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ハーメルン【5】

これはフィクションです。
ハーメルン【1
ハーメルン【2
ハーメルン【3
ハーメルン【4】の続きです。

次の日、僕はママが心配で早く帰りたくてソワソワしていた。
「どしたの?なんか用事あるの?」
とイズミちゃんが聞いた。 
「ママが心配なんだ。最近様子がおかしくて。そう言えば、ノリちゃんちとコウくんちの冷蔵庫は何か変じゃない?」
「私のうちの冷蔵庫?変じゃないけど?」
「あ、僕のうちの冷蔵庫は返品されちゃった。」
「「「え!なんで?」」」
「ママがビリーに夢中で何回も冷蔵庫を開けたり閉めたりしてるから、パパにバレちゃった。パパってママのこと大好きだからヤキモチ妬いちゃって。あの冷蔵庫、もう返品は中古扱いになるって電気屋さんにも止められたんだけど、ママがあんな顔してるのは耐えられないんだって。代わりにBTSがCMしてる冷蔵庫を買うからって説得したんだ。BTSの声は出ないけどね。ママ、ビリーの大ファンだけど、BTSは大大大ARMYなんだよ。」
「BTS…?ARMY?」
「K-POPアイドルグループとそのファンの人達のことだよ。」
ノリちゃんがすばやく解説をいれる。
「なんでBTSは良くて、ビリーはダメなの?」
「僕はよくわかんないんだけど、BTS見てるママはあんな目じゃない、キラキラしてるって。でもビリーの声を聞いてるときは目がとろーんとしててあれはダメなんだって。」
そう言えば、コウくんちのパパとママは『おしどり夫婦』だってママが言ってた。
「コウくんのパパ、スゴイね。今度爪を切ったとき、ちょっともらってきてくれない?」
僕はコウくんにたのんだ。
「へ?なんで?何するの」
「パパの晩ごはんに混ぜる。カレーならきっとバレない。そういうおまじない、あるじゃん?」
イズミちゃんが口をはさんだ。
「『爪を食べる』じゃなくて『爪の垢を煎じて飲む』だよ。それに、おまじないじゃなくて『ことわざ』だし。」
「えっ、そうなの?」
がっかりだ。うちのパパも、もう少しコウくんのパパみたいになったらいいのに。
うなだれた僕を見てノリちゃんはニヤリと笑う。
「いいじゃん!試しにやってみようよ?」
「でもパパ、ママにいっつも『手は石けんで洗って!』って言われてるから、止めといた方がいいかもよ。」
コウくんは気まずそうに肩をすくめた。
イズミちゃんが
「子どもみた~い。」
って言ってみんな笑いだしたら、もう家の前だった。

「ただいま!!」
僕は大声で叫びながらキッチンに走った。
ママがいない?!と思った瞬間
「おかえりー!」
居間から声がして、僕はホッと胸をなでおろした。


つづきはこちら
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