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政治講座ⅴ1427「栄光のフラッシュバックに浸る白昼夢の中の中国。次はインドの時代か」

フラッシュバックという用語は過去に起こった記憶で、その記憶が無意識に思い出されかつそれが現実に起こっているかのような感覚が非常に激しいときに特に使われる。
白昼夢は、日中、目覚めている状態で、現実で起きているかのような空想や想像を夢のように映像として見る非現実的な体験、または、そのような非現実的な幻想にふけっている状態を表す言葉。願望を空想する例が多い。
表題のように、中国は栄光のフラッシュバックに浸る白昼夢の中である。

中国経済は、費用対効果を無視した不動産開発投資をレバレッジ効果の錬金術で成長したが、逆回転するとものすごい逆効果となる。
今はその逆効果として、振幅の大きい経済的反動が中国を襲っているのである。
実体経済をこのように解説している者がいない。
後述する報道記事では中国の技術開発を称賛して、「不動産バブル崩壊の影響は3〜5年続くだろうが、その後は力強く成長の道をたどるに違いない。」と言っているが、とても無理であろう。知的所有権のパクリがほとんどで、日本企業と合弁で発展してきた企業と技術であることに注目すべきであろう。それと、費用対効果や需要と供給の予想・計画が市場経済を無視した投資は破綻するのである。それが中国で起こっている不動産開発会社の破綻・デフォルトである。
日本は米国との為替問題と半導体問題で紆余曲折があり、海外に日本企業が進出して国内は産業空洞化現象が起きたのがデフレ経済であり、海外からの企業配当金などの経常収支で潤って世界の債権国となっている。
日本のデフレ経済を「失われた30年」と表現する輩が多いが、吾輩は経常収支などで「通貨価値の安定した30年」と捉えている。
翻って中国は、日本のような債権国家ではなく、過剰債務国家であると表現した方がよい。その例が不動産開発会社のデフォルトであろう。「一帯一路」で途上国に貸し出した資金は収益性がないために途上国から回収できない状態である。
「債務の罠」と悪評を受ける中国は費用対効果の計画の能力が欠如しているとしか思えないのである。
そして、その経済破綻はどれほどの広がりを見せるかは想像もできない。
中国の経済実態を調査する者は「反スパイ法」で拘束して、不都合な実態は隠蔽するのであろう。
中国は、今の習近平政権では世界から孤立して経済発展の展望は望めそうもない。もう、2度と中国には海外投資は戻ってこない。中国の人口に個人消費経済の魅力を感じているようであるが、貧富の差があり過ぎるので、寧ろ、民主主義国家のインドの台頭が、期待される。
今回はそのような報道記事を紹介する。

     皇紀2683年10月15日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司


中国に「失われた30年」は来ない 不動産崩壊は命取りではなかった

アサ芸biz の意見•3 時間

中国に「失われた30年」は来ない 不動産崩壊は命取りではなかった© アサ芸biz

最近、中国関連の報道で目立つのが「これから中国版の失われた30年が始まる」という論調だ。

果たして中国経済は、日本がたどってきたのと同じように30年の長きにわたって失速し続けるのか
先に答えを示せば、「そんなことはあり得ない」である。

確かに今の中国は、経済も内政も何もかもがうまくいかない、まるで“満身創痍”の重病人だ

世界を驚愕させた「一帯一路」も開店休業状態にあり、中国経済の起爆剤であった不動産は完全に破綻
関連産業や地方政府は膨大な負債を抱え、経済成長の足かせになっていることは間違いない。

輸出入額も減少する一方で、しかも経済の基礎である人口動態も、ついに減少に転じた。

この状況をみてエコノミストは、中国が日本と同じように「失われた30年をたどる」と指摘しているのだが、重要なことを見過ごしている

日本を振り返ると、1990年代半ばからデフレ状態が続いていた。物価安、企業の収益悪化、賃金減少が連鎖するデフレスパイラルに陥ると、時の安倍晋三総理は、清水の舞台から飛びおりる思いでゼロ金利を決断した。しかし、一向に景気が回復しなかったことは周知のとおりだ。

