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退職して何者でもなくなったので、西友でマイふきん(5枚入178円)を買ってきた

在職中は部長という肩書きがあり、当然のごとく私専用の机もパソコンもあった。さらには、私専用の愛妻弁当も食べていたし、私専用のマイ印鑑も持っていた。

約20年前に部長になったが、抜擢の理由は「取引先と話すのに、肩書きがないと格好がつかんだろ。部長にしとけ」だった。昇進しても給料は変わらなかったから、平社員待遇の部長だと言っていい。

つくづく私は特別だったと思う。

社員は頻繁に「印鑑をお願いします」と私のもとにやってきたが、部下を信用しないでどうする。内容についてはほとんど吟味せず、景気よくハンコを押したものだ。我ながら太っ腹だったと思う。私が印鑑を押した後は、さらに上層部がチェックするのだが、承認が得られず、何度か差し戻しされたようだ。いったい、どこがまずかったのだろう。部下を信用したばかりに、私の信用を失ってしまったかもしれないと思うと、やりきれない気持ちでいっぱいだ。

だが、頑張ってハンコを押した日々は、それなりに充実していたと思う。47年間の会社生活に悔いはない。

さらには、時折り社内を散策すれば、10人に一人は挨拶をしてくれた。残り9人は素通りしたが、私のことを知らないか、知っていても目に入らなかったかのどちらかだろう。しかし、60人ほどの小さな会社だ。まさか知らないわけはない。普段から、無駄な仕事を押し付けられないよう、気配を消す努力していたから、たぶん、その成果が出て目に入らなかったのだと思う。その証拠に、出入り口付近で社員と鉢合わせすると、道を譲ったのは、ほぼ私だ。 

こんなふうに書くと、会社でいじめられていたのではないか、無視されていたのではないかと思われてしまいそうなので弁解しておくが、贔屓目に見ても、私はかなりのやり手だった。

トラックの運転もできるし、大量の荷物も手積みできる。フォークリフトもお手のものだ。フォークギターも弾けるし、ドラムも叩けるのである。ドラムはバンドのリズムの要だ。ドラマーがいじめられたという話は聞いたことがないし、トラック野郎はどちらかというと通常イジメっ子の側だ(優しい運転手もいる)。

話を元に戻すが、会社で目立ちすぎるのは良くない。なぜならば、本当にしたい仕事がしにくくなるからだ(本当にしたい仕事があれば、の話だが)。

仕事が多すぎて困っているのなら、気配を消す術を身につけることを強くおススメする。それが無理なら、近寄りがたい雰囲気を出すか、それも無理なら、近寄りがたい匂いを身につけるとよいだろう。

ついつい説教じみた話になってしまったが、このように私の職業生活は充実していたし、大半の社員に尊敬もされていたと思う。そして、私は間違いなく社会的に見て「何者か」だった。それに、名刺に「部長」とさえ書いてあれば、たとえ私が何者であろうと(平社員待遇であろうと)、何者かのように感じてもらえて、大変好都合だった。

それが、どうだ。
退職して、私は何者でもなくなった。名刺に「部長」と書けなくなったのである。もし書けるとしたら「無職」、「年金受給者」、「家事手伝い」ぐらいしかない。

…と、ここまで書いて気がついた。

在職中は、部下が「手伝い」という言葉を使うと厳しく指導したものだった。なぜかというと、一般的に「手伝い」は責任の程度も軽く、主体的ではない。強い積極性が感じられないからだ。

言葉は、ただの言葉ではない。普段自分が使っている言葉に、無意識のうちに影響を受けてしまうのではないだろうか。

「家事手伝い」

私ともあろうものが、こんな言葉を使うようになってしまったとは…。

先日、こんな事件があった。

「あなたが家事をしてくれるようになったのは、本当に助かるけど、ふきん、強く絞りすぎじゃない? すぐ破れちゃうんだけど。 ふきんをいじめないで」

社員をいじめた覚えもなければ、ふきんをいじめた覚えもない。誤解だ。

それに、そんなことを言うなら、ビショビショのふきんで拭かれるテーブルは、可哀想ではないのか? それだって、いじめではないのだろうか。妻の視点は一面的だと思ったのである。

しかし、その時、歴史は動いた(私が動いた)。

西友で、ふきん(5枚入178円)を買ってきたのである。パッケージには「きほんのき」とある。やはり、ふきんは基本だ。買ってきて良かった。

このふきんを私専用にすれば、「すぐ破れる」などと言われなくてすむはずだ。

「これは、マイふきんだ。これからは、僕はこれを自由に使うことにする」

「私が使っちゃいかんの?」

「いいけど、すぐ破れるって言わん?」

「だって、すぐ破れるじゃん」

…事実、ではある。だが、事実なら人間何を言ってもいいということではなかろう。

178円と大変お財布に優しい買い物ではあったが、私は、いったいなんのためにふきんを買ったのであろうか。

しかし、何事も改善してみることが大切だ。PDCAをしっかり回し、より良い家庭生活になるよう努力を積み重ねていきたいと思う。

自己PR 

今は、年金以外の収入もなく、私は料理も作れません。このままでは、家でゴロゴロと過ごし、無駄飯を食い、ビールを飲み、たまに格調高いnoteを書くだけの人気者になってしまいそうです。そこで、なんとか47年間の業務経験を活かす仕事がないか探しています。

私にできることは、おおむね次のとおりです。

・法改正への対応(誤った法解釈をすることもあります)

・ブログ運営(企業PRは苦手です。過去に作ったサイトはうまくいきませんでした)

・トラックの運転(事故歴、違反歴共にありますが、やる気もあります)

・フォークリフト、フォークギター(かぐや姫、吉田拓郎あたりまでで、ヒゲダンは無理です)

・掃除(分別、掃除機がけは得意ですが、ふき掃除は苦手です)

一番得意なのは、押印のほか、捺印です。それなら、十分に御社のお役に立てると思います。
このnoteを読んで、ぜひウチで「ハンコを押してほしい」と思われた採用担当者さまがいらっしゃいましたら、ぜひぜひご連絡ください。

報酬は、生活費から年金額を差し引いたあとの赤字分相当額(おおむね2,000万円。夫婦二人暮らしの一般的な高齢者世帯が必要としている金額で、それでも足りないという議論もあるようです)で結構ですが、前払いでのお振込みをお願いします。

注)誤って大金(4630万円)を振り込まれたとしても、ネットカジノ老後資金に全部使ってしまったため、返金できません。あらかじめご承知おきください。

サポートしてくださったお金は、本を買ったり、映画を観たり、人生を楽しむために使わせていただきます。