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生きるための呼吸と管楽器の演奏に必要なもの、ごっちゃになっていませんか?(#今朝の一言_ラッパの吹き方)

管楽器における呼吸の話はいつまで経っても尽きることがありません。
その理由は、説明する人(指導する人)が実のところあまりよくわかっていないからだと考えています。話をややこしくしているのです。

呼吸の仕組みはとてもシンプルだし、多分アウストラロピテクスの頃からそんなに変化していないと思うんですよ(直接会ったことないから知らんけど)。医学的にも、もはや専門的な話ではないでしょ。

で、管楽器における呼吸で最もややこしくしている原因が、以下の2点をごっちゃにしていることだと思います。

1.生きるための呼吸の存在
2.管楽器を演奏する際に必要な空気圧を高める行為

1は生まれてから今まで止まることなく繰り返されている空気を吸ったり吐いたりしている動作。誰に教わることなく人間もワンコもネコチャンも無意識下でみんなやってます。これは、酸素を取り入れて二酸化炭素を排出するために行なっている生きるために必要な行為です。

では、2の管楽器の演奏に必要なものとは何かと言うと「体内の空気圧を高める行為」です。体内(肺から口の中)にある空気を腹筋(腹圧)によって高めることで、唇を振動させるために必要な空気の流れを発生させる行為です。これは意図的に行わなければできません。

ここでちゃんと理解しなければならいのは、管楽器を演奏するために行う体内の空気圧を高める行為は呼吸と関係なくできる、ということです。

例えば声を出す行為もこれと同じです。体内の空気圧が高まることで声帯を振動させるための空気の流れを作り出して声を出します。
例えば突然友達に「おはよー!」と声をかけられて咄嗟に「おはよー!」と返事できますよね。吹奏楽部の謎呼吸練習みたいに、たくさん吸ってーーーー、はい「おはよー!」なんてことしなくても、声はいつでも出せます。なぜなら、体内には常に空気が存在しているからです。

肺や気管は真空になりません。しかし呼吸をしなければすぐに息苦しくなりますね。これは空気がなくなったのではなく「酸素がなくなったから」です。体は空気がほしいのではなくて酸素を求めています。ただし、その酸素は空気中の成分なので結果的に空気を体内に取り入れる必要があるわけです。ややこしいですか?

ですから、楽器から音を出す際に別に吸気(体内に空気を取り入れる運動)がなくても音は出せます。体内には成分はともかくとして空気は存在しているわけですから。

一方で、演奏していてブレスをたくさんしているのに息苦しいと感じてしまうのは、もうおわかりでしょう。空気が不足しているのではなく、生きるための呼吸ができていない=酸素を体内に取り込む行為が不完全だからです。

たくさん吸ってー、息止めてー、吐いてー
4拍吸って、4拍止めて、8拍で吐いてー

とか、申し訳ないのですが、何をしているのかちょっとよくわかりません。

人間の生きるための呼吸と、演奏に必要な体内の空気圧コントロールの線引きがゴチャゴチャになっているから、呼吸がいつまでもハッキリ理解できていないのだと思いますし、「呼吸法」という謎めいた言葉や呼吸の都市伝説化が起こってしまうわけです。

原理を知り、方法をシンプルに理解することが大切であると思っています。


荻原明(おぎわらあきら)

荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。