幸福の思い出が哀しみに変わるとき
何も考えていないとき、ふと、昔の記憶がよみがえってくることがある。それも下の茜が生まれる前、麻衣が生まれた後のころだろうか。ぼくが運転して妻の千恵と3人で嵐山のあたりを車で移動している。何でそこにいたのかわからない。とにかく、3人で車に乗っている。幼い麻衣が悲しそうに「おせんべい食べたい。おばあちゃんに会いたい」と泣いている。今はこの世にいない千恵がなだめている。そんな記憶が何度も何度もよみがえってくる。強烈にその場に舞い戻って、ぼくも麻衣をなだめたくなる。そんな記憶などもう