政治講座ⅴ1508「盛者必衰の支那、秦の始皇帝と同じ短命の運命」
この有様はどうしたわけ?
大したスケールの不動産開発は秦の始皇帝時代の万里の長城や兵馬俑のようである。無駄な費用をかけて、結局は中国統一から15年で秦は滅亡するのであるが、今の中国における台湾侵略による統一は今の中国共産党の寿命を終わらせることになる要素がある。今の中国には経済力が喪失しており、戦う力や兵站力不足が懸念されるのである。歴史を俯瞰すると「滅び」の「理」が存在することが見えてくる。30年にわたってうまく機能してきた中国モデルが、存亡の危機に立たされている理由は「微笑外交」から「戦狼外交」への転換に起因する。要は自ら敵を作って窮地に落ちっているのが現在の中国共産党の姿であろう。素人目から見ても愚かさを感じざるを得ない。
今回はそのような中国経済を暗示させる報道記事を紹介する。
皇紀2683年11月23日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
はじめに
軍事的における3大要素というのがあり、戦略(Strategy)、戦術(Tactics)そして兵站(Logistics)となる。軍事費には莫大な費用がかかるのである。そして、万里の長城の費用対効果、兵馬俑などの始皇帝陵の建設費用は莫大なものになったと推測される。秦の王に「政」が13歳で即位したときから「陵」の建設が始まっている(秦始皇帝陵は、紀元前246年から紀元前208年にかけて造られたと推定されている)。紀元前210年に旅の途中で49歳(数え年だと50歳)で急死。膨大な期間に膨大な費用をかけて作ったのが始皇帝陵であることが分る。翻って、今の中国共産党の支配する中華人民共和国と対比して見るとスケールの大きさと費用対効果を考えない無駄な不動産投資は前述した万里の長城や始皇帝陵、兵馬俑の有様と共通するところがある。いにしえから言われる「盛者必衰」の4文字に当てはまるのである。
マレーシア発 中国No.1不動産会社が建設した「15兆円のゴーストタウン」全貌写真
FRIDAYデジタル によるストーリー •
「南国の理想郷」
かつてそう呼ばれた60棟におよぶタワーマンション群が、マレーシア南部ジョホール州の沖合にある。心地よい海風の吹く橋の先にある、人工島に作られた『フォレストシティー』だ。だが、その「夢の島」では人影をほとんど見ない。
「『フォレストシティー』は、中国の習近平国家主席が’13年9月にシルクロードを現代に再現すると提唱した『一帯一路』構想の目玉として、’14年前半から進められている巨大プロジェクトです。4つの人工島に1棟30階前後のタワマン群を建て、20万超の部屋に約70万人が住むという壮大な計画。中国のナンバー1不動産会社『碧桂園(へきけいえん)』が手掛け、総投資額は1000億ドル(約15兆円)にのぼるといわれます」(全国紙現地駐在記者)
中国の威信をかけたプロジェクトにもかかわらず、現在の入居者は予定の70分の1の1万人にも満たないという。事業は遅々として進まず、いまだ未完成。敷地は雑草が伸び放題で、完全にゴーストタウン化しているのだ。いったい何があったのだろうか。中国情勢に詳しいジャーナリストの高口康太氏が解説する。
「『一帯一路』の目的の一つが、国内で過剰となった不動産投資を外国で行うことです。しかし国外へ進出しても、交通の便が良い好条件の土地はすでに開発されている。『フォレストシティー』のように、車でしか行けないような不便な沖合などに作らざるをえません。自国では都合良く変えられる環境アセスメントも、当該国の基準に合わせなければならず思うように事業が進まない。『新鮮な空気と海の都市』を謳(うた)っていますが、人気が出ないのも当然でしょう」
『フォレストシティー』の平均販売価格は、約16万5000ドル(約2500万円)。1世帯あたりの年間所得が1万6500ドルほど(約250万円)のマレーシアの人々には、簡単には手が出ない物件だろう。’18年に同国のマハティール首相(当時)が「中国人のために作られた街だ」と批判している。高口氏が続ける。
「『一帯一路』は中国優先の構想であることが露呈(ろてい)し始め、離脱する動きが各国に広まっています。中国も長引く経済の停滞で、国外への資金流出を恐れ締めつけを強めつつある。構想自体が破綻する危機にあるんです」
国内の不動産不況だけでなく、海外の事業も頓挫(とんざ)しつつある中国。世界第2位の経済大国が窮地に立たされている。
