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歴史の転換点となったペンス宣言

米国と中国の関係が、仲良く発展しようという時代から覇権をかけて激突する「冷戦時代」に劇的に変化した事を宣言したのがペンス演説だったと言えるでしょう。これは、将来の歴史の教科書に載るであろう大事件でありました。

喧嘩にはふた通りあります。一つはガキ大将が「ゲームをよこさないと殴るぞ」と言って要求を押し通す場合です。トランプ大統領が日本や欧州などに仕掛けているのは、これに当たります。本当に殴ると痛いので、殴る気は無く、単に脅しているだけです。

今ひとつは、たとえば急速に力を増しつつある副社長派閥を叩き潰すために社長派閥が仕掛けるものです。これは、「殴ると痛いから殴らない」などといったものではなく、「肉を切らせて骨を断つ」覚悟で戦うものです。今回の米中対立は、これに当たります。その事を明確に宣言したのが、このペンス演説だったと言えるでしょう。

経済的な視点の論者からは「トランプ大統領は愚かだ。対中輸入に関税を課せば米国経済も痛むのに」といった発言も聞かれますが、これには二つの大きな問題があります。

第一の問題は、前者の喧嘩はトランプ大統領が主導しているものですが、後者の喧嘩は米国の超党派が一致して戦おうとしてるものだ、という事です。ここから出てくる結論は、中国が対米輸入を増やしても、トランプ大統領が喜ぶだけであって、米国の超党派の対中政策は大きくは変わらない、という事です。更に重要なことは、次の大統領が誰になろうとも米中の冷戦は続くだろう、ということです。もちろん、大統領の姿勢によって冷戦の厳しさは異なり得ますが。

第二の問題は、もはや米中関係は経済関係ではなく安全保障関係の視点が重要だと言う事なのでしょう。安全保障面から考えれば、「相手の骨を切ろうと思えば自分が肉を切られる事は我慢すべき」という事になるわけです。

米中が本気で戦えば、米国の圧勝でしょう。米国が中国製品を必要とするのは「安いから」であって、中国が米国製品を必要とするのは「それが無いと困るから」です。そんな両国が本気で戦えば、勝敗は見えています。そうなると、歴史の教科書には「米国の覇権を脅かし始めていた中国を撃退する契機となった画期的な演説」として載るかも知れませんね。

日本としては、米国の覇権が中国に移る事は安全保障上深刻な問題ですから、ここは淡々と米国に協力して自国の安全を守りましょう。なお、米国と中国がお互いに痛みを覚悟している一方で、日本は漁夫の利も期待出来ます。米国が中国から、中国が米国から輸入している品目の一部は日本からの輸入に振り替わるかも知れないからです。中国経済の落ち込みは日本経済の打撃でしょうが、過度な懸念は不要なように思います。



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