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【読書感想文】国家外交は究極の営業活動でもある


・思わず目に入ったタイトル

「歴代首相のおもてなし~晩餐会のメニューに秘められた外交戦略~」
図書館で本を探していると、パッと目に入ったこのタイトル。
毎日新聞社編集委員の西川恵さんの一冊で、小渕首相から第二次安倍首相時代までの歴代首相の「おもてなし」に迫った一冊です。

・「おもてなし」は政治の延長である

こうしたおもてなしは必ず首脳会談や政治協議とセットで行われます。
政治的な厳しいやり取りの合間や、会談後のくつろぎのひとときの意味を込めて執り行われます。
しかし、そこにはただの「食事」だけではない様々なメッセージが込められているそうで…。

・メニュー全てに意味がある

そもそも晩餐会のメニューはいかにして決まるのか?
外国首脳の日程が決まると、外務省から相手国の大使館を通じて来日する首脳の好き嫌いやアレルギー、宗教上注意すべき点、更には「洋食」「和食」「和洋折衷」の希望を聞き、ここから何回かのやり取りを経て決まるそう。
飲み物はワインがベース。官邸が毎年買い込んでいるワインがあり、赤白それぞれ数種類候補を挙げた後、料理との相性などを加味して最終決定になるとのこと。

ワインには等級があるので、相手首脳への重要度などに応じてその等級を変えているほか、近年は日本ワインを積極的に使用しているとのこと。

また、イスラム圏の首脳は基本的には飲酒しないものの、その中でも「自分に注がなければ周りの人はOK」というパターンもあれば、「会場内に一切アルコールを持ち込まないでほしい」という時も。

相手国で生産されたワインを提供したり、日本酒好きの首脳には日本酒を手厚く用意したり、サミットの際は参加8か国のワインをブレンドしたり…。

前菜から締めのデザート。更にはドリンクまで。
全てのメニューに意味があるのです。

・どんな首脳でも結局は人間同士

まず率直に思ったのはこれです。どれだけ大きな肩書がついても結局は人間同士であること。
外交の成果は日本に住んでいても中々感じにくく、外遊や豪華なもてなしで首脳を迎えることは時に批判の的となることもありますが、しっかりとお金や時間を掛けて「あなたのことを、あなたの国の事を思っていますよ」と伝えることは大きな国益になると実感させられました。

・おもてなしから世界へ

2013年12月に「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されるなど世界的注目を集める日本の飲食文化。
外交の場でこれをさらに世界に広げていこうと、晩餐会で積極的に和食を提供したり、果物を提供した際に果物の説明と輸入する際の窓口となる日本貿易振興機構の連絡先を記したカードを付けたりと、おもてなしが世界へのアピールの場としても機能しています。

・外交は究極の営業活動

本書には各時代の晩餐会でメニューが事細かに記載され、豪華絢爛なメニューが並びます。
そこには、訪れた首脳たちをこの国のベストを尽くして迎えるというプライドと、華やかな会食の裏にある厳しい国際情勢が垣間見えます。
外交はまさに究極の営業活動です。もはや自国だけでは生きていけない時代に日本を守るためにあらゆるアプローチで戦っている方がいる方を私たち国民は忘れてはなりません。


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