『FRIDAY』2023年11月24日号より
中国が繰り返す「インフラ整備頼みの景気刺激」の問題点
Milton Ezrati によるストーリー •
中国の指導部は、さらなる景気刺激策が必要だと考えている。そのための措置として打ち出したのは予想通り、これまでにも頼ってきたインフラ整備だ。中国政府は、最近開催された中央金融工作会議で、主に洪水被害を受けた地域を支援するプロジェクトの資金を賄うため、1兆元(約21兆円)の新規国債発行を承認したと発表した。このようなインフラ整備への支出は過去に中国経済の成長を促したことがあるが、現状では望むような成果につながるかは極めて不透明だ。
今回の景気刺激策の効果が疑問視される大きな理由のひとつは、直近のインフラ整備で期待された経済効果が全く得られなかったことだ。こうした失敗は、地方政府の危うい財政にはっきりと表れている。地方政府が重荷を背負い込んでいるのは、インフラ計画の資金確保を中央政府が地方政府に押し付けるのが常だからだ。
中央政府は、地方政府のインフラ投資会社である融資平台(LGFV)を通して借り入れを行うよう促している。最近のLGFVからの借り入れは期待通りの経済効果につながらなかったため、地方自治体は現在、巨額の債務超過に陥っている。中には、住民への基本的なサービスの提供も難しいほど財政がひっ迫しているところもある。一部の地方政府は、過去のインフラ整備に伴う債務の返済でLGFVからの新たな借り入れにすでに頼っている。
中国政府は地方の債務問題を受け、久しぶりにインフラ整備の費用を国の借金で賄うことを決定した。この方針は地方政府の財政負担を軽減し、少なくとも負担を増大させることはないかもしれない。だが、これから行うインフラ整備が、地方政府に負債を残すことになったこれまでのインフラ整備よりもいくらかでも大きな経済効果を生み出せるのかという疑問は残る。過去のインフラ整備は地方政府に巨額の借金を残した。仮に、これから行うインフラ整備が経済的効果を生むとしても、中国経済を動かすのに十分かどうかは定かではない。なんといっても、新たなインフラ整備の予算は18兆ドル(約2670兆円)規模の中国経済の1%にも満たない。
この景気刺激策では、巨大経済を動かす困難さに加え、中国の深刻な財政難がもたらす巨大な経済的足かせも克服しなければならない。前述した通り、地方政府は苦境にある。
中国人民銀行(PBOC)の元顧問で、現在は清華大学の教授である李稲葵によると、地方政府の累積債務は64兆元(約1320兆円)に膨れ上がり、その大半は過去のインフラ整備のための借り入れによるものだという。これは中国の国内総生産(GDP)の半分を上回る規模だ。こうした債務に加えて、中国の経済は中国恒大集団(エバーグランデ)や碧桂園(カントリーガーデン)などの企業による住宅不動産開発の大失敗にも対処しなければならない。
無理もないことだが、人々は破綻した不動産開発企業から購入した住宅のローン支払いを拒否しており、このため中国の金融機関はさらに大きな負担を強いられている。こうした状況では中国経済が苦戦するのは避けられないが、不動産開発企業の破綻に伴う不動産価値の下落は家計資産を減少させ、これにより消費者マインドが冷え込み、経済にとって一層の重荷となっている。
こうした圧力を懸念して、中国政府は中央金融工作会議で「中央政府と地方政府の債務構造の最適化」を目指すと発表。おそらく、今回のインフラ整備の支出を国債で賄うという決定は、その「最適化」の一環なのだろう。だがこの点を除けば、政府はこの言葉が何を意味するのかほとんど説明していない。具体性に欠けるため、他にどのような手段を講じるつもりなのか決まっていないという印象を残している。
現段階で最新のインフラ整備構想が経済効果を生むかどうかを判断するのは早いだろうが、苦境にある中国経済のニーズを満たすにはあまりに小さい取り組みであることは確かだ。そうなる可能性は低いが、仮にこのインフラ整備の支出が大きな経済効果を生み出すとしても、中国経済は2024年まで低迷が続きそうだ。(forbes.com 原文)
中国の不動産問題、住宅にとどまらず オフィス空室率が上昇
中国の商業用不動産は、住宅用と同じく危険な方向に進んでいるようだ。
