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欲望を達成するには執着必須。 ~ 舞台 『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』 ~

こちらj上記の『尺には尺を』の続き的な感じです。

ここから感想を含めたネタバレがあります。

観賞予定の方は後日お読み頂けましたら幸いです!

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ルシヨン伯爵夫人こと那須佐代子さんには、ひとり息子のバートラムこと浦井健治さんがいます。

そしてもう1人侍女として育てていたヘレナこと中嶋朋子さんもいます。

中嶋さんは先頃他界した高名な医者の娘ですが、那須さんが医者と懇意にしていたため一人ぼっちになってしまった中嶋さんを引き取ったのでした。

ある日、浦井さんがフランス王こと岡本健一さんに呼ばれて故郷からパリへと向かいます。

その岡本さんは高齢である上に不治の病に侵されており、余命いくばくも無いと噂されています。

浦井さんがパリに行ってしまうことになり、中嶋さんの心は千々に乱れます。

そうです、中嶋さんは浦井さんにラヴなのです!

この密かな思いを知ることとなった那須さんは、中嶋さんが医者である父から譲り受けた秘伝の薬を岡本さんへ処方すべくパリへ行く・・という建前の元、浦井さんを追う如くパリへ出掛けることを許します。


幾重なる高名な医者がどれだけ手を尽くしても症状が改善しない岡本さんは絶望の最中にいます。

ですが、中嶋さんの熱い秘伝の薬の話に、改善しなければ中嶋さんへ非業の死を与え、見事回復したら何でも望みのものを褒美として与えるとして治療に挑みます。

治療を受けて数日の後、岡本さんは若返ったように足取り軽く宮殿をルンルンと踊り歩きます。

岡本さんは中嶋さんへ望みを何でも聞き届けようと問いかけます。

無事に岡本さんを回復させられた安堵と共に、「浦井さんと一緒になりたい!!」と熱い思いを願い出ます。

岡本さんは「よっしゃ!!」と浦井さんへ中嶋さんと婚姻を命じます。

ここで困ったのは浦井さん。

浦井さんは上昇思考があり、自分よりもずっと身分が低い中嶋さんを絶対に嫁にしたくありません。

何のかんのと岡本さんへ言い繕ってみますが、すっかり中嶋さんを気に入った岡本さんは「されば中嶋さんにお前とつり合う身分を作り与える」とまで!

流されるままに婚姻の儀は進み、初夜へ一直線。

何が何でも中嶋さんと夜を添い遂げたくない浦井さんは、戦地に赴くという口実でいい加減なトンチキの部下と一緒にフィレンツェへ旅立ってしまいます。

失意の中嶋さんの元に浦井さんからの手紙が残されていました、そこには「私を父親とする子供を産めば、私を夫と呼ぶがいい。だがその時は決して来ないだろう。」と浦井さんの捨て台詞が・・。

しかし、情熱的な中嶋さんはこんな中でも失意の底に沈むどころか、フィレンツェへ浦井さんを追うことを選択します。


そんなことも露知らず、浦井さんは戦地の宿屋の美しい生娘であるダイアナことソニンさんに邪な思いを持って言い寄ります。

執念でフィレンツェ宿屋まで追いついた中嶋さん。

身分を隠した上で宿屋の女将さんと親しくなり、ソニンさんへ浦井さんが言い寄っていることを知ります。

そこで中嶋さんは自分の素性を話し、ソニンさんと自分の替え玉作戦を企画。

女将さんとソニンさんを説得して、夜半に浦井さんと落ち合う約束をさせます。

その際に「これからの二人の誓い」として浦井さんが先祖代々受け継いでいる指輪をソニンさんが強奪。

ソニンさんには岡本さんから頂戴した指輪を代わりに託します。

その指輪をはめて落ち合う場所へソニンさんではなく中嶋さんが馳せ参じます。


何も知らない浦井さんは思いを遂げて意気揚々、さらに「戦地にまで追っかけて来ていた中嶋さんが死んだ」という嬉しいお知らせまで!

ルンルンとパリへ戻った浦井さんの指に光る指輪を岡本さんに指摘されます、それは自分が中嶋さんへ褒美のひとつとして分け与えたものだと。

そこへ「浦井さんに乙女の純潔を奪われた!!」とソニンさんと母親が雪崩れ込み、岡本さんへ訴え出ます。

浦井さんは「宿屋の売女の戯言」と一笑に付しますが、ソニンさんの指に光る指輪は岡本さんのもの。

そこへ死んだはずの中嶋さんがソニンさんの証人として登場し・・・。


浦井さんの捨て台詞的なお手紙が、みんな大好き「伏線回収」となる様は楽しかったです。

浦井さん自身の特大ブーメランが放たれておりました。

『尺には尺を』ではハムラビ法典の「目には目を」と同じような「釣り合いの取れた何某同士」といった具合に、「処女(喪失)と死」「美と権威」のような釣り合いを取ることで、今のご時世でも大問題な出来事ですが、一応解決に導かれます。

こちらの『終わりよければすべてよし』でも文字通り、途中経過がトンデモですが、終わりよければオールオッケー☆(イメージ映像:ローラ)といったダイナミックなラストへ突入させます。

こちらの中嶋さんは今で云うところの「ストーカー気性」っぽく、ある意味、子どもの頃からその気性を知る所もあった浦井さんの心中お察し致します状態。

「尺」の公爵の企画や、「終わり」の中嶋さんの企画に同情する点が多々あるにしても、乗っかる面々はハイリスクと分かりつつも、ノリノリで「演じる」辺りにとても爽快感がありました。


何より凄いのは違う作品であるのに、両作品の演者さんが相互に全員演じていること。

セリフも動きもそれぞれ別の1本の作品なので、1日で全く違う作品を2本演じる鬼の頭脳。

しかも古典作品ですからセリフ回しも日常的な会話と違い、難しい言い回し。

違う作品ですが相通じる内容である上に、ソニンさん、中島さん、浦井さんは双方の作品で共に主演級なのでセリフも莫大。

それぞれの役を混乱せずに魅せて下さるところ、プロだわぁ!!っと。

そして、何だか最近ジャニーズのスター級の方を拝む機会に恵まれています。

岡本健一さんは男闘呼組でギターをバンバン叩いている印象しか無かったのですが、「終わり」の王様の役は凄く良かったです♪

最初はあのおじいさん王は誰だろう?と思っていましたが、岡本さんでびっくりしました。

やはり第一線で活躍していた方は違いますね。


きっと難しい作品だろうと思い、予習としてホームページをチェックして、あらすじを読んでおいて良かったです。

セリフ回しだけだと、ちょっと分かりずらいところがあったので・・(恥)

原作を読もうかどうかは悩むところです(笑)

両作品共に見応えのある、割とダジャレが多い楽しい作品でした。

1本だけ見ることも充分楽しいですが、出来たら2本共見られるとより一層楽しさが増すと思います!


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