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台所の物語

本日は、私がオススメしたい”おいしい本”のお話です。

こちらの本。一言で言うと、思っていた以上に内容が充実しているお料理エッセイでした。

桧山タミさんの『いのち愛しむ、人生キッチン』

2017年に発行された当時92歳の現役料理家・桧山タミさんの本を最近読みました。

彼女の自伝的なお料理エッセイなのかと思って読み始めてみたら、タミさんの生徒さんたちが繰り返し作る定番レシピまでのっているし、そんなに厚くない小さいサイズのこの本は、キッチンの棚に入れておきたい《台所で紡がれる人生の教本》のようだと感じるくらい、いい意味で期待を裏切ってくれた本でした。

100歳まで生きた祖母に育てられた私は、特に台所で祖母と過ごす時間が長く、祖母の作る手料理を食べ、作っている姿もずっと見てきました。そんな私が読んで感じたのは、タミさんの本はまるで台所で"おばあちゃん"から語りかけられているようで、内容にとても共感できることが多かったです。

特に、あらためて「そうだよね〜」と思えたのは、

レシピとは、あくまで見本であること。「おいしい」感覚は大さじ何杯や何グラムとか数字では表せません。すぐに人から正解を聞きたがるのではなく、一度自分で考えることも大切で、自分の「おいしい」は結局のところ自分で作り出すもの。それが家庭料理というところでした。

昔からお料理に関する本やレシピ本はもちろんたくさん買ってきましたが、レシピ通りにやっても全くうまくいかない、または美味しくないなぁと思う本もたくさんありました。それは、当たり前と言えば当たり前。その土地の素材が同じ味ではありませんし、人それぞれ「おいしい」と感じる感覚は違いますもんね。

例えば、スウェーデンの食やタイの食を作って美味しいとおもっても、それを日本で再現するのは”本当には”難しいなと思っていました。
ましてや、誰かにそのレシピをお渡しする場合、それを自分自身のレシピには”どう表せばいいのか”をずっと考えていました。この本には、それがすんなり解決できる言葉がたくさん詰まっていました。

カフェオレとクッキーをお供に、楽しくてあっという間に読めてしまいました。

私自身は、いろんな土地で生活しているので、その土地に合った、できるだけ季節の旬のものやその土地で採れるものを使って、自分自身や家族が好きな料理を楽しんできたのですが、

タミさんの
「忙しい人たちは、身体の違和感を知りながら、食べることには結びつけずに調子を崩しがちです。」と言うところにハッとさせられました。

今まで私は、家族が「ちょっと調子が悪い」と言えば、もちろんそれに合わせて食べやすいものにしたりしましたが、わざわざ言葉に表すほどの不調を訴えない場合、日々の生活の中で家族の顔色を見たり、気圧や天候によって塩加減や消化の良いものや、さほど消化が良くない(けれど美味しい)ものを食べるタイミングを見計らうなんて、やったことがありませんでした。
でも、決して難しいことが書かれているのではなく、要は”気”配りだったんです。

どれもこれも率直に書かれ、それも優しい”九州弁”で語りかけらるのもあるのか、なんだか心にすんなりと入ってきます。決して「料理はこうあるべき、こうあるもの」という姿勢ではなく、料理を作りたいお相手のこと、料理を作る自身にも優しい語りかけでした。

タミさんが今まで受けてきたお悩み相談の一部も、質問とお答えと合わせて載せられており、それを”人を育てる料理”の項として書かれてるのがとてもおもしろかったです。私は「確かになぁ〜」と頷くばかり。

本当に最初から最後まで全く飽きずにさっと読めた本で、手元に置き、この先繰り返し読み返したいと思いました。
そして、何人かの友達にオススメ/プレゼントしたいなぁと思った本です。
私が買って、私の母も読んだ一冊です。

ちなみに、私が個人的に感動したレシピは「マヨネーズ」です。
我が家ではマヨネーズは家に常備しないので、今まで手作りマヨネーズは何度か挑戦してきたものの、あまり美味しくできなかったんです。
でも、タミさんのレシピを見て「あ!これかぁ〜!!」と納得しました。

よろしかったら、お試しください。

私愛用のスウェーデンの古い鉄のフライパン2種。
スウェーデンの家族のもとで使っていた2タイプが使いやすく、
セカンドハンドショップで数年探してやっと手に入れたもの。
国を超えて移動しても、どこにでもカバンに入れて持っていきます。
タミさんの欲しいものは、ブランドバッグよりも重たい鉄鍋。
流行のバッグは一時の幸せを運び、鍋は家族を楽しませ、
心に一生の幸せをくれるだからだそう。ものを買う価値観でも共感できました。



<Amazonのアソシエイトとして、[釣妻食堂]は適格販売により収入を得ています。>

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