失敗の理由は、米国のGAFAに象徴されるような新時代を築く新産業が生まれなかったからだ。

しかし、中国は違う。不動産業の終焉で、お金を払ったものの工事が止まり入居できないマンション購入者や工事代金が支払われない施工業者が続出し、500〜1000万人の自殺者が出ると予測されているが、中国政府はこの程度の混乱は無視し、惑わずに新産業に投資をして、経済を力強く復活させていくのは間違いない。

既に電気自動車(EV)では日米欧を出し抜いて、中国のEVがものすごい勢いで世界を席巻している。

自動車先進国は中国のEVは価格競争に有利になるよう補助金を不当に受けていると糾弾するが、もはやそれは負け犬の遠ぼえだ。

そもそも中国は、世界の製造強国になるべく、2015年から「中国製造2025」政策を断行。ハイテクの10大産業(次世代情報通信技術、先端デジタル制御工作機械とロボット、航空・宇宙設備、海洋建設機械・ハイテク船舶、先進軌道交通設備、省エネ・新エネルギー自動車、電力設備、農薬用機械設備、新材料、バイオ医薬・高性能医療器械)に国がイニシアチブをとって力を入れてきた

つまり、世界中から人材をかき集め研究資金をふんだんにつぎ込んで、世界をリードする研究成果を出してきたのだ。これにより、中国の10大産業は目覚ましい発展を遂げた。

例えば、太陽光パネルだ。中国は世界シェアの80%を占め、日本のメーカーが蚊帳の外に追い出されたことは記憶に新しい。中国製ロボットも大変な勢いで日本でシェア拡大している。ファミリーレストランや居酒屋に行けば、中国製の配膳ロボットが料理を運んでくる。

こうした新産業が勃興する国で、「失われた30年をたどる」訳がない。不動産バブル崩壊の影響は3〜5年続くだろうが、その後は力強く成長の道をたどるに違いない。

(団勇人・ジャーナリスト)

習近平は大焦り…悲惨すぎる中国経済…「大学卒業して“即失業”、会社員の給料は3割カット」になった「最悪の理由」

週刊現代 によるストーリー •12 時間

巨大不動産会社の倒産危機に会長の逮捕、ミスター人民元の突然の解任―ヤバいヤバいと言われ続ける中国だが、いったい何が起こっているのか。ベールに包まれた暗黒経済の内側が見えてきた。

給料3割減か即失業

日本が厳しい残暑に苦しむ9月下旬、中国は、中秋節(9月29日)と国慶節(10月1日の建国記念日)を合わせた8連休(9月29日〜10月6日)を迎えていた。

CCTV(中国中央テレビ)をはじめとしたメディアは連日、「鉄道旅客が一日2000万人突破」「ホテルの宿泊状況はコロナ禍前('19年)の5倍」などと、中国経済が「V字回復」を果たしていることを強調した

たしかにテレビで見る限り、鉄道も空港も黒山の人だかりで、高速道路は大渋滞。その上、杭州で開催中のアジア大会で、中国人選手の連日の金メダルラッシュを、キャスターが「国歌のBGMを添えて」伝える。なかにはこんな発言もあった。

天空に現れた満月も、幸福に包まれた私たち中華民族を祝福しているかのようです!

だが、皓々たる満月とは対照的に、中国経済には黒い暗雲が垂れ込めている。大手国有企業の中堅幹部が嘆いて言う

ここ数年で給料は3割カット、以前は充実していた福利厚生も消えた。今年は生活に汲々で、中秋節の月餅を買う気にもならなかった。

代わりに増えたのが、『習近平思想』の学習8連休といえども毎日、『自宅学習』を強いられました。なぜって? 政府が習主席の思想を学ぶことを、共産党員に強制しているからです。分厚い本を開いて、なんとも退屈な文章を手書きで書き写しています

ようやく涼しくなってきたのに、とにかく息苦しい秋ですよ」

Photo by gettyimages© 現代ビジネス

今夏に北京の大学を卒業した青年は、暗い表情でこう漏らす。

「国慶節の7連休が、今年は『政府のプレゼント』で8連休とか言われても、正直言ってピンと来ないですね。だって私を含めて多くが、卒業後に就職先がなくて、『卒業即失業』となったんですから。つまり、365連休中なんです」

