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管楽器のチューニングで「合ってないから合わせて」のアドバイスでは一向に合わない理由と対策

合奏やアンサンブルでハーモニーをより美しいものにしたい場合、何をすれば良いでしょうか。

(あ、すいません。今日は音楽の、それも演奏する側のお話です。ご了承ください)

多分、真っ先に考えるのはそれぞれのピッチを安定させることでしょうか。
あとは、音色や音量、少し詳しい人だと長三和音の第三音を低めに…なんて話題が出てくるかもしれません。

どれも正解で、全て大切な要素だと思います。

しかし、それらは「美しいハーモニーはどのような条件で構成されているのか」の視点による「完成形を分析した結果の提案」です。要は「こうすればハーモニーはキレイに聴こえるよ」という方法論。

そうした完成形に導ける方法や技術をすでに持っていて、実践できる奏者であればその提案で構わないのですが、そうでない場合、これらのアドバイスでは解決しない可能性が高いです。そしてその解決しない局面に遭遇する可能性のほうが高いです。ではどうするか。もっと根本的なポイントである「安定したピッチで演奏できない理由」に焦点を当てるのです。

中学校吹奏楽部のチューニングの話

僕が中学生の時の吹奏楽部は、30数名程度の人数にも関わらず合奏前のチューニングに1時間かかっていました。アンプにつないだキーボードから大音量でB音を鳴らしっぱなしにし、ひとりひとりその音を出して調整していきます。しかし、ほぼ全員ピッチが安定しません。
クラリネットはバレルとマウスピースが分離するんじゃないかというくらい抜いたり、トランペットも3cmくらい主管を抜いたりと、ほとんど全員が異常なハイピッチでした(僕も他人事じゃなかった)。
高い高いと言われ続けて、ひとりが何分もチューナー的ピッチが合うまで何度も音を出させる。この果てしない時間が苦痛で仕方ありませんでした。早く合奏しようよ。

しかもこのパターン、想像できる方も多いと思いますが、やっとのことで全員のチューニングが終わり、さあまとめましょうと全員でB音を鳴らすと、もうピッチめっちゃくちゃなんです。コントですよね。

「ピッチ高いから高くならないで」と言うアドバイス

なぜこのような状況になるのか。なぜこれほどまでにピッチが合わないのか。その原因を考えた際のアドバイスとして「みんなピッチが高いから高くならないようにして」とか「ピッチ高いから低めに鳴らして」と言ったところで解決なんてするわけがないのは容易に理解できることでしょう。解決するにはもっと根本的な「体の使い方」もしくは「楽器のコンディション」に問題があると考えるべきなのです。

個人レッスンで行なっていること

僕は個人レッスンで最初にチューニングのようなことをする場合が多いです。しかしこれはピッチを合わせることが目的というより「音を出すまでの体の使い方が安定しているか」を確認するために行なっています。
お仕事や勉強などで忙しい方は練習する時間がなく、前回のレッスンで行なったことがうろ覚えの場合もよくあります。それに関しては何も問題ないのですが、例えば腹筋のどの筋肉を使うのかによってその先の演奏が大きく変化してしまうために、その点を覚えていらっしゃるか、もしくは忘れて我流になってしまっているかを確認させていただいているわけです。

その確認を怠って、教則本や曲のレッスンに入ってしまうと、演奏にしくい(体の)環境で苦労してしまうことにつながるわけです。ご自身の実力を発揮できなければ自分自身も納得できないし、本来指摘される必要のなかったことを言われてしまう可能性が高くなるわけです。

ですから僕はレッスン時に表面的なこと、耳に聴こえてきたことを指摘するのではなく、良い時もそうでない時にもなぜ今この演奏になったのかをできるだけ観察し、仮説も含めてそれをすぐに生徒さんに公開、共有するようにしています。その上で一緒に研究や確認、実践をしていく、そんなレッスンスタイルです。

チューニングに話を戻すと

先ほど僕が中学生の時の解決しない長時間チューニングのお話をしましたが、ではどのようにすればみんなのピッチが合ったのでしょうか。また、最初のハーモニーを美しく奏でる場合もこれと同様だと思うのですが、真っ先に行うことは「体の使い方の確認」です。管楽器はどのようにして音が出るのかを正しく理解すること。そして呼吸の仕組みを正しく理解し、管楽器を演奏する際にどのように体を使えば良いのかを実践できるようにすること。
他には声に出して歌うこと。これもできるだけ良い発声を目指す必要があるし、そのための体の使い方をやはり理解して実践しなければなりません。ただ声を出すのではあまり効果は得られないと思っています。

もう一つは楽器のコンディションについて確認。規模の小さな公立中学校でよく見かけるのですが、楽器がボロボロでベコベコに凹んでいて、しかもメンテナンス方法を具体的に教えてもらっておらず、グリスの塗り方すらままならなかったり、マウスピースがどこのメーカーだかわからない大昔のメッキがところどころ禿げてしまったピッコロトランペットのような小さなスロートとカップのものを使って一生懸命苦労しながら音を出している子がこれまでに実際にいました。かわいそう。

そんな環境でピッチを合わせるなどできるはずがないのです。

このような最も根本的な部分に焦点を当てて、本当の意味での基礎力が安定していれば、ほとんどの場合ピッチというのは良い方向に響きます。実際レッスンでも最初に合わせようとしてもピッチが安定しなかった方に、再度呼吸の確認、腹筋の使い方、口の中の状態などひとつひとつ確認していくと、自然と同じ質、同じピッチの音が出るようになります。

「〇〇だから〇〇しないで」はアドバイスになり得ない

ですので、「ピッチが高いから高くならないようにして」はアドバイスではなく解決方法が含まれていない指摘です。これで解決するなら最初から解決しています。
しかしこの指摘、結構耳にします。「その部分、走ってる(テンポが合っていない)から走らないように気をつけて」「そこタイミングが合ってないから合わせて」など。

みんな走りたくて走っているわけではないし、タイミングは合わせようとしているのに、でもそれが実現できないのです。走っているのもタイミングが合っていないのもその事実を指摘するのではなく「そうなってしまう原因を瞬時に解明すること(仮説含む)」に視点を変えることが必要なのです。

走ってしまうのは音符の出だししか意識していない(音のキャラクターを明確に持っていないとか、音のリリース(終えるタイミング)の意識していない)からかもしれません。タイミングが合わないのはその前のブレスがその場面に合っていないとか、相手の呼吸を感じていないとか、客観的にしかテンポを把握していない、フレーズを感じていない、もしかするとその前に演奏している他の人の演奏が問題だったりすることもよくあります。

それらをどれだけ見抜くことができるか、それが指導者と言われる人には必要なのだと考えて、日々レッスンをさせていただいております。自分自身も日々研究と勉強です。

そんな感じで頑張ってますので、ぜひみなさんの所属する吹奏楽部や吹奏楽団などに呼んでください!パートレッスンでもセクションレッスンでも合奏でも。また、賛助で演奏サポートなどもしつつレッスンをすることもできますので、お気軽にお問い合わせください。

こちらのページに詳細を掲載しております。最下段にお問い合わせフォームもございます。

どうぞよろしくお願い致します。


荻原明(おぎわらあきら)

荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。