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待ち合わせで真打ちと一騎討ち?

思ったよりも早く待ち合わせ場所についてしまった。

今からおよそ5年ほど前、私は悪友をはじめとした友人たちと一緒に、名古屋に1泊2日の旅行に出ていた。

その友人たちとは高校を卒業してからも、居酒屋やカラオケに行ったりとよく連んでいた間柄である。
しかし時が経つにつれてそれぞれ地元から離れ、仕事が忙しくなってからはなかなか会うことはおろか、お互いに連絡も取れず仕舞いであった。

そして月日が過ぎ去っていく中、ひょんな事からいきなり名古屋へと旅行に行く運びとなった。ちなみに私にとって友人同士での旅行は、これが人生初の出来事であった。

その当日、いったいどうしたものかと立ち尽くしている。遅刻しないようにと余裕を持って行動したつもりが、まさかの集合する駅に予定時刻よりもかなり早く到着する事態となってしまった。もちろん私以外の人間はまだ誰もそこに来ていない。

駅に併設されている売店にたむろしていたり、改札口付近で長い間ずっと待っているのも少々退屈である。
折角だからここはひとつ駅周辺を散策して時間を潰してみるかと思った私は、一時的に待ち合わせ場所を後にした。

ここは当時、悪友が住んでいた場所の最寄駅である。地元と同じ県内であるとはいえ、特に此れといった目的がなければ訪れる機会はほとんどないものだ。
だからこそ自分にとって見知らぬ土地の、見知らぬ街の駅には一体何があるのかと、個人的には気になるところではあった。

数年前といえど、この時には既にGoogle Mapの一機能であるストリートビューがある程度普及してきている。
PCあるいはスマホやタブレットさえあれば、その街の景色がどんな風に写し出されているのかを一目でわかる。

しかしながら、やはりこの目で確かめておきたい欲は溢れ出ている。昔からそうであったが、自ら気になったものは一歩踏み出さずにはいられない性分なのだと思う。

一通りブラついたところでそろそろ戻ろうとした途端、スマホが急に鳴り出した。画面には悪友の名前が表示されている。もしやようやく到着したのかと思って電話に出てみると、

「今どこにいるんだ?もうみんな着いてるぞ」

「え”…?」

声を荒げている悪友の第一声を聞いた瞬間、私は硬直状態に陥ってしまった。自分以外の全員は、待ち合わせ場所に集まっているらしい。
私が駅のホームを降りてから現在に至るまでの構図が、まるでギャグ漫画には絶対に欠かせない起承転結の絵面として見事にマッチしている。

慌てて再度改札口付近に駆け足で戻ると、その近くにはすでに悪友を含む友人たちが集まっている。まさかの展開だった。一足先に早くついたはずだったのに、余裕をかましすぎてビリケツになってしまうとは…。

それでもその光景に怯むことなく、私は友人たちの前で堂々と手を振りながら、

「やーやー皆の衆、おまたせしましたぁ~」

「いや何処に行ってたんだよ、おまえ(笑)」

『真打ち登場!』と言わんばかりにボケて(?)現れる私に、悪友はすぐさまハリセンを持ってはたくようにしてツッコミを入れてきた。

そこからは、およそ数年ぶりに私の悪友の間で、誰も待ち侘びていない漫才みたいな会話が繰り広げられている。
そして奴の赤い車に乗り込み、その場所から名古屋へと向かって走って行くのだった。 

この時の私は最初の目的地である東山動植物園で、偶然にもおじきをしたペンギンと遭遇することを知る由もなかったのである。


「…ん?呼んだ?」


最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!