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2024年達成できなくても問題ないけどできたら嬉しい10個

祖父の七回忌法要の後、従妹弟家族と会食することになった。畳敷きの和室には明るい光が差し込み、卓に料理が美しく配膳されていく。

会うのは祖父の葬儀以来である。こちらの人見知りをものともせず、まるで毎日顔を合わせているかのように従妹弟家族は話しかけてくる。この人たちと血がつながっているのだなあと不思議な感慨にふけっていると、叔父が改まって音頭を取った。

「それではせっかく集まったことですし、一人ずつ今年度の目標を発表しましょう」


私は驚きのあまりポカンと口を開けたまま叔父を見つめた。

なぜこのタイミング?
なぜめったに会わない人たちの前で?

冗談かもと期待したが、従妹弟家族はさも当然のように受け止めている。

「つむぐちゃんからどうぞ」とトップバッターを振られて、頭が真っ白になった。こうして節目節目に目標を共有するのが従妹弟家族のルールなのだろうが、我が家では進学や就職、誕生日すら抱負を聞かれない。

そういう環境で育ってきたからか、内なる野望を口にすることに激しい抵抗を感じる。無謀すぎて笑われるのではないか、簡単すぎてがっかりされるのではないか。周りにどう思われるかを気にしすぎて、本当はやりたくないことをさも心から望んでいるように発言してしまうのではないか。


そりゃあ、公言する方が実現可能性は上がるのかもしれないけれど、私の夢を叶えようとしてくれなくともよい!

と反旗を翻したい衝動をこらえ「異動が決まっているので心機一転ガンバリマス」と無難に発表を終えた。


就職して2年目の出来事であったが、社会は似たような場面の連続である。新年度はくす玉を仕込んで太鼓をたたき、盛大に上層部にやる気をアピールし、半年に一回は新しい目標を立てて考課表の一番上の欄を埋めなければならない。それとは別に毎月、毎日のノルマもある。

他者にもイメージが湧きやすく、それでいてちょっと頑張らないと届かない、自分にも会社にも利のある魅力的な目標を立てる能力は、もはや素養のひとつ。私も従妹弟家族を見習って、日ごろから鍛えるべきなのではないか。

というわけで、今年は「目標を立てる」という目標を立て、苦手意識に抗ってみようと思う。いきなり本気の発表は恥ずかしいので、肩慣らしに達成できてもできなくてもいいようなものを10個挙げてみる。抱負が枯渇して困っている方は、いいなと思えばパクッてもらって構わない。ともにこの目標中心主義社会を乗り切りましょう。



①美術展・展覧会に行く

毎年意識的に足を運んできたが、2023年はひとつも行けなかった。年末に慌ててイベントを調べたが、興味をそそられなかったのは感性が鈍っている証拠かも。アグレッシブにインプットするに越したことはないが、せめて年に1度、書店やデパートの展示スペースに立ち寄るくらいのゆとりは持っていたい。

②編み物のレシピを読めるようになる

昨秋から始めたかぎ針編み。わかりやすい解説動画がYoutubeにたくさん上がっており、見よう見まねでマフラーや巾着、サコッシュなどに挑戦してきた。だいぶ要領も掴めてきたので、そろそろセーターや靴下、バッグなど複雑なものを編んでみたい。大物となるとレシピ(編み図)を読み解く必要がある。これが地図記号で作った魔法陣のような、リアル脱出ゲームの3問目あたりに出てくる暗号のような見た目で、気が遠くなるほど細かい。ぱっと目の前に差し出されるだけで目がちかちかして、脳が理解を拒む。

できるならばあやつと向き合わずに編み物ライフを謳歌したいと願ってきたが、友達から本を貸してもらえることになったので、これを機に読み方を覚えたい。多くは望むまい。最悪、作品は出来上がらなくとも、レシピに対する抵抗感が薄くなれば及第点とする。


③韓国語を勉強する

虹プロ2にハマり、すっかりNEXZのユウキペンである。冒頭から覚えたての単語を使って通ぶってみたものの、現状知っている韓国語はアニョンハセヨとペンとネのみである。ゆくゆくは韓国デビューを果たし、韓国語のコンテンツが中心になるだろう。輝きを増していく彼らを応援し続けたいが、言語の壁を抱えたまま推し活のモチベーションを維持するのはなかなかハードである。せめて歌詞の内容を理解してパフォーマンスを楽しめるレベルまでは習得したい。