不動産開発大手の中国恒大集団(エバーグランデ)と碧桂園(カントリーガーデン)の経営危機が大きく取り上げられている中、商業スペース、特にオフィスビルの不振が明るみに出ている。空室率は上昇し、賃料は下落。この問題はさらに悪化する可能性が高く、経済を成長路線に戻そうとする中国政府の取り組みを妨げる新たな要素となっている。
中国政府は、住宅開発のようにオフィスビルの建設を大々的に促進していない。商業用不動産の問題は、住宅用に見られるような建設のし過ぎから生じているわけではない。だが、それでも問題はある。過剰な建設と債務の代わりに、商業用不動産は新型コロナウイルス流行によるロックダウン(都市封鎖)と隔離措置の影響に悩まされ続けている。
中国のホワイトカラー労働者は、欧米のオフィスワーカーと同じく在宅勤務を受け入れているようだ。西側諸国の経済が再開した後も、中国では政府のゼロコロナ政策でロックダウンや隔離が続いたため、在宅勤務を受け入れる傾向は西側諸国よりも中国の方が強いかもしれない。こうした要因により、そして中国経済の全体的な減速に対応するための人員削減がオフィス需要を著しく減少させた。
中国の国家統計局はオフィスの空室率についてほとんどデータを公表していないが、同局以外でいくつか情報源がある。ひとつは、英不動産サービスのサヴィルズの定期レポートだ。同社は、中国の主要都市(北京、上海、広州、深セン)におけるグレードAのオフィスの評価を提供している。同社の直近のデータによると、4〜6月期にはオフィスの空室率が軒並み上昇。深センの空室率は4.1ポイント上昇し27%となった。広州では5.9ポイント増の20.8%で、北京と上海はこの中間だった。また、米不動産サービスCBREが発表した18都市をカバーするデータでは、平均空室率は24%となっている。
空室率の上昇に伴い、賃料は下落している。サヴィルズによると、北京のグレードAのオフィスの4〜6月期の賃料は0.09平方mあたり45ドル(約6700円)相当で、前年同期を7.4%下回っている。上海、広州、深センの賃料も同様に下落した。
賃料が下落しているため、商業用不動産開発会社の財務の健全性、そしてそうした会社が恒大集団や碧桂園、その他の不動産開発会社に続いて経営危機に向かうかどうかを懸念するのは全く当然だ。そうした事態、あるいはそれに近い事態が発生すれば、中国の金融システムが直面しているすでに深刻な問題や、状況にうまく対応しようとする政府の取り組みが一層困難なものになることは間違いない。今のところ、商業用不動産開発会社の経営難は報じられていないが、現在のように賃料の下落が続けば、何らかの問題が必ず浮上するだろう。
オフィス賃貸に関するこのような悪いニュースが出る前から、中国は手に負えそうもない数々の経済問題に直面していた。中国にとって重要な輸出相手も厳しい状況だ。欧州は景気後退、あるいはそれに近い状態にあり、米経済は減速し、おそらく景気後退に近づいている。
住宅用不動産部門と同部門の大手企業の大規模な崩壊は、中国の金融を弱体化させ続けている。中国はすでに、特に地方自治体や省政府で大幅な債務超過に直面していたことも決して小さな問題ではない。
不動産開発企業が抱える問題に加え、コロナのロックダウンと隔離の影響が住宅需要に冷や水をかけ、その結果、住宅価値の下落が家計の純資産に深刻な打撃を与えた。これが、中国経済の回復を後押ししたかもしれない個人消費を抑制。こうした要因と、政府が突然古いマルクス主義のような手法を用いたことで、中国の民間企業による投資が抑制され、その結果、企業の支出は実際に減少に転じた。
そして今、オフィスの空室率の上昇は、すでに不安定な中国の金融システムをさらに弱体化させ、すでに問題が山積しているところにさらに経済問題を加えることは間違いない。少なくともこれらの問題は、政府が懸命に活性化させようとしている民間投資支出の流れを抑制することになるだろう。商業用不動産の問題は最後の決定的な一撃とはならないかもしれないが、最近の動向は全く良いものではない。
(forbes.com 原文)
存亡の危機に立つ「中国モデル」 対応誤れば共産党の正統性危うく
中国経済の行く末について思案するエコノミストは、リーマン・ブラザーズのような問題を想起しがちだ。
「融資平台」と呼ばれる中国の地方政府の投資会社は、中国の国有銀行などの債権者に対して9兆ドル(約1330兆円)を超える債務を負っている。それを分析する際には、2008年のリーマン型の危機が参照されることが非常に多いのだ。中国版「リーマン・ショック」が起きれば中国経済の破滅は避けられないと多くの人は信じていて、そうしたシナリオにハラハラさせられるからなのだろう。
