未来への子育て論 「無駄を楽しむ力」
前々回から続く未来シリーズ。3回目の今回で終わりにしたい。
前回の話で、“デジタルネイチャー”の世界観や未来に対してどう立ち振る舞い、サバイブしていけば良いかが、なんとなく見えてきた気がする。AIやデジタルが成長する未来への漠然とした不安も薄まってきた。
未来は明るく、AIは友達だ。(おそらく。)
そしてふと、二人の娘のことが気になった。僕より未来を生きるのは彼女たちだ。彼女たちはどのように暮らし、どんな仕事をして、どんなことを楽しみ、どう未来をサバイブしていくのか?
“デジタルネイチャー”の世界観はわかった。ではそんな未来に向けてどんな教育、子育てをしていけばいいのか。気になる人も多いと思う。今回は父親のひとりとして、未来への子育て論を自分なりに堀下げてみたい。
言語化する能力
“デジタル”が“自然”と同様に、理解できない+コントロールできないレベルにまで成長していく。自然現象なのか、デジタル現象なのか境目がわからなくなる世界。
そんな世界ではさまざまな“スキル的”なことは、デジタル/AIが僕ら人間が理解する間も無く、勝手に処理、解決してくれるだろう。
やりたいことをイメージするれば、形としてすぐに目の前に現れてくるそんな世界。建築の世界でいったら、
「リビングは、窓を最小限に抑えて、広い洞窟の中に差す神秘的な光が入るような空間にして。さらに、閉塞感を感じさせないような素材の提案や家具のデザインして。家具は北欧風で。」
みたいなことを伝えたら、秒でCGが立ち上がる。そんな世界が来るのだろう。言葉から形が生み出される感じだろうか。
そんな未来においては、数年前から小学校でも教えるようになったプログラミングなんてものは、ただの脳トレの一種になるのかもしれない。それどころかスキルを身につける的な教育・習い事はすべて無駄なのかもしれない。
必要なことはすべてAIがやってくれる分けだから、イメージを言語化する能力(AIに伝える能力)も大切になってくるのだろう。
無駄を楽しむ力
では子供たちに何を教え、学んだ方が良いのだろうか?
それは、全力で無駄なことをする力、無駄を楽しむ力を身につけること。
これが僕なりの今現在の答えだ。
これまでの僕たちは一生懸命勉強し、スキルを身につけ、時間を掛けながら、現状の問題を解決するためのアウトプットを続けてきた。それこそが“働く”ということだったし、社会に対して価値を生む行為であり、その対価としてお金を得ていた。
しかし、未来においての社会的な価値は変化していく。
社会にとって必要不可欠なこと(問題を解決すること)の多くは、AIが処理をしてくれるだろう。しかも、僕たちが問題だと気づく前に。そしてどんどんアップデートも繰り返してくれる。
つまり人のやるべきことが徐々になくなり、圧倒的に暇になってくる。
そして、そんな時にこそ力を発揮するのが、「無駄を楽しむ力」なのではないだろうか?
現代のモチベーションのトレンドは
「社会をより良くしたいから○○をしています。」
「地球環境を~」
といったところだろうか。
しかし、未来は、
「僕はただこれに興味があるか○○をしています。」
「これ楽しくないですか?」
といった、そこになぜ?や、それがどう社会に役立つか、などの正義はどうでも良くなってくる。人間が考えつくレベルの解決策や社会正義はAIがとっくに処理してくれているだろう。
AIからは、
「○○さん、その件に付きましては既に解決済みなので、○○さんはゆっくり休んでいてください。遊んでいてください。」
みたいなことを言ってくるかもしれない。やさしい友達だ。
そんな世界で価値を生むもの、価値を高めるものはなんだろうか?そして、それらはどうやって生み出されるのだろうか?
それが全力で無駄を楽しんだ結果によって生まれる、無駄なものなんだと思う。
無駄なものの価値が高まるの?と戸惑うかもしれない。しかし、よく自分の周りを見渡してみるとあなたの周りには本当に必要なものだけだろうか?
ごく一部のミニマリストを除いたら、僕たちは無駄なものばかりに囲われて暮らしている。
食卓を彩るさまざまな器たち。機能的には料理が入ればなんだって同じだろう。料理に合わせ何枚を買い揃える必要なんてない。
棚に飾っている旅行の時につい買ってしまった謎のオブジェ。なんの機能すらない。腹の足しにもならない。
しかし、こういった無駄なものが、人の記憶に残り、コミュニケーションを生み、生活を豊かにしているのは間違いない。僕達の人生は無駄なものばかり囲まれている。
これまでのようにやるべきことをやる必要がない世界では、やるべきことをやるのではなく、やりたいことをやる力。周りの目なんか気にしないで、自分の世界に没頭して、“新しい無駄”を作ることが、結果として社会にとっても新しい価値になり、自分達の暮らしも豊かにするのではないだろうか。
人類総暇人社会においては、
無駄を楽しむこと。それが1番の暇つぶしになるだろう。
全力で無駄な仕事をし、常に変化し続けること。僕はこれを自分の娘たちには伝えていきたいと思う。
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