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だれでもなくなって

だれでもなくなって


私じしんが、
私という物語の主人公になっていけばいくほど、
想像の世界の生き物は
ぼうっと霞んでいく

私が現実世界に満足すればするほど、
私を取り巻いていた豊かな世界たちは、
だんだんと薄れて
しまいには
私の意識ではとらえられなくなってしまう

見えないものの存在が
はっきり感じられるときは
私が私でありすぎないときだ

私という存在から離れて、
名前も立場も役割も、何もかも忘れて
かぎりなくだれでもなくなるとき、

初めて私は
目に見えない存在たちをありありと感じ、
彼らと友達になることができる

物質に溢れている人間の世界の外側に、
幾重にも重なる異次元の世界たちの中に、
当たり前のように住まうことができる

今、この瞬間の生活が充実しているとき、
同時に心のどこかで苦しみを感じているのは、
今、この瞬間鮮明に認識する物質世界が、
たくさんある世界にうちの
たったちっぽけな一つでしかないことを
忘れてしまっているからだ

本当は、世界なんて人間の理解を超えて大きく、
はるかに神秘をたたえたものなのに

五感だけが感ずるものを本当として生きるのは、
あまりにも惜しい
第六感、七感、八感、持ちうる感覚全てを開いて


今を必死に生きれば生きるほど
忘れてしまうのが人間の性だけれど、

精神の目を毎日磨いて
異なる世界の住人と
心の鐘で共鳴できる者だけが知っている

密かな歓びを

どうかどうか、忘れずに


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