若年層(16〜24歳)の失業率は、6月に過去最高の21.3%を記録。1158万人もの大学生が卒業した7月は、ついに50%を超えるとも囁かれていた。だが結局、国家統計局は、「8月分からは若年層の失業率は公表しない」と決定。いまではその正確な数値さえわからない。

唯一のガス抜きが海外旅行で、国民の旅行を担当する中国文化観光部は、8連休中、「友好国への旅行」を奨励した。

だが皮肉なことに、「福島原発の核汚染水放出」(中国外交部の表現)で「敵対国筆頭」のはずの日本への旅行が、大人気となっている。9月26日に発表された『2023年10・1連休出国予測報告』によれば、人気旅行先のトップ5は、日本、タイ、韓国、マレーシア、シンガポールの順。「行ってはいけない」日本が、堂々と1位につけているのだ。

マイナスだらけの数値

実際、9月末から日本各地で中国人観光客を多く見かけることとなった。銀座で買い物をしていた中国人女性グループの一人が語る。

日本を訪れたのは10年ぶりです。当時の中国はPM2.5の大気汚染が深刻で、日本旅行は『肺を洗う旅』と言われました。今回はさながら、『脳を洗う旅』ですね(笑)。中国の景気は最悪だし、社会全体が鬱々としているから、日本旅行は最高のストレス解消ですよ」

中国経済は、丸3年に及んだ「ゼロコロナ政策」の後遺症にもがき苦しんでいる。最新の経済指標の一例を示すと、以下の通りだ。

・7月までの全国工業企業利益、前年同月比マイナス15.5%特に民営企業が沈滞

Photo by gettyimages© 現代ビジネス

・8月のCPI(消費者物価指数)、前年同月比プラス0.1%(前月のマイナス0.3%から持ち直したものの、依然としてデフレ傾向)

・8月の新築住宅価格指数は70都市中、52都市で前月より下落(各地に「鬼城(ゴーストタウン)」が出現中

・7月の不動産販売面積、前月比マイナス46%(東京23区の面積以上が売れ残りの在庫と化している

・8月の貿易額、前年同月比マイナス8.2%(輸出マイナス8.8%、輸入マイナス7.3%で世界的な「中国離れ」が顕著

中国経済崩壊の指標は

中国の大手証券会社アナリストが語る。

政府は『V字回復』を喧伝しているものの、実際には『L字』(悪化したまま)、もしくは『I字』(悪化し続ける)かもしれません。『中国の日本化』と言えば分かりやすいでしょう。前世紀末のバブル経済崩壊後の日本とソックリだからです。

現在の不動産バブル崩壊が、金融業界に波及し、地方銀行が倒れ始めた時が、中国経済崩壊の時だと見ています。政府はようやく手を打ち始めましたが、いまだ明確な効果は表れていません」

このアナリストは、特に「二つの指標」に着目していると言う。

Photo by gettyimages© 現代ビジネス

「それは株価と為替です。この二つは、中国の粉飾が囁かれる公式統計の中でも、比較的ウソをつけないからです。

株価は、現在3100前後の上海総合指数が3000ポイントを割り込んだ時が、中国経済の危険水域です。また為替は、現在1ドル≒7.2人民元のレートが、『超八』(8を超える)の超元安局面に入ったら、世界が中国を見放したと見るべきでしょう」

不動産に関しては、中国では俗に「金九銀十」と言われる。例年、9月が不動産販売のピークで、連休及びその後の10月が、2番目に盛況の時期という意味だ。

ところが、今年の連休前の9月28日、衝撃的なニュースが飛び込んできた。不動産大手、恒大集団の株式の取引を停止する、と香港証券取引所が発表したのだ。

恒大は、年間売り上げ7000億元(約14兆円)、従業員20万人という巨大不動産会社だったが、一昨年末にデフォルト(債務不履行)に陥った。以後、本社のある広東省などが立ち入って、傘下の8グループの整理を行ってきた。それでも今年6月末時点で、3280億ドル(約49兆円)もの巨額負債を抱えている。

この前編記事では中国で起こっている経済の崩壊の実情について解説してきた。続く後編記事『粛清しても無駄…習近平が君臨する限り「中国の経済不況」は終わらないと断言できる「ほんとうの理由」』ではそれらの企業のトップの動きや、習近平の動きなどについて引き続き解説していく。

