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20240525 イラストエッセイ「私家版パンセ」0008 自立と依存

 昔、同志社大学の樋口和彦教授の話をうかがったことがあります。
 樋口先生は河合隼雄先生と並ぶ、ユング心理学者でした。
 こんなお話です。

 日本ではかつて、腕白坊主を叱る時、お母さんがタンスの中から「へその緒」出してきて叱ったものだ。
 「お前は、わたしから生まれてきたのだ。そんなわたしを泣かせて良いのか?」という訳である。
 一方、西洋では、子供が初めて自分の足で立った時にはいていた靴を大切に保管していて、子供が道に迷った時、それを見せる。
 「お前は自分の足で立つことが出来たのだ。だからきっと大丈夫」と。
 一方が子供を支配下に置きたいという欲求のあらわれなら、他方は自立の象徴である。
 
 ぼくは若い教師だった頃、「やはり教師は子供の自立と自己実現を援助せねばナラヌ!」と肩に力が入っていたものでした。
 けれど歳を取ると、そんなに頑張って自立しなくてもいいじゃないか。人間誰だって一人では生きられないのだ。お互いに頼りあっても良いんじゃないかと思うようになりました。
 そういう意味で、最近の「合理的配慮」という考え方はいいなーって思います。依存というより、淡々とできないところは援助してもらえばいいし、援助すればいい。
 そのうえで、自己実現を目指すのも有りだなって思います。


樋口和彦先生




私家版パンセとは

 ぼくは5年間のサラリーマン生活と、30年間の教師生活を送りました。
 その30年間、子供たちが元気になれるような言葉はないかなと考え続けて来ました。
 そんな風にして考えた小さな思考の断片をご紹介します。
 これらの言葉がほんの少しでも誰かの力になれたら幸いです。

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