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病的に飽きっぽい人を継続させるコツ【オンラインナースのお仕事】

※この記事は、双極性障害の朝日さんの原稿をもとに、看護師の私の視点を入れ書き起こしたエッセイです。


1.継続のコツはフィードバックをもらうこと

朝日さんはご自身を「病的に飽きっぽい」と言います。私は、そんなことないと思っています。ただ、ご自身の「楽しくない」「やりたくない」に正直なだけ。人間の脳は飽きやすいと言われていますし、世の中には「はじめは楽しかったけど、やめるにやめられなくてただなんとなく続けている」という人も、多く存在していますしね。でも、だからこそ、自分をそんな風に評価する朝日さんからは、何か一つのことを継続したいという想いがより強く伝わってくるように感じていました。

朝日さんの日課である原稿用紙10枚の執筆は3カ月を超えました。お休みした日も、10枚ちょうどは書けない日もありましたが、手元には書き上げた700枚を超える原稿用紙があります。続けることが難しかった朝日さんにとって、それは大きな自信につながりました。

「私の継続のコツは、読者ターゲットを一人に決め、その読者を変えないこと。読者ターゲットからフィードバックをもらうこと」

朝日さんの原稿より

継続のコツには、生活リズムを崩さないこと、家族の協力を得ることと原稿に書かれています。そして、「フィードバックをもらうこと」だとも。私は原稿を読んで感想を送っています。それが継続の秘訣となっていることはとても光栄です。しかし、これが習慣化してほしくて感想を送っていたわけではありませんし、今も記録更新をサポートするために送り続けているわけでもありません。では、何のためか。純粋に健康であってほしいという願いと、私自身の成長のためでもあります。この記事が一体誰の役に立つのかわかりませんが、今回は「病的に継続が困難な人を継続につなげたフィードバックのコツ」をまとめていこうと思います。


2.どんなときも書き手のペースで

先日「ハケンアニメ!」という映画を観ました。中村倫也演じる王子監督の復帰作を支える、チーフプロデューサーの尾野真千子。期待が高まる一方、中村倫也は失踪。ふらりと戻ってきた際には「お前ふざけんな」と尾野真千子のグーパンチが飛び出す。まあ、それはそれで関係が良好だったりして、結局は尾野真千子がいたから作品は大成功という形を迎えるのですが。

で、何が言いたいのかと言うと、これは朝日さんには通用しない(笑)極端な例ですけどね。そもそも今のスタイルに締め切りというものが存在しないので、ご自分のペースで書けばいい。原稿が書けないからといって、私が尾野真千子のように激怒する必要はありません。おそらく、締め切りというもの自体が朝日さんにはストレスになります。

鬱の時期は2日くらい原稿が届かないこともあります。毎日来るはず原稿が来なくなる、いつもどおりがいつもどおりでなくなることに、人は少なからず気になるもの。「大丈夫かな」とは思いますが、私からは連絡をしないようにしています。自分のペースでいられないことは、苦しさを助長させると思うからです。急かさず焦らせない。常にあなたのペースで大丈夫ですよというスタンスでいることが重要だと考えています。


3.負担かどうかは読み手がコントロールできる

楽しく書けていた原稿が楽しいと思えないときもありました。それは、楽しく読んでいた読者からすると少し哀しいことでもあります。しかし、病気を理解するのです。また原稿を書くことが楽しいと思えるかはわかりませんが、鬱が過ぎれば楽しく過ごせる日が来るのは確実です。

反対にやや躁状態でも、朝日さんは人を振り回したりはしません。たくさん書きたいことが湧き上がっても分量は10枚と決めてらっしゃるので、自分との約束を守るだけです。よく「相手の負担にならないように気を付けなければ」と書かれることがあります。しかし、それは相手次第な気もするのです。ここでいう相手というのは私のことですが、いくらでも自分でコントロールできます。

私も、予定がある日や体調が悪い時は「今日はお返事送るのをお休みします」と伝えます。決して無理はしません。続かないからです。やりとりを通じ「できないときはできないと言ってくれる人」という認識に変わっていったようでした。


4.面白い人間でいる

朝日さんの1原稿につき、500~1000文字の感想を送っていると思います。毎日4000文字書く朝日さんとは比較にもなりませんが、私も毎日違う感想を書き続けます。はじめはこのやりとりが続けられるのかという不安もありました。私は教養がないことにコンプレックスを感じ30歳で読書を始めたという経緯があります。看護師は病気や検査・処置についてはものすごく勉強しますが、それ以外は世間知らずといった特徴も。あくまで私の意見ですが、少なくとも私はそうでした。

そして、人はつまらなくなると飽きます。朝日さんのためにと言うわけではありません。今までの私はつまらない人間だと自負していたところもあるので、面白い人間になりたかったのです。私は中田敦彦さんが好きなのですが、中田さんは堀江貴文さんに「君は色んな話ができるので面白い」と言われたそうです。中田さんはYouTubeを始めたころ、コンテンツを増やすために様々なジャンルの本を読み始めます。その努力が実り、今ではチャンネル登録者数500万人超。このことから、面白くいるためには、色々なことを学ぶ必要があるということが分かります。

朝日さんの原稿には、政治・経済、日本史、世界史など、私の苦手な分野もじゃんじゃん出てきますので、少しずつ勉強しています。子どもの幼稚園の送迎時にYouTubeで流す程度ですが。それでも、全然知らないのと少し知っているのでは、天と地の差くらいフィードバックの内容の濃さが変わります。

私は映画を観てから原作を読み、さらにまた映画を観ることもあります。表情だけでは掴み切れなかった繊細な心の動きを文字として目にしたとき、人の心の深さを知るのです。「わかる」とか「私も同じです」とか安易に言いたくなんです。感情の引き出しを多く持っておきたい。それを言葉にする力も持ち合わせたい。できれば、多くのことに共感できたらいい。あらゆる人と言うわけではなくて、家族だったり、友人だったり、自分を信頼してくれている人とは。


5.中学の先生との思い出

ふと、中学の頃を思い出しました。国語の家庭学習ノート。漢字や文法の練習をして、最後に国語の先生にお手紙を書いていました。国語は嫌いだったけど、先生とのやりとりが楽しくて提出していたという動機が大方の割合を占めていました。「要領のいい友達がむかつく」「スポーツで結果を出せなかったらどうしよう」とか、中学生だったから自分を着飾ることも知らず、書きたいように書いていたと思います。

先生は、赤ペンですごくきれいな文字で、毎回毎回丁寧にお返事をくれました。A4のノート1ページびっしりに書いてくれたこともあります。新人だったから、やらねばならない仕事以上に生徒を思いやってくれたのでしょう。「はるかへ」と優しく諭すようにくれたメッセージに、思春期の私は幾度となく救われました。親にも言えないことを言える大人がいたことに、深く感謝しています。きっと私には文字で誰かを勇気づけたいというのが、根底にあるのかもしれません。




※このマガジンは、個人が特定されないように書こうと留意しています。でも、朝日さんは「別に自分だと気づかれても構わない。それよりも、同じ病気の人を救えるのならという思いが優先する」とのこと。関係者の方は、そっと見守ってくださると幸いです。


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