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【読書】 「餌」の意味。 ~ 熊嵐 吉村昭 ~


好きなラジオ番組にTBSラジオの「たまむすび」があります。

パーソナリティの赤江珠緒さんと外山恵理アナのお茶目っぷりや、パートナーさんとの絡みが楽しくて、昼下がりのお楽しみタイムとなっています。

その赤江さんがトークの時にちょいちょいお勧めの書としてこちらを紹介なさいます。

そしてその度に「怖いのよー、凄いんだからー!!」と、ひたすらビビる様が気になって仕方ありませんでした。

ここ数カ月は暗い性格を発揮してYoutubeで遭難や山の事故を鑑賞しまくっていました。

すると、オススメに「獣害」が入ってくるようになり、本書についてや他の事件を紹介している動画も数本見ました。

これは本を読むべきであると決意して大きな本屋さんを回って、ようやく発見!!


表紙の羆がすでに怖いです。



ここからは事件の概要や自分の読後の感想文になりますので、「これから読みますよ!」な方は、読後にお読み頂けましたら幸いです♪


本書に沿った事件の概要を絡めて・・・

土地自体が痩せている上に、イナゴの大量発生でせっかく出来た畑の作物も食い尽くされ、娘がいたら人売りせざるを得ないような地域がありました。

人々の惨状を耳にした官公庁の人が、北海道の苫前村という未開の地へ開拓の名の下に移住を提案します。

地域の人々が先遣隊を派遣して下見をしたところ、川沿いの平坦な土地であり、畑を作ったとして水に困ることもなく、川魚も獲れる期待があり、空気も澄んでいて虫の大発生も無い様子。

そこで地域ごと移住を決めて住み始めます。

いざ住み始めると冬の北海道の凄まじさを経験することになります。

山林から切り出した材木を蔓で組み立て、草で囲み樹皮の屋根をふいた粗末な掘立小屋。本格的な冬の前に薪や備蓄の食料を準備し、住まい同様の粗末な衣類で厳しい冬を越す日々が続いていました。


事件は大正4年12月に起こります。

とある家の外に備蓄していた、干したとうもろこしに最初の被害が出ます。

これを皮切りに、集落が恐怖に席巻され、凄惨を極めた羆の餌食となって行きます。


既に観ていた動画は本書をなぞるものが多いと思いましたが、本を読む方が確実に迫るものがあります。襲われる描写の凄まじさはギョっとゾッとさせられます。

そして仕方ないにしても亡くなった被害者の方の扱われ方も、自分が親族だったらと思うと何も考えられなくなるだろうと思いました。

他の被害者を出さないため、羆への囮として、餌として放置されるのです。

姿が見えない羆に怯える様、惨状の大きさに成す術の無さ。。


被害報告が上がり、少し離れた豊かな村落から銃を持った人が「お気楽に」やってきますが、全く役に立たず。

さらに警察が隊列を組んでやってきますが、ただただ翻弄されるのみ。

そこで、評判がすこぶる悪く、相手にするには相当な気持ちで対峙しないといけない離れた村に住む羆討ち名人の男に地域の長が助けを求めます。

聞く耳を持ってくれないと思っていたところに、色々な思いを秘めた羆討ち名人がやってくるところから、事件は動いて行きます。


本書の舞台は日本獣害史上最大の惨事と呼ばれている「苫前三毛別羆事件」です。

恐らく動画や記事検索をすると相当数がヒットすると思います。

本のタイトルの「熊嵐」と名称される現象はひょっとしたら「オカルト」と思われるかもしれませんが、体験した方々じゃないとわからないことだと思いました。

仕留めた羆の「処理」はいたたまれないものがありますが、それが「仕来り」であるため、実行することが仏になった人への供養であったり、土地に根付くことへの説得力となります。



今は動物の生活圏へ人間が侵蝕しています。

気候変動による動物の生態系の変化も著しいです。

季節になり、山へ山菜取りへ出掛けたり、以前は立ち入らない場所へひょいひょいと人間が立ち入っては、熊被害に遭う人が後を絶ちません。

本書の時代とは環境や情報量に格段の違いはありますが、被害自体は今もニュース・新聞で見聞きすることと殆ど同じです。

動物園で見る動物も時折野生を発揮します。

それが「本性」だと、きちんと知っておくべきだと思いました。


「大丈夫!」が「まさか」、「こんなことに」ならないため、危ういと思ったら引く勇気、逃げる勇気、助けを早くに求める勇気。


野生の本能の前に人間は無力です。

人と獣の住み分けの意味。

生死の分かれ目は、ちょっとしたことからだと思い知らされました。


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