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~多くの方が排尿のお悩みなく、安心して過ごせるようにしたい~ 排尿を予測できる機器「DFree」を開発  DFree株式会社 代表取締役 中西 敦士

今回は、膀胱を見える化し、排尿を予測する世界初の機器「DFree(ディフリー)」の開発販売を行う、DFree株式会社 代表の中西さんにお話を伺いました。

この記事の要点
・「DFree」は超音波で膀胱の状態を常時モニタリングし、排尿を予測できる
・起き上がり検知やデータ分析機能があり、ケアに直接活かせるアドバイスが可能
・個人向けと医療・介護施設向けの2種類を展開しており、特定介護用品にも認定


中⻄ 敦士(なかにし あつし)
1983年生まれ。大学卒業後、 医療分野も含む新規事業立ち上げコンサルティングファームに従事。その後、青年海外協力隊に参加。2013年よりUCバークレー校でビジネスを学び、2015年DFree株式会社を設立。著書に、「10分後にうんこが出ます―排泄予知デバイス開発物語―」(新潮社)

―まず御社の会社概要から、ご説明をお願いします。

当社は2015年に設立し、ミッション「世界を一歩前に進める」、ビジョン「バイタルテクノロジーで”Live Your Life”を実現する」を掲げ、排泄ケアを総合的にサポートする会社です。排泄予測デバイスの「DFree(ディフリー)」の開発・販売に加え、排泄排尿ケアセミナー、業務改善コンサルティング、おむつ販売などを行っています。


―中西さんが起業されたきっかけやエピソードなどを教えていただけますか?

2013年にアメリカに留学し、引っ越し中に大便を漏らしてしまったことがきっかけです。その際に、二度と漏らさないようにするには、排せつのタイミングを予測することが大事だと気づいたことが、「DFree」の開発につながっています。

―それでは、御社のサービス「DFree」のご紹介をお願いします。

「DFree」は超音波の技術を使ったデバイスです。Diaper(おむつ) Free(自由・解 放)ということで、多くの方が排尿のお悩みなく安心して過ごしていただきたい、という想いを込めて開発しました。

現在の導入施設は累計約300施設、利用者は累計約8,000人です。在宅で使用できる「DFree HomeCare(ディフリーホームケア)」という商品が、2022年4月から特定福祉用具と介護保険の対象になりました。仕組みとしては、大きさ500円玉2枚分ぐらい、重さで単三電池1本分ぐらいのセンサーをお腹にペタッと貼ることによって、膀胱に今どれぐらい尿が溜まってるかを常時モニタリングすることができます。超音波の残尿測定器は既に他社製品でありますが、「常時モニタリングできる」という機能に特化した製品は、弊社が世界で唯一実現できています。

―世界で唯一というのはすごいですね。具体的に「DFree」にはどのような機能があるのでしょうか?

「DFree」のモニタリング機能では、尿の溜まり具合を10段階で表示して、「そろそろ出そうですよ」「出たかもしれませんよ」と通知します。また、見守り機能も搭載しており、ご利用者の起き上がりを検知することができます。

モニタリング結果を1週間程度観察していくと、例えば「食事の直前によく尿が溜まっている」や「尿を出し切るまでに時間がかかる」といった、ご利用者の傾向が分かってきます。それにより、「少し腹圧をかけて尿を出しやすい形にしてください」や「少し時間をかけて座らせてあげてください」といった、ご利用者に応じたケアに直接活かせるようになります。

トイレで排尿される場合には、最適なトイレ誘導の時間が分かるようになります。よくある課題として、トイレ誘導が遅れて、すでにパッドに尿漏れがあったり、逆に早くて空振りがあったりします。また、誘導の時はトイレに行きたくなかったけれど、その後、廊下で漏らしてしまったという話を聞いたこともあります。適切なタイミングでトイレ誘導することが非常に重要だと思います。

また、おむつで排尿される場合ですと、「DFree」で尿の溜まり具合を可視化することで最適なおむつ交換の時間が把握できます。おむつを確認する際に、すでに衣類まで汚染があったり、全く濡れてなかったり、おむついじりがあってシーツまで汚れている場合もあります。「DFree」を利用すると排尿のタイミングが分かるので、これらの課題解決につながります。

―実際に利用されてる方はどのような方が多いですか?

介護シーンに加えて、いろいろな用途でご利用いただいています。例えば、障害をお持ちのお子さんのトイレトレーニングに使っていただくケースもあります。30代、40代のビジネスパーソンの方からも、「頻尿で30分に1回トイレに行かないと気が済まなかったけれど、「DFree」があれば今(トイレに)行かなくて大丈夫ということが分かるので、トイレの回数が減りました」というお声もいただいています。

―様々な方がご利用されているのですね。介護施設側からしても、事前に排尿のタイミングが分かると対応もスムーズになりますよね。

そうですね。事前に分かるというだけではなくて、膀胱の状態が時系列で確認できるので、「あの時に残尿があったんだな」「タイミングがずれていたから失禁が多かったんだな」といったことが把握でき、ケアの方法を工夫することもできます。

―可視化されるというお話がありましたが、スマホアプリなどで確認できるのでしょうか?

タブレットやスマホ、パソコンの画面で見ることができます。

―個人向けと医療・介護施設向けで2種類あるかと思いますが、それぞれの特徴をお伺いできますか。

医療・介護施設向けの場合は、「DFree」を付けている方全員分のデータを1つの画面で確認することができますし、ソフトウェアで傾向分析もできるところが特徴です。
個人向けに関しては、「DFree」のデバイスと、タブレットのセットで提供していて、通信料が不要のBluetoothでデータ通信するため、付けている方のみのデータが分かるところが特徴です。

―実際にご利用いただいている方のお声をご紹介いただけますか?

アクティブシニアや要支援1、2の方ですと、トイレが不安で外出の機会が減ってしまったり、トイレの周りでしか生活できないという方がいらっしゃいます。「DFree」をご利用いただくことで膀胱の状態が見える化でき、「今トイレに行かなくても良いと分かるので、行動範囲が広がった」という感想をいただきました。

認知症の方では、普段は自分でトイレには行けるけれども、たまに忘れて失禁してしまうという方がいらっしゃいます。「DFree」で膀胱の溜まり具合を確認し、「そろそろトイレだよ」という風にお声がけをすることで失禁が減ったというお声は、特に在宅の方からいただきます。

また施設の場合、ナースコールで呼ばれたり、おむついじりや汚染があったりしたときに、「DFree」を利用していると詳しい状況が分かるので、「ケアの質やご本人のQOL向上に着実につながっています」というお声もいただいています。

―それでは最後にメッセージをお願いします。

多くの方が、排尿のお悩みなく、安心して過ごせるようにサポートしていきたいと思います。排尿にお困りの方は、お気軽に当社までご連絡ください!

・DFree株式会社について


*編集後記*
中西さんご自身の経験から、高齢化が進む日本社会を助ける製品の開発につながったストーリーが非常に興味深く感じました。デバイスを装着するだけで、排尿のタイミングを把握できるという即時的な効果だけでなく、データ分析を通じて長期的なケアの改善に役立てられる製品だと学びました。
中西さん、貴重なお話をありがとうございました!


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