中国で仏系スーパーが相次ぎ閉店 小売業界の勢力再編か

AFPBB News によるストーリー •23 時間

中国で仏系スーパーが相次ぎ閉店 小売業界の勢力再編か© CNS/張浪

【東方新報】フランス発のスーパーマーケット、カルフールの中国の店舗が次々と閉店している。3月下旬に北京市の創益佳店の閉店が伝わった時にはなんとも寂しい思いがした。1995年から続いた同店はカルフールの中国進出第1号店であり、中国初の本格的な大型スーパーと言える存在だった

 その感傷に浸るのもつかの間、上海市や広東省広州市といった大都市も含めた各地の店舗が相次いで閉店。9月半ばには、北京で最後に残った四元橋店が営業を「一時停止」した。これまでに営業を停止した北京の店舗は「改装のため」などと説明してきたが、いずれも営業再開のめどは立っていない。

 ピーク時には中国国内の店舗が321店に達したカルフールだが、2009年から業績が低下。同年、ネット通販大手蘇寧易購にカルフール中国の株式の80パーセントが買収されたが、その後も業績はふるわず、昨年30店舗、今年前半に100店舗以上が閉鎖された。

 大型スーパーの苦境はカルフールだけではない

 ウォルマートも長春市、陝西省、江西省、山東省、北京市などで相次いで閉店。理由は「店舗の賃貸契約が満了し、契約を延長しない」などとしている。

 小売チェーン大手の華潤万家も長沙市、江蘇市、広州市、アモイ市などで少なくとも5店が閉店。その理由は明示されていないが、華潤万家は近年、赤字が伝えられてきた

 大型スーパーの閉店ラッシュをもたらしたのは、Eコマースの隆盛だ中国では、日用品や生鮮食品でさえネットで購入でき、その日のうちに配達してくれる。コロナ禍で外出禁止や、非接触での買い物が推奨されたこともネット販売を勢いづけた。

 北京師範大学経済・工商管理学院の許敏波准教授は「Eコマースの出現により、各地域の消費者に合わせて流通や販売を差別化してきたスーパーの強みが失われつつある」と指摘する。ネットでのショッピングでは、消費者はもはや購買範囲の制限を受けず、全てのプラットフォームでの価格の比較さえ可能となる。プラットフォーム間の競争によってネット販売での商品価格は下がり、流通や店舗の賃貸料などのコストがかかるスーパーは価格競争で劣勢に立たされるという。

 ただ大型スーパーが苦戦する一方で、ホールセールと呼ばれる会員制倉庫型の小売りを手掛けるコストコは8月下旬に中国で第5店目を浙江省杭州市で始めるなど好調だ。許准教授によれば、郊外に大型店舗を持ち会員に直売するホールセールの経営スタイルは、賃貸料や運営コストが相対的に低いため、Eコマースによる打撃が比較的少ないという。

 また、一部の小売チェーンが「社区」と呼ばれる団地の敷地内などに小規模な生鮮食品店など出店を増やす流れが顕在化している。消費者の好みが細分化し生活のリズムが加速化する中で、生活圏により近いこうした小規模店の利便性が重宝されているようだ。

 一定の世代以上には、中国にモノがなかった時代の記憶がまだ鮮明に残っているはずだ。この国の変化の早さに改めて驚かざるを得ないが、人びとの価値観や生活スタイルが変わり、新たな技術が次々と登場する中で、かつて宝箱のように見えた大型スーパーも役割を終え、消費や小売りのあり方を根本から考え直す必要のある社会に成長したのかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News

【インド】今後5年で世界3位の経済国に、モディ首相

8/16(水) 11:30配信
インドのモディ首相は独立記念日の15日、首都ニューデリーで演説し、今後5年間でインドが世界3位の経済大国になることを保証すると語った。国民の購買力の底上げで経済成長の加速を目指す。  2014年に世界10位だったインド経済は、世界5位に成長した。政府は汚職の撲滅、強い経済の創出、貧困層の福祉のための公的支出などに焦点を当て、モディ首相(2期目)の在任期間の5年間で1億3,500万人が貧困層から抜け出し、中間層になったと成果を強調した。  今後5年の経済成長に向けては、再生可能エネルギーやグリーン水素、準高速列車「バンデ・バーラト」を含む鉄道網の近代化、農村部での道路やインターネット環境の整備、電気バスや都市鉄道(メトロ)の整備、半導体製造の誘致などに取り組んでいると話した。  インド政府は、独立100周年を迎える47年までに先進国入りを果たすことを目指している