もちろん、これは荒唐無稽な考えというわけでもない。負債を燃料にして成長を駆動してきた経済が、いわゆる「ミンスキー・モーメント」(資産価格の上昇や債務拡大が限界に達し、資産の投げ売りが始める時点)を回避できたケースはおそらくなかった。日本や東南アジア、あるいはウォール街が受けたような罰を、中国が逃れられる公算は大きくはないだろう。
融資平台を通じたいびつな信用ブームが、すでに不透明で不均衡な中国経済にとって脅威なのも確かだ。中国で膨れあがった債務の規模は、日本、ドイツ、フィンランドの国内総生産(GDP)の合計よりも大きい。
中国の問題については、2001年に巨額の不正会計で経営破綻したエンロンになぞらえたほうが適切だと考える人もいるだろう。一種の特別目的会社である融資平台は、意図的か偶然か、共産党政権が膨大な負債や有害な資産の実態を見えにくくするのに役立ってきたからだ。実際、世界の格付け機関は中国株式会社について、自分たちが何がわかっていないのかすらわかっていない。
中国の不動産開発大手、中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)が2年前にデフォルト(債務不履行)を起こして以来、中国経済の亀裂を覆い隠すのは難しくなってきてはいる。中国同業の碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)も、デフォルトをする、しないが世界的なニュースになり、亀裂をさらに露わにした。最近は中国の資産運用会社である中植企業集団も資金繰りが悪化し、中国のシャドーバンキング(影の銀行)部門ははたして経済成長の減速を乗り切れるのか懸念がさらに高まっている。
とはいえ過去25年、中国ほど、批判者らによる経済崩壊の「予言」をことごとく裏切ってみせてきた大国はほかにない。リーマンのような危機やエンロン型の問題、あるいはミンスキー・モーメントの到来などがあれこれ取りざたされても、中国が崖から転がり落ちることはついぞなかった。
中国の習近平国家主席のそうした幸運は、そろそろ尽きようとしているのだろうか。そう言える面は確かにあるだろう。数々の問題から、中国が経済成長率を再び5%超に乗せる見込みはかなり薄くなっているからだ。
中国のような規模や発展レベルの経済にとって、3%という2022年の経済成長率はリセッション(景気後退)の領域に入るものだ。しかも、これはおおむね、習近平が厳格な新型コロナウイルス感染症対策を通じて自ら招いた後退だった。
中国が経済を再開しても、広く予想されていたようには成長が戻らなかった。原因については、次のような説明がされている。新型コロナ禍で傷ついた消費者は、コロナ禍後も支出を手控え貯蓄をした。経済再開による追い風よりも、不動産部門の急激な悪化による逆風のほうが強かった。ロシアのウクライナ侵略によるインフレは輸出部門にとって大きな打撃になった。ジョー・バイデン米政権が重要技術に対する中国のアクセスを制限した結果、企業にダメージが広がった。
共通するのは、30年にわたってうまく機能してきた中国モデルが、存亡の危機に立たされているという認識だ。中国は世界を揺さぶるような危機には陥らないとしても、2030年あるいは2040年までに経済規模で米国を追い越すのに必要な急成長は、もう終わったように見える。
これが習近平率いる中国共産党にとって危機的な局面なのは間違いない。中国共産党の正統性は、5%をゆうに超える経済成長率にかかっているからである。もっとも、中国では広範な世論調査は行われていないというか認められていないので、14億人の国民や500人の党幹部が習近平の仕事をどう評価しているのかを知ることはできない。
習近平にとっての真の課題は、中国経済のどの火種にまず対処するかを見極めることだろう。GDPの最大3割を生む不動産部門は、中国経済の減速の一因になっている。この問題の根深さは、いまも尾を引く日本の1990年代の不良債権問題と通じるところがある。
それについては、20年以上にわたって量的緩和の沼にとらわれたままの日本銀行の姿を見るだけでいい。日銀の植田和男総裁が緩和縮小を示唆するだけで、日本はデフレに逆戻りするおそれがあるし、世界のマーケットを動揺させる危険もともなう。
