TsukasaHirano🇧🇷

「ブラジル市場のビジネス解像度を上げる」。南米ブラジル通算20年目。東京でIT企業に4…

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「ブラジル市場のビジネス解像度を上げる」。南米ブラジル通算20年目。東京でIT企業に4年間勤務後、首都ブラジリアのコンサル企業でのインターンを経て転職・移住。サンパウロで起業。海外進出駐在代行 / 農業 / モビリティ/ WAOJE twitter:@tsukasahirano

最近の記事

BRICSのBを知る:電子決済システムPixとは

Pixはブラジルで利用可能な新しい電子決済システムで、ブラジル中央銀行により2020年に導入されました。 Pixは、銀行口座間でリアルタイムで資金を送受信できるシステムです。これだけ聞くと銀行振込の仕組みと変わらないように聞こえますが、日常の様々な場面で使える、非常に利便性の高い決済手段となっています。 日本でも、複数のメディアによりその特徴が紹介されています。 この記事では、Pixを実際に日常生活や業務で使っている身として、なるべく分かりやすく、具体例を交えながらその

    • ブラジルのCOVID-19報道に接するためのモノサシ(5/14)

      ブラジルはCOVID-19の死亡者数が5月11日に11,500人を超え、深刻さが増している。現地報道では、医療現場の状況や、感染者や亡くなった人を抱える家族のインタビューなど、痛ましい様子が次から次へと伝えられている。 その一方で、日本でのブラジル関連の報道を見た人からは「大統領が経済活動の維持に固執していることで、感染者・死者の増加が止まらず大変な様子のようだ」という一言で総括されることがある。 当地で暮らす者の目線では、これは半部くらい合っているようでもう半分にはどこ

      • 自らの弱点を理解しているブラジル(5/11)

        先日、ブラジルのCOVID-19による死亡者数が1万人を超えたことが日本語メディアでも大きく取り上げられた。「1万」という数字は書けば簡単だが、その1人1人に悲しみに包まれている家族がいることを想像すると、心が痛む。 ただ、当地で生活する者の感覚をもって誤解を恐れずに言えば、ブラジルに新型コロナウイルスが上陸した時点で、大変な事態になることは十分に想像できていた。 ブラジル社会がこのような感染症に対して脆弱であることは、普段の生活の中で感じている問題点を指摘していくだけで

        • Withコロナのブラジル・サンパウロから(5/10)

          ブラジルのCOVID-19感染者数は、5月10日時点で16万2千人超。また、死亡者は1万1千人を超えた。 例によって、EUの2倍の国土を誇るブラジル一国として見ようとすると捉えどころがなくなるため、サンパウロ州のデータを見てみる。 サンパウロ州は、感染確認数が4万5千人。州の人口が4,500万人のため、千人に1人に感染が確認された計算になる。死亡者数は3,709人で、ブラジル全体の死亡者数の3割強がサンパウロ州で占められている。 なお、日本人も多く住むサンパウロ市の感染

        BRICSのBを知る:電子決済システムPixとは

          Withコロナのブラジル・サンパウロから(5/9)

          ブラジルのCOVID-19感染者数は15万5千人、死亡者はとうとう1万人を超えてしまった。 いずれも州別では、サンパウロ州が感染者数4万4千人、死亡者3,600人と最も多くなっている。また人口10万人あたりで見ると、いずれも赤道直下のアマパー州とアマゾナス州がそれぞれ感染者数が294人・287人で、死亡者数は医療崩壊を起しているマナウス市を抱えたアマゾナス州が10万人あたり23人と、それに続くセアラー州のほぼ倍の割合となっており、深刻さが際立っている。 赤道に近い州での感

          Withコロナのブラジル・サンパウロから(5/9)

          Withコロナのブラジル・サンパウロから(5/8)

          ブラジル保健省の発表では、COVID-19による死者数は5月8日時点で累計9,897人となった。各州から連邦政府への報告にはタイムラグがあり、州毎の発表数字を集計した速報では、すでに1万人を超えたことが報じられている。 死者数発表の見方COVID-19による死者数が毎日発表されているのを見ていると、ついつい昨日から今日にかけてそれだけの数の方が亡くなった様子を想像してしまう。しかしそれは正確ではない。 この数字はあくまで、死因がCOVID-19であったことが過去24時間以

          Withコロナのブラジル・サンパウロから(5/8)

          Withコロナのブラジル・サンパウロから(5/7)

          ブラジル国内のCOVID-19の感染拡大は勢いを衰えることなく、新たに9,900人の感染が確認され、累計の感染者数は135,000人に。また死者は610人増の9,146人となった。その一方で、これまでに55,350人が治癒している。 格差社会を襲う新型コロナウイルスブラジルは社会格差の激しい国で、例えば人工呼吸器を備えた集中治療病床の備わり方でも地域格差が見られる。 感染拡大が特に深刻なアマゾン川流域のアマゾナス州では、人口10万人あたり7床なのに対し、首都ブラジリアのあ

          Withコロナのブラジル・サンパウロから(5/7)

          Withコロナのブラジル・サンパウロから(5/6)

          欧米での感染拡大がピークを打ったことから、次は新興国が危ないと言われるようになった。 実際にブラジルでは感染が大きく拡大。5月6日には累計死者が8,500人を超え、ベルギーを抜いて世界で6番目に多い国となっている。感染者数は12万5千人に達した。 また、ボルソナーロ大統領の「配慮がない」とされる発言の数々も国外で大きく取り上げられ、それがためにブラジルの実際の状況がどうなっているのかの問合せも多く受けるようになっている。 そこで、ここでは日々刻々と状況が変わる中で、ブラ

          Withコロナのブラジル・サンパウロから(5/6)

          人生の回り道をすることの価値は、どうすれば見い出されるのか?

