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つんの小説

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ぼちぼち書いてます。中編・長編を書きたい。
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#SF

安楽死救済制度でも救われない。

 20XX年、逼迫した介護による問題で知的障害や精神疾患を抱える者、後期高齢者の安楽死救済制度が法律にて確立された。杏奈は重い、生活に支障をきたすレベルの精神疾患を患っているので、この安楽死制度を受ける側となる。2週間、湖の近くのコテージで余生を過ごしたあと薬物投与で安楽死を図る。ずっと幻覚や幻聴に苦しんでいた杏奈はやっと解放されるんだという思いと、死への恐怖が拭えなかった。幻覚や幻聴って当事者は

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小枝散りゆく、つゆ知らず

小枝散りゆく、つゆ知らず

既視感。
 昔、私はこの近くに住んでいたことがあった気がする。なんとなく河の感じや道に見覚えがある。朧げなのは10年も前の記憶だからで、小学校に上がる前だった。まだ母と暮らしていたときだ。
 この街は交通量の多い、広い大通りよりもうんと幅の広い運河が流れている。河は黒々としていてうねるように流れている。少し潮のニオイが混ざった運河特有の匂いがする。このニオイを嗅ぐのが日常になって暫く経つ。ここでは

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