習近平はテクノロジー部門に対する締め付けを強化し、中国経済を損なった。中国の規制当局は2020年後半以降、アリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)をはじめ、中国の著名なイノベーターたちに誰がボスなのかをあらためて示した。だがその過程で、1年足らずで中国のハイテク株の時価総額を1兆ドル(約148兆円)以上失わせた。
また、中国の景気刺激策が効きにくくなってきていることも問題だ。簡単に言えば、中国は過去30年、大規模なインフラブームにあまりにも頻繁に頼りすぎた。薬やステロイド剤の場合と同じように、景気のてこ入れで同じ手を繰り返してきた結果、患者を安定化させられるほどの効果が出なくなっているのだ。融資平台のものを含め中国の債務は、世界にとってもむしろ逆風になりつつある。
さらに、人口動態のひずみも顕著になっている。中国でも高齢化が進むにつれて、国民を脅かすデフレ圧力がさらに根づいていくおそれがある。共産党政権は、家計が貯蓄を減らして支出を増やすのを後押しするような、社会的なセーフティーネット(安全網)の拡大が遅れている。
こうしたもろもろが重なり合って、2023年は習近平指導部にとって嫌な年になるに違いない。中国は向こう1年、基本的には世界経済の牽引(けんいん)役から外れることにもなるだろう。
中国の不調が続くなか、日本の成長も鈍化し、欧州の景気も足踏みしている。米国はリセッションこそ避けられるかもしれないが、連邦準備制度理事会(FRB)による1年5カ月にわたる金融引き締めの影響に苦しんでいる。
中国経済が崩壊しようがしまいが、中国の成長が緩やかなものにシフトダウンすることは、国内での習近平の地位にとっても、そして世界経済にとっても、歓迎できないニュースだということだ。(forbes.com 原文)
「超大国」を目指す中国の試みは失敗に終わる その理由
米国の2大政党はすべてにおいて意見が対立していると思われがちだが、そんなことはない。中国に関して言えば、世界の覇権を米国と競う最大のライバルだとの認識で超党派が一致している。
この認識は、2018年に米軍事計画の重点に据えられた。当時トランプ政権が発表した新たな国防戦略は、中国について「短期的にはインド太平洋地域の覇権を追及し、将来的には米国を追い落として世界的な優越を達成しようとしている」と記している。
言葉を変えれば、中国は、世界規模の影響力を持つ軍事的優越性において米国に比肩し、やがて凌駕する超大国を目指しているのだ。
そのこと自体はもはやニュースでもなんでもない。中国政府はかねてこの願望を公然と表明し、西太平洋を経済的・軍事的に支配する強国となるべく着実に前進を重ねてきた。
しかし、中国政府の強硬姿勢が強まるにつれ、世界各国は反発し始めた。さらに、内政における長年の矛盾が中国の計画を損ないつつある。中国が世界で米国並みの影響力を獲得することは、もはやありそうもない。データを見てみよう。
経済
世界人口の4%を占める米国は現在、世界の国内総生産(GDP)の約25%を生み出している。この割合は1990年当時と変わらない。一方、世界人口の約20%を占める中国が創出するGDPは、世界の約18%に相当する。
つまり、中国は中所得国ということだ。国民1人当たり年間約1万3000ドル(約190万円)の富を生んでいるが、米国は同7万6000ドル(約1110万円)で約6倍を稼ぎ出している。中国は世界第2位の経済大国でありながら、1人当たりGDPでは世界で64位にすぎない。
今後、中国が急成長できるかどうかは疑わしい。米紙ウォールストリート・ジャーナルは8月20日付の一面見出しで「中国の40年間におよぶ好況は終わった」と報じ、中国経済に広範な衰退の兆しがあると指摘。国際通貨基金(IMF)などの情報を引用して、2030年までの年間成長率は2~3%台になるとの見通しを示した。
人口動態
フランスの数学者で哲学者のオーギュスト・コントは「人口動態は運命である」との警句を発したとされる。この基準に照らせば、中国の先行きは暗く見える。というのも、1979年から2015年まで続いた「一人っ子政策」の結果、他のどの国よりも急速に高齢化が進んでいるからだ。
一人っ子政策が導入された1979年の中国人の平均年齢は20歳だった。2024年には40歳に達する。現在の予測では、今世紀半ばまでに国民の39%が定年年齢を超え、社会は高齢者の介護という大きな負担を背負うことになる。
