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クリエーションの裏側 #7

日々依頼主の要望に応え彼等にもそして自分自身も満足させるヘアースタイルを生み出す事に奮闘しているわけですが、今回は依頼を受けてから撮影をして写真が出来上がるまでの裏側を紹介したいと思います。


Referenceの共有

アメリカでは撮影前に事前に会って打ち合わせをしません、数日前にメールで内容を共有して撮影本番に挑みます。

実際にアートディレクターから送られてきた概要を紹介します。

「This project is Asian traditional style × Modern twist. Let’s do our modern style ,super fresh. But of course some fantasy~~~                    このプロジェクトは伝統的なアジアンスタイルを現代的にヒネった物。私達の現代的なスタイルを作ろう!とても新しくてでももちろん何か幻想的な〜」

内容の説明はこれだけです笑、これだけだと幅が広過ぎてゴールがイメージできませんよね、なのでReference(参考資料)も添付されています。  

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これが実際に送られてきたReferenceです。


言葉でゴールを共有するのはとても難しい、アーティスト達はそれぞれ育った国や歳、感覚が違うので言葉だけだと捉え方にバラつきがある。

1枚目の写真は背景の色のイメージ、2枚目はヘアー、メイク、衣装のイメージ。 この写真に対しての説明文はありません、後はそれぞれのクリエーションに任せる、方向性さえぶれなければ自由にやってくれ!という事です。

これを踏まえて僕は数日間別の仕事をこなしながら頭の中でいろいろ考えるわけです。

伝統的であり現代的、、、真逆を合体させ自分らしく、難しいお題でした。



事前準備

伝統的と言われ直ぐ思いつくのは着物を着た日本髪の女性、これをこのまま表現するとただの伝統的、さらに日本だけでは無くアジアです。

他のアジアの国の伝統的なスタイルなんて作ったことないのでまずは自分なりにヘアーのReferenceを探さなければいけません。


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沢山集めたReferenceの中から自分好みにまとめた物。


撮影は10時間で5つの違うスタイルを作って撮影しなければいけないのでスピード勝負です、現場で迷ってる時間はない、スピード&クオリティが求められます。そして新しくて自分らしくを5パターン、、、頭が痛い。

今回は事前の情報が多い方で、Referenceが無く当日の朝会ってから細かいとこは詰めて行こうっていう事の方が多いです。つまり現場での判断力やアイディア力が必要です。

そこで重要なのが日頃から幅広くインプットしておくことがとーーーっても重要です。僕は大袈裟では無く生活のほとんどの時間をこれに費やしています。

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これらは興味をそそった写真集の一部です。こんな感じの写真集を200冊近くもっています、それでも足りない時はPinterestで探します。


ジャンルは大きく分けて2つ、直接的にヘアーの参考になる物や10年以上前のファッション誌。

もう一つは間接的に参考になるアートやグラフィックや建築、昔の写真集、風景、プロダクトデザインなど普通の日常生活では絶対に見る事ができない知らない世界を意識して集めてます。全ては突拍子もない依頼が来た時や意見を求められた時のレスポンスの速さとセンスを磨くためです。

この情報量がクリエーターにとって技術、道具、経験以外の武器になります。


話は撮影に戻ります。

当日までに準備することは先程のHair reference作りと髪の準備です。

送られてきたReferenceを元に当日現場で作る余裕が無さそうな物を事前にじっくり作っておきます。

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ハンガーやハンドバッグの取手に毛を巻きつけて固めた物。


モデルさんは前日まで誰になるかわからないので髪色がわからないのが難点でしたが、アジア人の自然な黒髪より少し明るい物を作りました。

モデルさんより少し明るいだけなら当日カラースプレーで暗くする事ができるからです。逆にスプレーで明るくするのは無理があるのでこの判断になりました。

実際どれを使うかは服やメイクとのバランスを見るまで決まらないのでとりあえずは4パターンのヘアーピース。


仕上がり


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どうでしょうか? もう一度初めに送られてきたReference と見比べてみてください。これが僕が出した答えでした。準備しておいたヘアーピースとモデルさんの地毛の色がピッタリだったので言われなかったらモデルさんの地毛で作ったと見た人は思うはずです。

もちろんプロのモデルさんの髪は切れないので真ん中の写真の前髪も偽物ですが色とテクスチャをピッタリ合わせてたので自然に見えると思います。(作ってるシーンは僕のIGTVで見る事ができます)

反省としてはやはり日本髪のバランスが頭の中にこびり付いていたのでそれを現代的に作るのはあまり新鮮味を感じれなかった。


僕が集めたReferenceの中にある能面の前髪や顔周りの垂髪、準備しておいた輪っかとメイクとモデルさんの表現のバランスがアジアの伝統と現代を融合できたと思います。

真ん中の顔にクリスタルが付いているメイクは非常に主張が強かったので髪はできるだけコンパクトでシンプルでメイクの邪魔をしないように意識しました。


こんな感じで

依頼主の要望を感じとる →  髪目線で資料を集めまとめる →  やれる準備を事前にしておく →  他のアーティストのクリエーションとのバランスを考え表現する


この流れが僕が仕事する上で重要視しているポイントです。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


Tsuki

@tsukihair

https://www.streeters.com/artists/hair/tsuki#portfolio










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