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ハーメルン【3】

これはフィクションです。
『ハーメルン【2】』のつづきです。
前編はこちら
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一ヶ月くらい過ぎたある日、帰り道にコウくんが言った。
「僕んちにも、ついに『冷蔵庫はハーメルン!』が来たよ!」
「えっ!そうなの?」
一斉に注目を浴びたコウくんの顔は得意げだ。
「うん!それもスペシャルエディションってやつ。癒やしの波動音が、CMのビリーの声なんだよ。『お疲れさま!』とか『おかえり!』とか言うんだぜ!」
へー、あの俳優さん『ビリー』って名前なんだ、知らなかった。
「パパには秘密なんだけど、ママは前からビリーの大ファンなんだ。うちの冷蔵庫はまだ全然壊れてなかったけど、新しい冷蔵庫は250%も省エネなんだって。ママがイロイロ調べてデータを見せたら、パパもそっちが良さそうだなって、買い替えることにしたんだ。」
「ビリーって日本語ペラペラだよね。どこの国の人?ハーメルンの国かなぁ?」
ノリちゃんがたずねる。
「『ハーメルンの笛吹き』ってドイツのお話しだよね。でも、ビリーはドイツの人じゃないはず。出身は秘密って聞いたよ。それに、ハーメルンもドイツの会社じゃないって。ママ言ってた。」
イズミちゃんが答えた。
「えっ?なにその『ハーメルンの笛吹き』って?」
コウくんもノリちゃんも僕も初めて聞いた。
「グリム童話とか…知らないの?」
「「知らなーい!」」
「みんな、もうちょっと本とか読んだら?図書館にもあるよ。」
やっぱりイズミちゃんって物知りだ。しっかりしてる。僕はみんなのやり取りをだまって聞きながら感心していた。
「じゃあ、ハーメルンはどこの国の会社なの?」
「それが全然聞いたことない国で、国名が難しくて覚えられないの。ママもそう言ってた。」
「「ふ〜ん。」」
 じゃ、やっぱりビリーはその国からやって来たのかな。秘密ってどうしてなんだろう…。そんなことを考えていたら、もう家の前だった。
 「「「バイバーイ!またねー!」」」
僕はみんなに手を振ると、玄関へ入って行った。



つづきはこちら
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