ついに“インドの時代” 人口世界一の見逃せない成長力 浜田健太郎/村田晋一郎(編集部)

2022年12月19日

 2023年は世界経済の構造が大きく変化する始まりの年になりそうだ。国連の予測によれば、経済成長著しいインドが23年、中国を抜いて人口で世界一となる。インドは27年には日本を抜いてGDP(国内総生産)で世界3位となる一方、中国の成長率は今後も低下を続ける見込みで、00年以降に2ケタ成長を続けて世界経済をけん引してきた中国に代わり、インドが世界の成長センターに躍り出る。

>>特集「世界経済総予測2023」はこちら

 22年11月に開幕したサッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会。アジア勢とアフリカ勢の健闘が注目を集めたが、サッカーコートを囲む広告板でもある変化が起きていた。家電のハイセンスなど近年目立つ中国勢とともに、インドのある新興企業が大会スポンサーの列に加わっていたのだ。11年に創業したオンライン教育のバイジューズ社である。

 バイジューズは未上場だが、推定企業価値は220億ドル(約3兆円)と、日本のパナソニックホールディングス(HD)の時価総額に匹敵する。バイジューズ社はすでに100カ国以上で事業を展開し、約1億5000万人以上の生徒にサービスを提供。米ブルームバーグ通信によると、バイジューズは22年6月、米同業2Uに約10億ドル(約1350億円)の買収案を提示するなど、M&A(企業の合併・買収)にも積極的だ。

 バイジューズの急成長の背景には、インドにおける教育熱の高まりがある。入学難易度で世界屈指のインド工科大学など、難関大学への入学を巡って受験戦争が過熱しており、幼児の段階から過酷な競争が始まっているのだ。他にも、ソフトバンクグループなどから大型の資金調達を成功させた同業のアンアカデミーなど、急成長企業が続々と生まれている

 人口14億人超のインド。中国の後を追うように人口が増え続けていたが、国連が22年7月に発表した「世界人口推計」(22年版)によれば、インドは23年、中国を抜く見通しとなった(図2)。インドの人口は2060年代に17億人近くまで増える一方、中国は早ければ23年から人口減少が始まる。長く中国が人口世界一だった常識が大きく変わることになる。

 それだけではない。国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し(22年10月)によれば、インド経済は23~27年、5年間平均で6.5%の成長が見込まれ、一定の経済規模を持つ国では最も高い部類に入る(図1)。その結果、21年のGDPで世界5位のインドは、25年には4位のドイツ、27年には3位の日本を抜く見込みだ(表)。対照的に、中国は27年までの5年間平均で4.6%成長へと減速が予測される。

ITの強さの源泉

 新型コロナウイルス禍前の19年まで、10年間平均で6.9%の成長を続けていたインド。成長をけん引した産業の一つがITだ。グーグルのサンダー・ピチャイ氏、マイクロソフトのサティア・ナデラ氏……。米国の有力IT企業のトップにはインド出身者もしくはインド系米国人がずらりと並ぶ。インドのタタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)やインフォシスは、ITシステムやコンサルティング分野で世界的大手だ。

 インドはなぜIT分野に強いのか。インド経済研究所の菅谷弘理事は、インド古来の階級制度カーストの影響から逃れられたことが要因の一つと指摘する。カースト制度では「ジャーティ」と呼ばれる細かな社会集団に分類され、職業が各集団に付随して維持されてきた。しかし、「『ITは新しい産業だからカーストの制約はない将来のビジネスになる』と気付いた優秀な人たちが一斉に集まってきた」(菅谷氏)。

