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アテのない夢を見続けたせいです。

午前3時。こんな夜更けに目を覚ますのは久々であった。


この日を除き、最後に真夜中に起きたのはいつだろう。日の出の時間帯に差し掛かっていないにも関わらず、はたから見てどうでもいいことを思いついた。

現状、隣に住んでいる家から響く騒音で起こされたのでなければ、夏の暑さに寝苦しくなって起きたわけでもない。ましてや、悪い夢に酷くうなされた経験もあまりなく、この場で最もらしい解答には結び付けられない。

それよりも、突如として閃いたと同時に、私にとっては「どうでもいい」と片付けられるほどの小さな問題ではないことに気づく。以前にも似たような境遇をたどった際、それが人生の中で悪い出来事であったと、不意に思い出したからである。


それは過去に私が勤めていた職場で、かつてないストレスを抱えていた頃のこと。ある日の朝に目覚めた時、自分の身体の中にある異物が入り込んでいるような感覚を覚えたのである。

その異物らしきものは、自分の胃の中に残ったまま、時折これまでともにしたのことのない痛みが生じていた。これが胃痛だと知って以降、来る日も来る日も治まることはなく、私はひとり悩まされるようになっていた。

市販の胃薬を飲み続けるも、いつまで経っても完治の目処がたたないことに不安を感じた私は、とある病院で診てもらうことにした。向かった先で医師からは、ある一種の精神的な病を患っている、と告げられたのである。

以来、そこへと定期的に通い始めると同時に、処方箋なる物を貰い飲み続けていた。しかし副作用のせいなのか、深夜の時間帯になって、一時間おきに自然と目を覚ますようになってしまっていたのだった。


おかげで翌日…もとい朝になれば、仕事に出かけなければならないにも関わらず、なんとか眠ろうとしても眠ることのできない日々が続いていた。仕舞いには一睡することもできず、調子も元に戻らないまま、やむを得ず仕事を休むこともあった。

体調に異変を感じた時よりも症状は酷くなっていき、一時期は自分自身の死期を悟るようになってしまっていたのである。やがて、体力的にも精神的にも限界と感じた私は、次の転職先を決めず今まで勤めていた会社に退職届を提出した。

同時に、それまで病院から貰っていた薬を飲むのを止めた。以降は不思議なことに、体調は良くなっていったのであった。自身の、ストレスの根源である会社を離れる決意をしたことで、気持ちがラクになったのか。あるいは、薬を服用しなくなったことで、身体がラクになったのか。

いずれにしろ、心身ともに回復の兆しが現れたことに間違いはない。一連の流れが、自分自身を逃避行させるためのアラームであったと。そう笑い飛ばすことができたのであれば、あの時に自己を破滅させることなく、忌まわしき場所から逃げて正解だったと思う。


こうして過去となって久しいと思えるからこそ、当時の出来事を振り返れば、これまで歩んできた人生の中では、史上最大のピンチに直面していたのかもしれない。

だがその最悪だった出来事も、間もなく塗り替えられようとしている。今現在も溢れ者として生活している以上、いずれどこかで維持する何かが断たれる日が訪れるという不安を感じながらも、うまくやりくりしていかなくてはならない。

しかしながら、今回のように深夜3時で突然目が醒めるということは、いよいよ自分の内に溜まったストレスが溢れようとしている前触れ…だろうか。


自ら考え出して選んだ道とはいえ、未だに長いと感じるトンネルの出口が何一つ見えてこない中、不安のみならず焦りも日に日に募り始めてきてもおかしくない頃合いである。

一刻も早く抜け出さなければならない事柄に置かれている状況なのに、これが本当にかつて不安と焦りで精神的に病んでしまった自分なのかと。そう勘くぐってしまうぐらい、妙な落ち着きさを持っていた。

「このままくたばってしまったらどうしよう」と考えるより「希望は…まだどこかにある」と諦めないでいながら、雲を摑むようなアテのない夢を今も見続けている証拠なのだろうか。





最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!