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はじめまして。ハンドメイド変態ツルカワです。そんなわたしは、如何にして、ハンドメイドに愛情を注ぐようになったか。(第七回)

(ようやっと連載に戻ります。お待たせしました)
さて、クリエイターEXPOで、ハンドメイドライターとしてまたもや芳しい成果が出せなかったわたしだったが、その偶然出会った男性の案内で、2016年8月、大阪は阿倍野に足を運んだ。
クリエイターEXPO後に調べたところでは、その男性は高名な出版コンサルタントであったのだが、わたしはライターとして藁にもすがる気持ちでホイホイ出かけたのではない。でも、自分のハンドメイド変態ツルカワとして、中途半端な仕事しかできない状態をなんとかしたかったのは確かだ。
いわば、自分の人生のヒントを探しに、わたしはホイホイ大阪に単身出向いたのだ。

初めて降りる阿倍野駅。そこで男性と待ち合わせて、世間話をしながら、昼食を奢っていただいた後、阿倍野の町を散策することになった。
「ギャラリーや雑貨屋が入居している面白いビルがあるんだよ」。
そういって、とある雑居ビルから散策は始まった。
ビルのなかにすっと男性は入っていき、後に続いたわたしであったが、そのとき、軽いデジャブを覚えた。
あれ?なんだろ?なんか見たことがあるような気がする…ここ。

そんなことを思いながらも気のせいかな、と慌てて男性を追いかけ、やがてそのビルの一室にあるちいさなギャラリーに案内されたのだった。そして「現在の展示」と書かれたポスターに目をやって、はっとした。

デジャブの正体がそこにはあった。その展示は、【PlumTree】の直近の展示に出てくれた作家さんが出展されていたのだった。
「あ、そうか。だからTwitterとかで告知を見ていたから、見覚えがあったんだ」。やっと腑に落ちたところでギャラリー主の女性に挨拶を…と話しかけたとき、女性はわたしが自己紹介する間もなく、開口一番こう言ったのだ。

「ああ、【PlumTree 】のツルカワさんですね、存じていますよ」

…腰が抜けるかと思った…。

いくら互いに知り合いの作家さんがいるという裏事情があったとはいえ、自分の名前を、見も知らぬ土地の、見も知らぬギャラリーで、しかも案内されたいちばん最初の場所で、自分の名前を告げられるとは。完全に不意打ちであった。
驚きのあまり、わたしはそれからなんと言葉を返したのか…記憶が残っていない。そしてそのあとの散策も、あまり記憶にない。とにかく見も知らぬ土地で自分を知っている人がいること、正体をあっさりと見抜かれたことにびっくりしてしまって。

そして…散策が一段落し、男性の事務所で一休みすることになった。
「どうだった?」
そう聞かれて自然にわたしはこう喋っていた。
「あの…最初のインパクトがものすごかったのですが…もしかして、わたし…ライターよりも【PlumTree】、企画展の活動に軸足を移した方がいいのかなあと…こんなところで、自分の活動を知ってくださる方がいるくらいなら」。

すると男性はこう答えた。
「うん。僕もそう思う。いや、ライターをやめる必要はないよ。ただ、ハンドメイドライターと称してそれだけで歩いて行くのは大変と思うんだよ。だけど、あなたには、もう【PlumTree】…企画業という大きな財産がすでにあるんだよ。それはあなたが思っているより大きい財産なのかもしれない。だから、両輪で進めばいいんじゃないかな。それには、今まで以上に、永続的に企画業を続ける方法を考えなければいけないけどね」。

…帰りの新幹線のなか、わたしはその言葉をなんども反芻していた。
よし、【PlumTree】、企画業にいっちょ本腰入れてみるか。
でも続けられる体力を持つにはどうすればいい?
場が必要だ。いつでも展示を開ける場所が。
いっそ店を持つか?
いや、自分の体調と財力ではそれは無理だ。すぐに潰れる。
だったら?だったら?
いつでも自分が好きに使える場所って?
…そのとき答えはもう出ていたといっていいだろう。

帰宅して程なくわたしは夫に言った。
「家にギャラリーを作りたいの。駐車場潰して。ひとまず、工務店呼んで見積もり頼みたいんだけど、いい?」

(第八回に続く)


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