④推しの出ていないお笑いライブに行く

昔からくじ運が悪い。席替えは一番前の真ん中、なんてまだいい方。『最速王決定戦』と題した100メートル走に、9秒代後半の私がクラス代表として出場する羽目になった。

ここにきてこの運の悪さが推し活に影響を及ぼしている。お笑いライブでセンターブロックが取れない、背が高い人の斜め後ろに当たる、2公演取ってどちらもほぼ同じ席……。背に腹はかえられん。優先して抽選してもらえるプレミアム会員に登録しようと思う。

普段、抽選制度を利用するのは推しのしずるの単独と演劇ユニット・メトロンズの公演の年4回。月額料金を払うのはもったいないと渋ってきたが、メトロンズのメンバーのサルゴリラがキングオブコントで優勝し、チケットが確保しづらくなっている。少ない機会を良い席で堪能しつつ、推しが出ていないライブにも足を運んで元を取りたいものである。

⑤漫画を読む

本好きを公言しているとおすすめの漫画を聞かれる。オタク気質なのも相まって詳しいオーラを醸し出しているのかもしれないが、実はほとんど読まない。いつも心苦しいのだが、聞かれるということは求められているということで、そこになにかしらのチャンスも潜んでいたかもしれない。今年は思い切って手を出してみようと思う。

漫画に限らずシリーズものの「読者の反応を様子見」的な間延び感があると、気持ちが離れたまま戻れなくなる。既刊10巻以内で一気に結末まで駆け抜けるようなおすすめがあれば教えてください。

⑥パスポートを取る

英文学科を卒業しているが、海外に行ったことがない。時間がないだのお金がないだの円安だの情勢的に不安だのと理由をつけているが、パスポートさえ取ってしまえば、案外サクッと海外デビューするのではないかとも思う。今のところさっぱり予定はないが、とりあえず取っておけば機会が巡ってくるかもしれない。

⑦一眼レフを使う

本当はあそこに行きたい、これを食べたいと書き連ねたいところではあるが、そもそも外に出るのが億劫なので挫折が目に見えている。ひと捻り加えて、とりあえずいつもの行動圏の外に出られるようにしてみる。入社5年の節目に購入した立派な一眼レフがあるのだが、コロナ禍以降ほとんど出番がない。宝の持ち腐れが一番もったいない。年末の達成報告は写真いっぱいの記事になるといいなあ。


⑧パソコンを買いかえる

立ち上げるのに20分、デザインソフトのアイコンをクリックして20分、初手の操作でフリーズして強制シャットダウンに20分……という非効率極まりない作業環境である。文章さえ書ければいいと思って選んだパソコンにデザインソフトをぶち込んだため、スペックがパンクしている。

それでも初めて自分で買ったパソコンはかわいい。いらいらをぐっとのみこみ「頑張れ頑張れ」と声援を送りながら使い続けてきた。が、2024年は転職も決まっており、創作活動に割ける時間は減る。続けるためには、生産性・快適性を上げる課金が必要なのではないか。いつも使っているものが一新されるのもしんどいので、ひとつずつアップデートしていこう。

⑨野菜を食べる

メンタルが弱るとできなくなることがたくさんある。生野菜を食べるのもそのひとつだ。野菜は嫌いではない。むしろ好き。でも、しんどい時には、絶妙なぬるさや噛みしめてようやく出てくる味、口内で溶けることのない歯ごたえ、ほのかな青臭さ……普段は気にならないそれらに労力を奪われる。と避けていると、どんどん栄養が不足していく。肌がゆらぎ、髪はぱさつくき、胃が荒れる。メンタルはもっと崩れる。

生野菜の方が栄養面ではいいのだろうが、食べられるだけでも自分を褒めたい毎日だから、せめて火を通した料理や野菜ジュースなどで補う意識を忘れずに。

⑩noteのフォロワー100人

執筆時(2024年1月6日時点で)フォローワーさんは97人。こんな目標を立てて、会社なら絶対怒られる。だけど私にとっては2021年から3年掲げ続けてきた目標なのである。他の媒体で活動していたわけでもなく、魅力的な肩書きもない私にとっては、雲の上のような数字。そこに手が届いたら、ようやく「noteで活動しています!」と胸を張れる気がするのだ。

自分の力だけではどうにもならないけれど、自分から動かなければ届かない。更新頻度を保ちながら、新しいことに挑戦し続けていく。2024年もますます力を入れていくので、どうか気の向いたときにゆるりと覗いてもらえたら幸いである。


欲張らずに最低限の希望を挙げたつもりなのだが、10個集まるとまあまあハードである。すでにちょっと後悔……。やっぱり目標を立てるのは苦手かもしれない。が、振り返る方は得意である。年末の答え合わせは楽しみにしていてほしい。


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