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ハーメルン【15】

これはフィクションです。
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ハーメルン【11】  ハーメルン【12】
ハーメルン【13】  ハーメルン【14】の続きです。


「いただきまーす。」
出来立てのうどんをふぅふぅ冷まして、ずるずるすする。
温かい麺が喉を通り抜けて、胃の中へ落ちていく。その感触を感じながら、なんてママに言葉をかけたらいいのか、頭の中を必死で探し回っていた。
「ママ、もう、どっかに行ったりしない?」
「あら?また、その話?ふふふ…。行かないわよ。そう言ったでしょ?」
「覚えてるの?」
「ん?覚えてるわよ。夕飯のお買い物には、もちろん行くわよ?」
どうやら、何日か前に僕と話した時のことを言ってるみたいだ。
さっき冷蔵庫の中へ行ってしまおうとしたことも、涙を流して謝ったことも覚えて無いのかもしれない。
「あぁ、うん。わかった。」
適当に相槌しながら、内心ホッとした。あんなことは覚えてて欲しくなかった。
心の隙間を狙われたんだ。ママのせいじゃない。ママが自分を責めるなんて絶対に嫌だ。

「ごちそうさま!」
「あら、もう食べちゃったの?」
「うん。みんな待ってるから。早く行かなきゃ。お買い物、行ってらっしゃい。」
「じゃ、ちょっと行ってくるわね。お茶とお菓子のおかわりは、キッチンに用意しておくから。」
「うん。わかった。」
僕は急ぎ足で部屋に向った。

「おまたせー。」
皆んなは、ボードゲームで盛り上がっていたけれど、僕の顔を見た途端、心配げな顔をした。
「ねぇ、ママは大丈夫だったの?」
「うん。何も覚えてないみたい。ノリちゃんが冷蔵庫に貼ってくれたステッカーのウサギ、ママのお気に入りだったんだって。喜ばれちゃった。ノリちゃん、ありがとね。」
「え~!そうなんだ。やったー!」
ノリちゃんは満足げにガッツポーズをする。
「ママは冷蔵庫の中に行こうとしたこと、覚えて無さそうなんだ。たぶん、催眠がすっかり解けたんだと思う。スッキリした顔だし、前のママに戻ったみたいだ。」
みんなは一斉にホッとした。
「これで、イズミちゃんのママの作戦がうまくいけば、完璧だね。」
コウくんはそう言うと、僕にサイコロを渡した。
サイコロを両手で包んで振ると手のひらの中でサイコロが躍った。
「えいっ!」
掛け声と一緒にサイコロを転がしてボードゲームをスタートした。

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