〜4期生に憧れてアイドルを目指した5期生のメンバーたちが、ついに本格的なステージデビューを果たした。また新たな世代の「かつての少女たち」が、次は、自分たち自身が誰かにとっての希望になるために、力強く走り出したのだ。継承に次ぐ、更なる継承。グループの歩みが10年間にわたり続いてきたということは、とても美しく、意義深いことなのだと思う。



この数年、グループ結成以降の黎明期を支えてきた1期生と2期生の卒業が相次いでいるが、しかし、彼女たちが育んできた乃木坂46の精神は、現在グループを牽引する3期生、4期生、そして、加入したばかりの5期生へ、確実に継承されている。グループにとって非常に重要なターニングポイントとなった今回の10周年記念ライブは、そう強く確信させてくれる感動的な公演だった。

なお、デビューから2016年までの変遷を辿るDAY1では、卒業生の生駒里奈と伊藤万理華がサプライズ出演を果たし、また、2017年から現在に至るまでの変遷を辿るDAY2では、卒業生の西野七瀬、白石麻衣、生田絵梨花、更にアンコールでは、高山一実、松村沙友理のサプライズ出演が実現した。乃木坂46が国民的アイドルの座に辿り着くことができたのは、卒業していった全てのメンバーたちのおかげである。そして、卒業生たちが残してくれた功績は、いつまでも消えずに、グループの中に残り続けていく。そうであるならば、新しい光を放つ5期生が加わった今の乃木坂46は、もっともっと遠くまで行けるはずだ。

ライブ会場のキャパシティ的な側面から言えば、2日間にわたる日産スタジアム公演を成功させた彼女たちは、既に日本の音楽シーンにおける頂点に至ったことになるが、あの2日間すらも、これからも続いていく物語の通過点に過ぎないのだとしたら、乃木坂46は、日本の音楽史を振り返っても前例のないアイドルグループへと成長していくことになる。僕は、このグループの未来に、とても眩く、果てしない希望を感じている。

5期生と共に突入した11年目。「かつての少女たち」、そう、乃木坂46の物語は、またここから加速していくのだと思う。




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