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花火と恋と【一話読み切り】

今日は1年に1度ある地域の大きな花火大会。
私は初めての参加だ。


大学に入学し、一人暮らしにも慣れてきた8月。
入学してすぐに一目ぼれした清塚君を誘うなんて出来るわけも無く。。

友人の姫乃と二人で浴衣を着て会場に向かった。
「今日あつすぎ~~でもうちらイケてるよね~~~浴衣実家から送ってもらってよかった~」
姫乃が会場で配っていたうちわで顔を扇ぎながらいつも通り元気に話している。
「ほんとだね。私も浴衣なんか着なくても良いやって思ってたけど姫乃に着ようって言ってもらって、お母さんに急いで送ってもらって正解だったかも」
「この浴衣姿清塚君に見せたかったね」
「そっ、そんな!恥ずかしくて無理だよ!」
姫乃は私が清塚君に恋をしていることを知っている。
今日も、清塚君を誘えって姫乃に背中を押してもらっていたけど、
どうしても無理で姫乃が一緒に花火を見てくれることになっていた。
「なんでうちらに彼氏いないかねぇ?大学の奴らがいたらこの姿見せつけてやろうよ!」
「姫乃はともかく私はそんな自信無いから・・・」
「何言ってんの!?亜紀めっちゃ可愛いから!」
「うーん・・・自信持てないなぁ」
「とりあえず良い席確保しなくちゃねー!」

少し早めに会場に着いて正解だ。
屋台でジュースや食べ物を買いながら席を探していると
どんどん良い席が埋まっていた。
私たちは2人しかいなかったため、何とか隙間を狙い前の席の方を確保出来た。

「亜紀さー、清塚君に告白しないわけ?」
「し!しないよ!だってまだ…あんまり話したことも無いし」
「じゃあ話しなよ~ 連絡先はゲットしたんでしょ?」
「うん・・・。授業でグループ分けされて、偶然清塚君と同じグループで、宿題一緒にやらなきゃいけないことになったからね」
「ほらぁ。もう運がやってきてるじゃん!」
「そうかなぁ・・・」
「大学なんて人数多いんだよ?その中でたまたま同じ授業を取って、たまたま同じグループになるって結構すごい確率だと思うけど」
「とりあえずなんか誘ってみようかな・・・」
「そうしなよ!まずはご飯でも行ってさ、それとなく好きアピールでもしてみたら?」

……
”ヒュルルルル~~~~  ドォーーーーン”

花火大会が始まった。
会話は一旦終了だ。

この景色を、清塚君と一緒に見ることが出来たら素敵だろうな…
来年、一緒に来れたら良いな。



2時間ほどで花火大会は終了した。
来場人数が何万人もいるため、帰り道は人でごった返す。
姫乃と離れないように駅へ向かった。

「あ・・・・清塚君だ」
帰り道、数えきれない人の中から清塚君を発見した。
「え!?どこどこ!?話しかけに行こう!」
姫乃が興奮して清塚君を見つけようとする。
「いたけど…無理だよ」
「え!なんで!?」
「ほら。あれみて」


私の指さす方向には、浴衣の女の子と手を繋いでいる清塚君がいた。
「え…彼女・・・・かな」
「そうじゃないかな。彼女いるなんて全然知らなかった。まだ、それまでの関係でも無かったしね。」
「亜紀…」
「私、告白なんかしてなくてよかった。デートも誘わなくてよかった。まだ、関係も深くなくてよかった」
無理矢理笑顔を作ろうと
姫乃にあれこれ言ったけど
どうにも涙が止まらない。
私の浴衣姿をもし清塚君に見せつけていたらとんだピエロだった。
まだ傷も浅くて済むかな。

綺麗な花火を見て満足した人たちの中で私だけポツンと妙なスポットライトが当たっている気がした。

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