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定義する俳句(とは・は・として)

AとはB

家族とは炬燵こたつに足の触るること
一條友子

大好きな句。一読して納得できる。掲句は

AとはB(すること)

という構造をしている。いかにも説明くさい言い回しだが、Aを独自の観点Bで定義することにより、詩になる。

同様の構造の例句を挙げる。

冴え返るとは取り落すものの音
石田勝彦

・冴え返る(春):春さき、暖かくなりかけたかと思うとまた寒さが戻ってくること。一度暖かさを経験しただけに、より冴え冴えとしたものを感じさせる。

実体を持たない季語を、目や耳で知覚できる実体に例えている。

祈りとは膝美しく折る晩夏
攝津幸彦

概念である「祈り」を、動作で限定した季語「晩夏」で定義している。抽象的な表現だが映像が見える。

不退転とは崖に咲くをとこへし
鷹羽狩行

男郎花おとこえし(秋):オミナエシ科の多年草。女郎花に良く似るが花が白く全体にやや大きい。花期は八月から十月で全国の山野に自生。

AはB

夕立は貧しき町を洗ひ去る
松瀬 青々

「夕立というものは」というニュアンスを付加し、夕立と夕立が上がった後の町を描いている。

AはB(する)

という言い方で、Aの一面を切り取ろうとする表現ができる。

として

AはBとして~する

下記の「2.1 存在・行動のあり方の規定」で扱った表現。A=B。

例句を挙げる。詳細は上記の記事を参照のこと。

おぼろ夜のかたまりとしてものおもふ
加藤楸邨

白鷺は発光体として歩く
山口剛

秋草のいづれも供花として立ちぬ
櫂未知子

BとしてのA

先程の「として」が名詞を修飾する場合、「BとしてのA」という形になる。「の」が略されたような「BとしてA」という表現もみられる。

こちらも、詳細は 例句で知る「として」の意味と用法 の「注意:2の「として」が名詞を修飾する場合」を参照されたい。

しんがりとしての大きな白日傘
渋川京子

過去の記事と同じ句ばかり挙げているのは手を抜きすぎかもしれないので、私が大好きでたまらない句を引用する。

陽光の捕獲装置としてプール
あいだほ

小学生のころに校舎から見たあのきらきらしたプールを思い出す。気が付いたら脳内で読んでいるくらいこの句が好き。ずっと私の頭を支配している。

AはBをCとして~する

例句で知る「として」の意味と用法 の「2.2 行為・行動・態度のあり方の規定」に当たる。B=C。

緑蔭を大きな部屋として使ふ
岩淵喜代子

俳句では、主体が作者自身である場合、主語は省略されることが多い。
緑蔭(B)= 大きな部屋(C)。

純白のマスクを楯として会へり
野見山ひふみ

純白のマスク(B)= 楯(C)。

参考URL

https://kigosai.sub.jp/001/27701-2

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