 インドは1991年、それまでの社会主義的政策から経済自由化政策に切り替え、発展の基礎を築いた。そして今、モディ現政権が注力する領域が製造業、特に半導体分野だ。コロナ禍によって中国などに依存していた電子部品やハイテク製品が供給制約に直面。また、20年5月には中印国境で中国との戦闘も発生し、「中国依存は危ないと考え、『インドの自立』を唱え始めた」(菅谷氏)という。

 インド政府は今後、半導体産業育成に5年間で7600億ルピー(約1.4兆円)の補助金を拠出するという。すでに、電子機器受託製造世界最大手の台湾・鴻海精密工業がインドの資源関連複合企業ヴェダンタと組んで、グジャラート州に半導体の新工場の建設をインド政府に申請している。総投資額は1.54兆ルピー(約2兆6000億円)にものぼる見込みだ。

 また、ベルギーの世界最先端の半導体研究機関imec(アイメック)は22年10月、インド政府とインドにおける技術支援を行うことで合意した。imecが供与する微細加工技術のレベルは、回路線幅28ナノメートル(ナノは10億分の1)かそれ以下と、最先端の半導体製品とは開きがある。しかし、インドで半導体を国産化するうえで、産業のエコシステム(経済的な生態系)を作る基礎固めとみられる。

ベトナム、インドネシアも

 インドは今後、消費市場としても大きな注目を集めそうだ。インドの1人当たりGDPは現在、2000ドル台だが、25年には家電製品や家具など耐久消費財の売れ行きが加速するとされる3000ドルを超すと見込まれる。インド経済に詳しい伊藤忠総研の石川誠上席主任研究員は「今後、生活の質を改善するための需要が期待でき、電力、道路、鉄道、通信、上下水道などインフラ整備も引き続き必要になるだろう」と語る。

 一方の中国。15年に「一人っ子政策」の廃止を決定し、21年には3人目の出産も認めたが、教育費の高さなどから少子化に歯止めがかからない。すでに生産年齢人口(15~64歳)は13年、約10億600万人とピークに達し、今後も減少が見込まれる。中国の社会保障制度や人口問題に詳しいニッセイ基礎研究所の片山ゆき主任研究員は「一人っ子政策が2世代(約40年)と長期にわたったことが大きく影響している」と話す。

 中国は今後も米国と肩を並べる経済大国へと成長を続けることは間違いない。しかし、「働く人が少なくなれば、税収や社会保険料など社会を支える経済的な資源が先細り、国が弱体化する」と片山氏。中国は足元でも、ゼロコロナ政策によって日常生活や経済活動が停滞し、国民の不満が鬱積。政府がゼロコロナ政策の見直しに追い込まれるなど、混乱は収まらない。

 27年までの5年間では、インドのように人口が増えるベトナムやバングラデシュなどで年平均6%以上の成長となるほか、エジプトやインドネシアなどは5%以上の成長が見込まれる。ナイジェリアやバングラデシュ、ベトナムは27年、アルゼンチンなどに代わってGDPの上位30位にも顔を出すとみられる。世界の構造変化の大きなうねりは、目前まで押し寄せている。(浜田健太郎・編集部)(村田晋一郎・編集部)

世界一の人口大国となるインド経済の見通し-当面は底堅い成長が続くが、製造業振興策の成否が持続的成長の鍵を握る

基礎研REPORT(冊子版)2月号[vol.311]
経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠
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1―足元の成長率は鈍化

インドは2022年7-9月期の実質GDP成長率が前年同期比+6.3%と、8四半期連続のプラス成長となった[図表1]。4-6月期から増勢は大きく鈍化したが、4-6月期の高成長(同+13.5%)は比較対象となる前年の実質GDPが低水準だったことによる影響が大きい。前期比でみると、7-9月期の成長率は+3.6%と高く、景気は堅調に拡大した模様である。

7-9月期はサービス部門(同+9.3%)と民間消費(同+7.7%)が堅調に拡大した。新型コロナへの警戒感が弱まり消費行動が正常化するなか、国内線旅客数と外国人訪問者数の増加により観光産業が持ち直した。また祭事期を前に消費需要が盛り上がりをみせたことや、公共投資の前倒しにより投資(同+10.4%)が堅調に拡大したことも内需を押し上げた。

