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Looking back on 2023 | n'estate Journal

2024年4月。
n'estate journalが公式noteで連載をはじめてから1年が経ちました。

2023年度、1年間で公開した記事は全部で33本。

ライフスタイルが多様化し、より自分らしく、心地よい生き方について多くの人が考えるようになった昨今。それぞれが理想とする「くらし」を実現するための「すまい」のかたちは、まさに十人十色。
ここでご紹介できているのは、その一部ではありますが、さまざまな立場から自分らしいくらしを実践する方々へのインタビューなどを通じて、n'estateメンバーにとっても新たな発見や、たくさんの気付きがありました。

今回は1年という節目のタイミングで、これまで反響の大きかった記事や、改めてみなさんに読んでいただきたい記事を中心にピックアップします。


「役に立つ」ものばかりを求めないこと。自然の中には、無意味なものが山ほどある。

ー解剖学者・養老孟司さん

箱根の「養老山荘」にて行われた解剖学者・養老孟司さんへのインタビュー。地方にもうひとつの拠点を持つことで得られる未来への可能性、子育てと自然の親和性や、多拠点居住がもたらす人間の“変化”についてお聞きしました。

養老:現代社会は、いわゆる「役に立つ」ものばかりを求めている。都会のオフィスに行けば、よく分かるでしょう。無意味なものはひとつも置いていない。でも、野山を歩いたら、目に見えるものすべて意味がわからないものなんですよ。石も転がっているし、木や草が生えているけど、「これは何するもの?」と聞いても返事はない。

何もかもに意味を求めるから、気を病んだりしてしまうんです。その考え方が、そもそも自然じゃないから。自然の中には、意味のわからないものが山ほどあるんです。こういうことも、自然の近くで暮らせば見えてくるでしょう。

その場所の色や香り、風や空気。それぞれのくらしがあることで、鮮明に感じることができる。

ーライフスタイリスト・大田由香梨さん

築190年の日本家屋〈シラコノイエ〉と東京の二拠点生活を送るライフスタイリストの大田由香梨さん。幸せや豊かさの定義が多様化する現代を軽やかに生きるための、すまいづくりの心得をお聞きしました。

大田:しばらく〈シラコノイエ〉を離れて帰ってくると、この場所の色や香り、草花や鳥、風や空気。すべてが変化しています。この感覚は、一か所に身を置いてしまっていると流れの中で気が付くことができないもの。二拠点で生活しているからこそ、その変化をより鮮明に感じることができますし、これもひとつの自然との向き合い方なのかもしれません。

ものや情報に溢れていることを、以前は重荷に感じることもありましたが、二拠点生活によって得られた俯瞰の視点によって自分にとって本当に必要なことに気が付くことができたのも、この生活がもたらしてくれた「豊かさ」のように感じています。

固定観念から自分を解放してみると、もっと生きやすい世の中になるし、人はもっと行き交うようになる。

ー株式会社SHONAI代表 山中大介さん

「n’estate」の提携拠点のひとつ、山形県鶴岡市の「ショウナイホテル スイデンテラス」を運営する株式会社SHONAI 代表の山中大介さんとプロジェクトリーダー櫻井による対談。地方創生のロールモデルとして注目を集める企業の視点から、多拠点居住と地方都市への可能性についてお話しいただきました。

山中:僕が「n’estate」のいいなと思うところは、すまいを自由にすることで、それ以外のいろんなものからも解放される、自由になるっていう発想。
多拠点居住も都市部の人たちだけのものじゃなくて、むしろ地方にいる人たちこそ、自分たちのすまいを流動化できるという発想をもっと持ってほしい。そうすることで地方のよさ、自分の住んでいる地域のよさの再認識にもなると思うんだよね。

これからの時代、個人が業務委託を受けて働くような社会になっていくし、そうやって優秀な人材が流動化して、面白い仕事やプロジェクトベースで人が集まってくるようになる。だからこそ、地方都市はもっと自由になるためにも、自分たちでちゃんと自走する経済をつくっていかなきゃいけないし、企業は(働き手にとって)面白い会社であり、魅力的な存在でいなければいけない。それが地方企業の経営者に課せられたミッションなんだと思っています。

▼未就学児の保育サービス付プラン「n'estate with kids」を利用したファミリーの「ショウナイホテル スイデンテラス」滞在レポートはこちら。

何かあったときに追い込まれてふさぎ込むんじゃなくて、もうひとつ逃げ込める場所がある人はきっと生きていける。

ー株式会社カラリト代表 平﨑雄也さん

「n’estate」の提携拠点のひとつ、長崎県五島市のホテル「カラリト五島列島」を運営する株式会社カラリト代表の平﨑雄也さんとプロジェクトリーダー櫻井による対談。五島列島の福江島に“Iターン移住”を決意した平﨑さんご自身のエピソードを交え、等身大の自分に戻れる「ふるさと」を持つことの魅力をお話しいただきました。

