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『amazon輸入ビジネスの闇〜現役出品者が見た価格戦争と広がるやらせレビュー〜』 將口徹

【前文】

 今回の本は出版社によって販売されている本ではありません。
 Kindleの電子書籍限定で販売されている、自費出版の類になります。
 Amazonの自費出版はかなり怪しい本も多いのですが、本作はとても良かったです。自費出版の良さを生かした赤裸々な内容になっていました。

 ちなみにKindle Unlimited加入者は無料で読めますので、ぜひ読んでみてください。

 では、中身に入っていきたいと思います。


【要約】

 40歳で務めていた会社が倒産したことをきっかけに、著者は新しいビジネスに手を出しました。
 それは、Amazon輸入ビジネスと呼ばれるものです。
 中国のインターネットサイトから商品を直接購入し、Amazonマーケットプレイスで仕入れた商品を販売する、という形態になります。

 中国から商品を安く仕入れて、日本で高く売る、という実にわかりやすいビジネスモデルです。

 輸入ビジネスの一連の流れはこうである。

 ①売れる商品を「モノレート」「オークファン」「あまログ」等を利用してリサーチをする。

 ②リサーチ完了後、アリババ等の中国ECサイトで商品を選ぶ。

 ③輸入代行業者を使って、商品購入。

 ④商品到着後、検品する

 ⑤問題なければ、ヤフオク、メルカリ、Amazon等で販売する。



 さて、結論から先に言うと、著者は輸入ビジネスにまだ成功していない。
 いや、失敗しているとも言っていいかもしれない。
 1年近く事業をしているが、50万円以上の赤字を抱えているのだ。


 著者はこのビジネスの難しさとして、以下の点を挙げている。



 ○競合他社が多すぎる

 これは米国のデータですが、2017年の1年間だけで、約30万人新規出品者として登録されています。
 輸入ビジネスは新しいビジネスと言われているが、もう既に沢山の競争相手がいる。そのため、仮に人気の商品を仕入れても、全然売れない。

『たとえば「スマホケース」という単語で検索すると、「検索結果 800,000 以上 」と表示されます。80万件以上(!)の中から、レビューも販売実績もない自分の商品を選んでもらうのは、「不可能」です。……どうあがいても、売れないのです』Kindle版1166頁



 ○手数料が高すぎる

 Amazonマーケットプレイスで販売する際は沢山の手数料がかかります。
 FBAと呼ばれるAmazonの倉庫に商品を保管してもらう場合は倉庫保管料を支払わなければなりません。

『「売上そこそこあったなー」と思っても、銀行口座の入金額をみて、落胆する出品者は、私だけではないと思います。 費用の内訳は、……月間登録料、配送代行手数料、販売手数料、保管料、広告費などです。また、売れない在庫を処分したり返送してもらう場合にも別途費用がかかります』Kindle版1093頁


 
○どれだけ頑張っても、やらせレビューに負ける

 現在のAmazonのレビューには沢山のやらせレビューがあります。中国人の偽レビューはもちろん、Facebook等のSNSを通じたりして、やらせレビューを募集しています。


『出品者として一番我慢がならないのは、本来のレビューではなく、お金で買った偽レビューが蔓延していることです。ほかにも、販売を増やすためのグレーな手口がたくさんあることを知りました。法律違反ではないにしても、アマゾンが定めるルール違反を平然と行う出品者は普通にいますし、ルールを破るからこそ、ランキング上位になれるという不公平な現実がありました』(Kindle版159頁)



【解説】

 読んでみて、今も昔も人間ってのは儲かるビジネスに弱いんだなあと思いました。
 ちょっと前だとせどり関連の本もたくさん出版されてましたよね笑

 『〇〇ビジネスは儲かる!』このような表題の本は巷にたくさんあります。
 しかし、失敗をあらいざらい告白している本はとても珍しいですね。

 せどりや輸入ビジネス。また似たような他にもたくさん出てくると思いますが、一回立ち止まって本書を読むべきです。
 それによって人生に対する思慮深さみたいなことを得られると思います。
 成功談は本になりますが、失敗談は本になることは少ないです。けれども得られることが多いのは失敗談の方だったりするんですよね。
 

 さて、このAmazon輸入ビジネスの致命的な的な欠点を指摘したいと思います。

 売れ残りをゼロとして想定している。もうすこし言い換えると、売れ残りの分について、売値にきちんと価格転嫁されていない。
 普通ならば10個中3個は売れ残っても利益が出るような価格設定がされています。
 全て売り切って利益を出すという、会計的な考え方が弱いなあという印象がありました。

 需要を読むことは簡単ではありません。
 個人で誰でも簡単にできるなら、優秀な企業は売れ残り商品を抱えるはずがない。
 イオンやセブン&アイグループ等の大手小売チェーンは、ビックデータとAIをゴリゴリに使ってるわけです。それでも需要を読むことは簡単ではありません。
 ましてや素人がインターネットサイトを使ったとしても難しいだろうなあ、と思うわけです。

 輸入ビジネス自体はちょっと勧められませんが、この本はとても優れているのでオススメです。文章もうまく読みやすいです。

 最後に、やらせレビューに騙せられないようにやらせレビューをチェックするツールがあるようなので貼り付けておきます。是非確認してみてください。結構面白いですよ。

『サクラチエッカー』
https://sakura-checker.jp/

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