輸出( 同+11.5%)はサービス輸出が好調で二桁増を維持した一方、輸入(同+25.4%)は輸出を上回る伸びとなり、純輸出の成長率寄与度はマイナスだった。

2―当面は景気減速も底堅い成長続く

当面はインド経済の減速が予想される。コロナ禍からの回復の勢いが弱まるなか、内需はインフレの高止まりや金融引き締め策の継続が重石となり、消費と投資の増勢が鈍化しそうだ。また世界経済の減速により輸出が鈍化傾向にあり、外需のマイナス寄与は続くだろう。

しかし、公共投資は景気の下支え役となり、経済は底堅い成長を維持するだろう。今年度国家予算では、資本支出が前年度比35.4%増と増額されており、政府は大型インフラ投資計画「ガティ・シャクティ」政策を推進している。また2024年の総選挙を控えた来年度予算も経済成長に配慮した財政運営となるとみられる。

インフレ率は旺盛な内需を背景に当面高めの水準で推移するが、国際商品市況の下落によるエネルギー価格の低下や小麦の豊作による穀物価格の低下、ドル高圧力の緩和による輸入物価の上昇一服により次第に落ち着きを取り戻すだろう。

金融政策は昨年、物価抑制に向けて政策金利を1.9%引き上げている。今後も底堅い成長が続くなかで政策金利は今年前半にかけて更に0.5%引き上げられると予想する。追加利上げによりインフレ圧力は和らぐが、金利上昇が消費や投資を抑制することになりそうだ。

以上の結果、成長率は22年度が前年度比+7.0%、23年度が同+6.0%と低下するが、底堅さを保つと予想する[図表2]。

3―持続的成長への課題

インドは2023年に中国を抜いて世界一の人口大国となる。働き手は今後10年間で毎年1,000万人のペースで増えると見込まれるが、現在労働人口の約9割が非正規で、低生産性・低賃金の状況にある。いくら働き手が増えても質の高い職が足りなければ、効果的な経済成長を実現することは難しい。

産業別GDPシェア(2021年度)をみると、製造業は14.5%で停滞、農林水産業の18.1%を下回る。工業化の遅れが際立つが、視点を変えれば製造業の成長余地が大きいとも言え、今後のインド経済の持続的な高成長には政府の製造業振興策の成否がカギを握ると考えられる。

モディ首相は政権発足以来、「メーク・イン・インディア」をキャッチフレーズに様々な経済改革を進めてビジネス環境を整備すると共に、巨大な国内市場を盾に関税を引き上げたり、補助金を交付したりすることにより企業に国内でのモノづくりを促してきた。また最近では、米中対立を背景に中国以外に生産拠点を設けようとする企業の動きが拡大、インドに半導体生産の工場を誘致する動きもあり、明るい兆しはみえてきている。

しかし、インドは民主主義国家であるため、政府が民意を顧みずに強引に政策を押し進め続けることは難しく、工業化の速度は一党独裁で意思決定の早い中国と比べて緩慢になるだろう。近い将来、インドは米中に続く世界3位の経済大国になるが、持続的な経済成長に向けては土地収用の円滑化や労働者に有利な労働法の改正、自由化率の高いFTAの実現など政府が取り組むべき課題は多い。

参考文献・参考資料

中国に「失われた30年」は来ない 不動産崩壊は命取りではなかった (msn.com)

習近平は大焦り…悲惨すぎる中国経済…「大学卒業して“即失業”、会社員の給料は3割カット」になった「最悪の理由」 (msn.com)

中国で仏系スーパーが相次ぎ閉店 小売業界の勢力再編か (msn.com)

1からわかる!なぜインドは世界3位の経済大国に?人口14億を原動力に成長のワケ|NHK就活応援ニュースゼミ

【インド】今後5年で世界3位の経済国に、モディ首相(NNA) - Yahoo!ニュース

世界経済総予測2023 :ついに“インドの時代” 人口世界一の見逃せない成長力 浜田健太郎/村田晋一郎(編集部) | 週刊エコノミスト Online (mainichi.jp)

世界一の人口大国となるインド経済の見通し-当面は底堅い成長が続くが、製造業振興策の成否が持続的成長の鍵を握る 基礎研REPORT(冊子版)2月号[vol.311]|ニッセイ基礎研究所 (nli-research.co.jp)

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