平﨑:現代社会って「逃げちゃダメだ」という感覚が、日に日に強くなってきている気がしていて。SNSで他人と比べるようになって、負けちゃいけない、見えない何かとの競争をずっと強いられているような。その強迫観念から解放された時に、ほっとできるんじゃないかな。

家族とか親戚とか、仕事仲間とかいろいろなつながりがあるけれど、損得勘定がない素の自分に戻れるつながりや場所があるかないか。
それを私は「ふるさと」という言葉でいつも表現するのだけれど、やっぱりもうひとつ、もうふたつのつながりを持っていることが必要で、それによって人の幸福度って変わってくると思うんだよね。

▼未就学児の保育サービス付プラン「n'estate with kids」を利用したファミリーの「カラリト五島列島」滞在レポートはこちら。

自分は何者なのか、何をしたいのか。まず「旗」を掲げてみることで、見えてくる光がある。

ー編集者・徳谷柿二郎さん

2017年に長野県に移住し、現在は長野市内でコワーキングスペースやスナックの運営を手掛けるなど活躍の幅を広げる編集者の徳谷柿二郎さん。地域に眠る面白いもの、ひと、こととの出会い方。その土地に住まう人が、もう一歩深く地域と繋がっていくためのヒントをお聞きしました。

徳谷:僕、若い子に対していつも話すことがあるんですけれど、「やりたいこと、悩んでいることがあるんだったら、とにかく(その活動に)名前を付けて旗を掲げろ」って。全く何も(興味が)ないって人はいないと思うんです。何かしら小さなものはあるはずで、それを見つけて、育てて、根付かせることが自己決定にも繋がるし、人を巻き込んでいく動機にもなる。

あとは、その“本気のスイッチ”をどう見せるか。都市でも田舎でもとことん可能性を模索してみて、結果として自分が腹落ちした環境で、チャレンジすればいいんです。全てを背負い込む必要はないかもしれないけれど、せっかくなら思い切ってやってみる。「ダメなら退く」というカードも持ち合わせながら、100%に近い状態で入り込む姿勢を見せた方が、人生は何倍も面白くなると思います。

「泊まる」だけでは分からない、街の景色が見えてくるのが「住む」ことの面白さ。

ークリエイティブディレクター・南貴之さん

東京、京都、福岡にすまいを構え、三拠点生活を実践されているクリエイティブディレクターの南貴之さん。「住む」ことでしか見えてこない街の魅力について、京都のお住まいでお聞きしました。

南:やっぱり「泊まる」のと「住む」のでは、感覚が違うし、見える景色も変わってくる。ホテルに泊まっていたら、近所にスーパーや薬局があることを考えないですよね。ご飯も観光客で賑わっているようなお店に行くと思うし。僕も最初の1年ぐらいは、楽しいから有名なお店にも行きましたけれど、そういうのはすぐ満足しちゃうんですよ。そうじゃない場所を探しはじめて、そこで出会った人たちのコミュニティがどんどんつながっていくのがやっぱり楽しい。

東京にいると、なんだか「詰まっちゃう」ことが結構あって。時間の流れも早いし、社長業をやりながら、自らデザインやクリエイティブを進める案件もいくつか抱えていたりするので、ときどき煮詰まっちゃう。そういうときに京都に来ると、突然時間の流れが遅くなる感覚があって。それはきっと、リラックスできているということなんだと思います。

場所を変えると、時間の流れが変わる。自分の時間の使い方を意識的に選び取ることが大事。

ーブックディレクター・幅允孝さん

京都のご自宅の一角を私設図書室&喫茶「鈍考/喫茶 芳(ファン)」として一般開放されている、ブックディレクターの幅允孝さん。「時間の奪い合いが激しい」という現代社会における“時間”との付き合い方について、本への愛情に溢れる幅さんならではの視点からお聞きしました。

幅:僕自身、時間の流れを自分で選べる状況が必要だったんだと思います。もちろん、仕事は仕事だからサクサクやらなきゃいけないときもある。僕も東京に戻ればあくせく過ごす日もあるのですが、一方で「今日はゆっくりと本を読むぞ」というときは、こういった場所で腰を据えて、長編小説を落ち着いて読めるようになってきました。

ふたつの言語で学習できる人を指す“バイリテラシー”という言葉があるんですけれど、僕の場合は言語ではなくて時間の流れを自由に、能動的に選ぶことができるようになった。時間の流れが早すぎると、泳いでるのか溺れているのか分からない状況に陥りがちだけれど、そんなときに自分のペースで「こっちに泳ごう」と選べる状態を確保しておくことが、すごく大事なんだと思っています。


いかがでしたか?
これまでご愛読いただいてきた方にも、これからお読みいただく方にも。『n'estate Journal』がみなさんにとって、これからの「くらし」や「すまい」について楽しく考えるきっかけとなりますように。2024年度の更新も楽しみにしていただければ幸いです。

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Photo:Ayumi Yamamoto

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