          ブラジル国内の企業や団体でインターンをする日本人の若者のお手伝いをしています。 1年間、ブラジルの企業や団体に受け入れてもらい、ブラジル社会の中で生きてもらうというプログラムです。主役はもちろんインターン生。そして制度の趣旨に理解いただき引き受けていただける現地企業や団体の協力で成り立っています。 私自身、このプログラムを通じてブラジルにやってきたOBです。今は黒子として、ブラジル側で制度の運営をボランティアで手伝っています。留学、あるいは駐在員として来るよりも、現地社会

          人生の回り道をすることの価値は、どうすれば見い出されるのか?

          外国人が働きたい国ランキングで日本がワースト2位、をどう見るか

          英国の金融大手HSBCが毎年行なっている海外駐在員の生活調査レポートが、SNS上で話題です。 これは全ての国や地域を対象としたわけではなく、あくまで一定の回答サンプル数に達した33の国・地域をランキングにしたものですが、ここで日本が総合順位で32位とブービー賞となったことが話題となっています。 ちなみにブービー賞ということは下位にもう1カ国あるわけですが、日本と仲良く最下位でワンツーフィニッシュしたのは、なんと私の住むブラジルでした。 このように個人的に非常に興味をそそ

          外国人が働きたい国ランキングで日本がワースト2位、をどう見るか

          国際政治の道具と化しているアマゾン熱帯雨林の火災問題(5・終)

          アマゾン森林火災問題が世界中の注目を集めてから、1週間が過ぎました。 国外からのプレッシャーの高まりがブラジル国内でも大きな論争を呼び、その議論は未だに収まる気配がありません。 その間に、ブラジル政府は森林火災が収束に向かっていることをアピール。軍の消火活動への参加に加え、火災が起きていた地域に降雨があったためとも説明されますが、ブラジル国立宇宙研究所(INPE)が発表するアマゾン地域の火災検知データの信憑性について大統領が盛大に批判を行ったことから((3)参照)、このデ

          国際政治の道具と化しているアマゾン熱帯雨林の火災問題(5・終)

          国際政治の道具と化しているアマゾン熱帯雨林の火災問題(4)

          前回(3)で述べたように、ブラジル国内でもアマゾン熱帯雨林の火災が着目されるようになったのは、サンパウロの空が昼間なのに真っ暗になった8月19日からこちらの話で、実はそれからまだ1週間も経っていません。 サンパウロであれほど不気味な現象が起きても、この時はまだアマゾン熱帯雨林での火災に世界中の目は向けられていませんでした。そして翌20日には、その現象の原因が森林火災にあったことを、様々な分析機関に取材を通じてメディアが明らかにします。 そして8月21日朝、大統領が公邸の前

          国際政治の道具と化しているアマゾン熱帯雨林の火災問題(4)

          国際政治の道具と化しているアマゾン熱帯雨林の火災問題(3)

          前回(2)で述べたように、アマゾン熱帯雨林の保全を目的としたアマゾナス基金の運用方法に関するブラジルの現ボルソナーロ政権の意向を受けて、資金を拠出するノルウェー・ドイツの両国とブラジルの間では、今年に入ってから溝が深まってきていたところでした。 そして8月に入り、一気にこの問題は深刻化し、アマゾン熱帯雨林は最終的には世界中を巻き込んだ議論の渦中に置かれるようになります。 森林伐採が前年比で4倍に増加2019年8月1日、科学技術通信省配下のブラジル国立宇宙研究所(INPE)

          国際政治の道具と化しているアマゾン熱帯雨林の火災問題(3)

          国際政治の道具と化しているアマゾン熱帯雨林の火災問題(2)

          森林火災そのものはブラジルでは珍しくないにせよ、国内で暮らす人間として、今回やや唐突に国際社会の注目を集めるようになった感のあるアマゾン熱帯雨林の問題。 その発端となった出来事は、実は1年以上前にありました。 森林破壊の増加に目を付けた先進国 それは、前回(1)にてご紹介したこのグラフの右側に見えている変化です。2014年までの減少傾向が一転、2015年から増加傾向を見せ始めています。 遡ること2007年。インドネシアのバリで開催されていた地球気候変動枠組条約締結国会議

          国際政治の道具と化しているアマゾン熱帯雨林の火災問題(2)

          国際政治の道具と化しているアマゾン熱帯雨林の火災問題(1)

          この数日間でSNSを中心に爆発的に画像やコメントが拡散し、日本のニュースにも取り上げられるようになった、アマゾン熱帯雨林の森林火災。アマゾンで大規模な山火事が起きているというニュースが流れ、早く火を消さなきゃ大変!という反応をされた方が多いと思います。 しかし、アマゾンの熱帯雨林保護をめぐっては、実は1年前ほどから欧州諸国とブラジルの間にくすぶりがありました。 これが一気に爆発したのがこの数日間の話だったというわけなのですが、残念ながらその辺りの経緯は、日本社会にはきちん

          国際政治の道具と化しているアマゾン熱帯雨林の火災問題(1)

          FT「中南米経済の停滞」、ブラジル現地から

          Financial Timesのこちらの記事の分析では、中南米経済の抱える問題点を指摘しています。正しい方向の分析と思いましたが、これに現地の肌感覚で補足を加えさせていただきます。 まず、経済の停滞ぶりついてこう指摘されています: 新興国が世界の経済成長に寄与する割合は1980年の37%から2019年には60%まで増加したが、中南米の貢献度は低下している。30年前には新興国の経済成長の30%を占めていたが、現在はわずか12%だ。00年から16年の中南米の平均成長率は2.8

          FT「中南米経済の停滞」、ブラジル現地から