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子どもを育てることを何と捉えるか ~「子ども庁」から考える、子どもに関する施策体制のねじれ~

 子ども庁の創設について、政府が当初想定していた2022年度から、23年度以降へと先送りされることが報道されました。


1 学校現場で実感する子どもに関する施策体制のねじれ
 


 公立学校であっても私立学校であっても、基本は行政の管轄のもと、教育活動は行われます。学校現場で働いていると、(広い意味での)教育施策について、複雑に感じることがあります。
 
 学校であれば、基本的には文部科学省の管轄です。わかりやすいところで言えば、何の教科をどのくらい実施するかといった教育課程を定めています。また、学校を運営する上での基本的枠組みを示しています。学校の教育活動の大枠小枠です。

 しかしながら、近年であればICTに関するものは総務省からのもの、プログラミング教育は元をたどっていけば経済産業省からのものです。いわば文部科学省が一旦咀嚼し、教育へとカスタマイズしている形です。

 もっと踏み込んでいくと、最近「子どもの貧困」等の表現がありますが、教育の土台にあたる生活について…例えば生活保護家庭であったり、障害等に関する部分であったりは、厚生労働省の管轄になります。
 具体的な事例でいえば、家庭が不安定で本人も不安定、登校できなくなっている…こうなってしまうと、原因が家庭にあると分かっていても、基本的に学校の管轄ではどうにもできません。(金八先生のような方も時々いらっしゃるかもで、人道としてはアリですが、制度的にはグレーもしくは…です)

 近年、スクールソーシャルワーカー等との連携が進みつつありますが、福祉領域との連携であり、教育領域の枠には収まりません。
 また、保育園に代表されるような就学前についても、厚生労働省の管轄であることが多いです。


 つまり、子どもに関する施策を管轄する省庁が、入り組みねじれたようなかたちであることは、学校現場で働いているだけでも十分感じるのが現状です。


2 子ども庁って?
 
 

 端的に述べられているサイトとして、自見はなこ国会事務所「こども庁創設に向けて」から引用します。

※特定政党を応援するものではありません。

 

 こども関連の政策は、関係省庁がバラバラで、 縦割り⾏政の弊害が発⽣しています。⽇本では、1970年代半ばから、40年以上も出⽣率が低下し、⼦どもの数が減少する少⼦化現象が続いています。
 少⼦化に影響を与える要因として、労働環境の変化や、⾮婚化・晩婚化に伴う出⽣率の低下など、さまざまなトピックがあります。残念ながら、現状の体制では少⼦化問題を解決できるほどの回復は⾒込めません。
 ⼦ども関連の政策は、保育園・学童保育や医療は厚⽣労働省。幼稚園と学校は⽂部科学省、さらには警察庁や法務省、総務省、経済産業省、国⼟交通省など、関係省庁がバラバラに動き、縦割り⾏政の弊害が起きています。
 このように、少⼦化に影響を与える要因が解決されないのは、国の取り組みが⼀本化されていないことが寄与しているとも考えられます。
 現在、子どもをまん中に置いた社会づくりへの大きな一歩として、⼀元的に⼦どもの⾏政を扱う⾏政組織「こども庁」の創設を提案しています。
 ⼦どもを産みやすく育てやすい国づくりを⼀緒に考えていきませんか。
 みなさんひとりひとりが理解を深めることで、安⼼して⼦どもを産み育てられる環境を実現することができます。


 つまり、子ども取り巻く施策について、管轄が複数に分かれてしまっている現状を改善すべく、中心となる庁を設立しよう、という発想です。


3 子ども庁…効果は?


 同サイトでは、以下のような効果を挙げています。

1.⼦どもに関する縦割り⾏政を⼀元化することで、抜け漏れがない、迅速な対応を実現できる
2.分断されていることで後⼿に回っている事柄について、妊娠期から新生児期、小児期を経て⼤⼈になるまで、切れ⽬なく⽀援する体制・施策を推進できる
3. 安⼼して⼦どもを⽣み育てられる環境の構築により、健康に活躍できる社会の実現へ


 確かに、子どもに関する施策の管轄が一元化されれば、このような効果はあるのかもしれません。


4 子どもを育てることを何と捉えるか


 

 しかしながら、冒頭紹介したように、諸事情により創設は延期されています。

 様々な難しさがあるかとは思いますが、自分が特に難しいと考えるのが、現状の各省庁は「何を」ミッションとしているかによって分けられているのに対し、こども庁は「誰を」を対象に設立されようとしている点です。
 

 例えば、文部科学省が管轄する側面は「教育」です。子どもに関しては、どのように「生きる力」を育むか、という部分が主になってきます。その一方で、大人に関しても、生涯教育に代表されるように、やはり「教育」に関しては文部科学省です。スポーツ庁や文化庁が文部科学省の管轄下にあることからもわかります。また、文部「科学」省であることも忘れてはいけません。

 厚生労働省は「福祉」の側面を担っています。ただ、こちらもご存じの通り、医療や高齢者福祉等、福祉概念が広い以上、管轄は多岐に渡ります。

 内閣府や法務省の関わりも、引用の通りです。基本的に、いずれも「誰を」について限定されていません。

 
 子どもを取り巻く環境を改善すべく行動に移した、という点はとても評価されるべきです。
 しかしながら、設立への調整が膨大なコスト(特に労力)を要することは、想像に難くありません。


 個人的には、新たな省庁設立、という発想より、現在ある省庁の中から、子どもに関する施策について中核となる省庁を位置づけ、子どもに関する施策の権限を集約していく方が、子ども庁設立より幾ばくか現実的な様にも思います。(素人考えかもしれません、ご容赦ください)

 ただ、そうなると、「中核はどこ?」という議論になるでしょう。


 あくまで子どもを主語として、あえて子どもに関して限定的に、他業務については考えから除外して見た場合、
 教育側面を中心に据えれば文部科学省、福祉側面を中心に据えれば厚生労働省となるように思われます。
 
 (このあたりが現実的ではないので、子ども庁という発想になったのかもしれませんが…)

 子どもを育てることは「教育」なのでしょうか?それとも「福祉」なのでしょうか?
 

 などと考える、秋の夜でした。


 このあたりについては、また追い追い別記事で整理できればと思います^^;


 最後までお読みいただきありがとうございました^^


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