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【読書】 頭脳明晰っぷりと社会のひずみ。 ~ 赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。 青柳碧人 ~

日本昔話を元にした上記の面白い推理小説に続く、アンデルセン童話を元にした推理小説です。

これから本をお読みになる方は、読後にまたいらして頂けましたら幸いです!


ストーリーは童話でお馴染み、赤ずきんちゃんが主人公です。

かごにパンとワインを携えて、おばあさんのお家に行くのではなく旅をしています。

その辺りは2時間サスペンスドラマ的な雰囲気ムンムンであり、必然的に謎解きもセットとなります。

赤ずきんちゃんはとある目的を遂げるべく旅をしているのですが、道中、アンデルセン童話でお馴染みのお話とその登場人物による事件やそれに伴い死体と遭遇してしまいます。


主軸になるお話は4篇。

赤ずきんちゃんが森で出会ったシンデレラと一緒に、魔女の手助けにより社交界デビューを飾って王子様にウットリしてみたり・・・

お腹の空いた赤ずきんちゃんが宿と食事を求めて訪ねたお宅で、既に事件の起こっているヘンゼルとグレーテルと出会い、お菓子のおうちの密室殺人の謎解きに挑んだり・・・

まだまだ目的地への途中なのに、ばったり出会った車椅子のおじいさんを助けたばっかりに、おじいさんの身内の濡れ衣を果たすべく人肌脱ぐことになりつつ、お城で眠る美女のお姫様の失踪も並行して探したりしながら・・

最終目的地で成金状態のマッチ売りの少女に囚われたりします。

これだけの情報で赤ずきんちゃんの万能感が伺い知れますね。

赤ずきんちゃんは相当イカス個性と頭脳を発揮しています。


それぞれの事件の発生理由は、ほぼほぼアンデルセン童話のそれと同じです。

理不尽な意地悪をされたり、家を追い出されそうになったり、長らくの秘密がバレそうになったり・・・といった可哀そうな理由によります。


読後に社会問題も風刺しているんだと思いました。

昔からあることですが、ネグレクトであったり、そこからの負の連鎖による精神的支配、世襲や名声を保つための体制作りの為に何かを踏み外してしまったり。

赤ずきんちゃんが後生大事に持っている「かご」の中身と、マッチ売りの少女が「マッチを灯す」ことには深い理由が潜んでいます。

誰が悪いとか、何でこうなってしまったのか。

牧歌的な雰囲気とシビアな理由の落差に考えさせられます。

そして「むかしむかしあるところに、死体がありました。」で、「なるほど!!」っとヒザを打つ謎解きシーンがまたも展開されます。

アンデルセン童話に沿っているので現実的じゃない部分は多分にありますが、事件に至ってしまった理由は現代社会と遜色ありません。

改めてアンデルセン童話も合わせて読みたくなりますよ!


「赤い靴」なんて、病院の待合室で子ども向けを読みましたが、すんごいですよね・・。




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