見出し画像

トミーと上野のれんこん料理にて

2019年9月某日。この日私は東京の上野にて、トミーという人物と待ち合わせをしていた。

上野に初めて訪れたのは、小学校6年生の頃である。
修学旅行で上野動物園を見学するために訪れたのを皮切りに、その後も地元から複数人で集まっては、浅草まで街中を練り歩く機会がほとんどであった。

退っ引きならない事情がない限り、単独で訪れることはあまりない。
後に私は地元から単身で上京したものの、渋谷や新宿に池袋へと出向くことが大半であった。

こうして数年ぶりに、降り立つのは同じ都内とはいえど新鮮なものと感じていた。駅周辺の人の流れを見ても、見慣れた池袋などとは何か細かい部分が若干異なる気がしている。


元々トミーは、悪友の中学からの友人である。

その前に悪友と私は住んでいる学区が異なっており、中学の時点で交流はまったくない。やがてヤツとは同じ高校で仲良くなったものの、一方でトミーは私たちとは別の高校に通っていた。

そのため、中学ではおろか高校でもあまり接点はなかった。にも関わらず、卒業してお互い成人を迎えた後によくつるむ仲となったのである。

そして2018年の旅行以来、およそ1年ぶりに再会を果たしたトミーは、都内にある大学で開催されていた文化祭の帰りであった。

別段そこの大学に通っていたことがあったのではなく、見知った同級生や先輩後輩などがいるワケでもない。

経緯を聞いてみたところ、たまたま余暇のある時にネットで検索していたら、自分にとって興味を引くものがあったそうだ。

それを証明するかのように、片手にはいつも見慣れないバッグを持っていた。中には相当なグッズの量が入っていたことから、かなり楽しんでいたらしい。

ちなみにトミーは専門学校を卒業し一企業に就職してから今現在も、地元でも東京でもなく中京方面にそのまま住み続けている。

無縁の地からおよそ数百キロ離れた大学ので催し物に心惹かれ、そこでの知り合いもおらず単独で訪れるバイタリティは並大抵のものではない。


なお、トミーも悪友と同じく部類の酒好きである。ビールはもちろん日本酒やウィスキーなどもいける口であり、ストライクゾーンはかなり広い。

20代の時に複数人で浅草を訪れた際、なぜか単独で「電気ブラン」が有名な神谷バーに満員御礼のなか立ち寄っては知らないおじさんと和気藹々となっていたこともあった。

ただ、いつもならば再会の地にて話題の中心にいた悪友の姿は今回はいない。思えばこうして二人きりで会うことは、今までの人生で初めての出来事だった。

もしもヤツの存在がいなかったら実現するどころか、お互い何も知らないまま日常を送り続けていたかもしれない。

だからこそ、友人としての縁を繋ぎ止めてくれた悪友には感謝したいところだが、例によって今もなお音信不通は続いたままだ。

そして今年の年末年始、私とトミーはそれぞれの近況を直に伝え合うべく、およそ四年ぶりに上野の街にて会う予定でいる。

もし待ち合わせ場所を選ぶならもう一度、上野駅より南方にあるれんこん料理のお店にて、相まみえたいものである。

最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!