「環境」「チーム」考察編⑥

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簡単に勧誘の流れをまとめると「自分の人生への不安を煽る⇒一般的な価値観と異なる価値観を提示する⇒その価値観に従えば豊かになると仄めかす⇒師匠の言うことを聞くことが大事だと認識させる」となりますが、これはまさに既存の社会秩序への不安を煽り、特定の人物への帰依を要求する新興宗教と同じ理屈です。ここまでスムーズに誘導される人は、他人の話を真に受けやすいので、自責論・接触禁止・厳しい生活といった価値観を受け入れ、自ら思考力を削ってしまい、洗脳にかかりやすい状態を自ら作り出してしまいます。「環境」の貴重な収入源である自己投資は、その金額の大きさと、ロジックの不正確さから、一番疑問を持たれやすいポイントなので、マインド・コントロールの手法を活用しているのだと思います。

このような勧誘に引っかからないために、私が重要と考えるポイントをいくつか示します。

まずは、「個人的な悩みを社会不安など大きな話と結びつける言説には注意する」ということです。そもそも、人の抱える悩みは大抵がありふれた、つまらないものです。私が最初に抱えていた悩みも「社内の人間関係がうまくいかない、結婚相手が見つからない」といった、ごくありふれたものでした。初対面でそんな話を興味深く聞いてくれる人は、何かしらの意図がない限りはいないでしょうし、そこから社会不安などの言説を持ち出してくる相手は、まずマルチか新興宗教の勧誘だと思って、遠ざけましょう。友達を作りたければ、趣味や好みなど、明るい話題で共通点を探した方が良いです。

次に、「一般的な価値観と異なる価値観を称揚する言説には注意する」ということです。「自分たちは他の人とは違う」という主張に同意すると、他の人はわかっていない、とそれ以外のコミュニティを遠ざけてしまい孤立してしまいます。多様な価値観を認める、くらいであれば良いのですが、「あれはダメ、これは良い」という主張が出てきたら、その根拠は抜きにして警戒のアンテナを立てるのが良いでしょう。

そして「自分がやろうとしていることの仕組みはきちんと理解する」ということも必要です。特に会社員になると、極端な話欠勤さえしなければ毎月給料がもらえるので、仕組みに思いを馳せることなどないのですが、まともな組織であれば、その善し悪しはともかく仕組みについてはきちんと説明してくれます。ビジネス系の話で、仕組みが分からない、説明に明らかな矛盾点があるという場合は、十中八九まともなビジネスではないので、機会損失だなんだといわれてもきっぱりと拒否した方が良いです。

素直で向上心がある、ということは、社会においては必ずしも長所となるわけではありません。方向性を誤った「向上心」を持たず、批判的な目を養うことが、魑魅魍魎の跋扈する社会を生き抜くのに必要なスキルではないか、と今では考えています。

【参考文献】

マインド・コントロール 増補改訂版』岡田尊司著・文藝春秋

現代オカルトの根源――霊性進化論の光と闇』大田俊寛著・筑摩書房

完全教祖マニュアル』架神恭介/辰巳一世著・筑摩書房

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