この問題は自然には解決しない。中国人女性が子どもを産まなくなったためだ。1人の女性が生涯に産む子どもの平均的な人数を示す出生率は、2022年時点で約1.1人で、人口の安定に必要とされる2.1人の半分にとどまる。労働人口の減少という課題は、中国政府が女性の権利を抑圧していることによって悪化している。中国共産党指導部に女性の政治局員はいない。
外交
中国当局は、米国が中国の成長を封じ込めようとしていると非難している。それは事実だ。バイデン政権は米国の同盟強化をインド太平洋戦略の主軸に据えており、その努力を中国の険のある外交姿勢が後押ししている。
オーストラリア、インド、日本、フィリピン、韓国など、近隣諸国の多くは中国の政策に断固反対の立場をとっている。ウクライナに侵攻したロシアに中国は寛容だが、それは欧州の北大西洋条約機構(NATO)諸国と太平洋の米同盟国との間に前例のない協力関係をもたらした。
これまで通商上の利益を優先して対中関係の緊張化を避けようとしてきたドイツでさえ、今や戦略文書の中で中国を「構造的なライバル」と表現している。ウクライナ侵攻の大失敗によってロシアはいっそう中国に好意的になったが、同盟国というよりも依存関係にあるように見受けられる。
安全保障
中国の軍事費は世界全体の約13%を占める。米国は39%で、中国の3倍だ。購買力格差を補正しても、バイデン政権が10月1日から始まる会計年度に要求した国防予算8860億ドル(約130兆円)が、中国政府の努力水準を凌駕するのは明らかだ。
人民解放軍は1979年にベトナムと戦って以来、大きな戦闘を経験しておらず、紛争でどの程度の実力を発揮するかは不透明だ。対照的に、米統合軍は9.11同時多発テロ事件以降、海外で軍事行動に従事し続けている。中国政府はしばしば台湾の武力統一を口にするが、実行に移す資金力に欠け、米国との対立がもたらす結果を恐れている。米国は台湾の防衛力増強を支援し、直近ではF16戦闘機用の赤外線捜索追尾システムの売却を承認した。
米政界の反中派は中国海軍の軍艦建造計画のスピードに盛んに警鐘を鳴らすが、いざ戦争となれば、ステルス対艦ミサイルを搭載した数機の米爆撃機があっという間に中国艦隊を沈めるだろう。米国と米同盟国は、台湾周辺海域の船舶を追跡し標的とするため必要な技術への投資を着実に増やしている。
技術
過去40年間の中国の経済成長は、先進技術よりも安価な労働力によって達成されてきた。安価な労働力が失われつつある今、中国政府は自国の技術基盤を成長させる必要がある。しかし、中国はソフトウエア主導のデジタル革命の可能性にてこ入れするよりも、産業活動でより良い成果を得る傾向がある。
バイデン政権は、半導体製造技術の提供を制限し、クラウドコンピューティングサービスへのアクセスを遮断し、企業に圧力をかけて対中技術投資を抑制することで、この状態を維持しようともくろんでいる。北京と上海でソフトウエアエンジニアを多数雇用している米マイクロソフトは最近、中国の人材を国外に移す動きを見せている。
ドルの基軸通貨としての優位性など、米国の強さの源泉について挙げられる事例はまだまだあるが、要するに、中国が国力で米国に匹敵することは恐らく決してないだろうし、ましてや超えることなどありえないだろうということだ。米政府の賢明な政策と、中国の根深い欠陥が相俟って、中国が真の超大国になることを阻んでいるのだ。(forbes.com 原文)
参考文献・参考資料
マレーシア発 中国No.1不動産会社が建設した「15兆円のゴーストタウン」全貌写真 (msn.com)
兵站とは?現代用語の物流・ロジスティクスが何故重要なのか兵站を用いて解説しております。 (mikasa-net.co.jp)
中国が繰り返す「インフラ整備頼みの景気刺激」の問題点 (msn.com)
中国の不動産問題、住宅にとどまらず オフィス空室率が上昇 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
存亡の危機に立つ「中国モデル」 対応誤れば共産党の正統性危うく | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
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