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超採用難、少子化、賃金伸び悩み・・・高卒就職市場の待遇相場観の共有が有効な治療薬だと思うのですよ

高卒就職問題研究のtransactorlaboです。

1月も後半となりました。進学校では共通テスト後の2次試験の準備がまさに佳境を迎えておりますし、一方、進路多様校では3年生の進路がほぼ落ち着き卒業モード。進路指導室ではそろそろ現2年生の進路指導の検討に入る頃です。

求人事業者の方々、今年度の採用事業の結果はいかがだったでしょうか。全般的に昨年以上に厳しい状況であったことと思います。

私たち高卒就職問題研究transactor laboratoryは、全国の高卒求人をウォッチし、待遇相場情報を社会に供給する活動を行っています。それは次のような理由からです。

現在のルールでは高卒求人情報にアクセスできるのは仲介役である高校教育関係者のみであり、求職者である高校生は自由に見ることができません。また、求人事業者が得ることができるのは厚労省やハローワークが提供するざっくりとした統計情報ぐらいしかありません。このルールが高卒就職市場だけでなく日本経済全体に様々な好ましからざる影響を及ぼしています。

その良くない影響のひとつが「高卒賃金の最低賃金への貼り付き」と呼ばれる現象です。相場が分かる情報がないということは、「他社の求人条件がどれぐらいなのか」、「どれぐらいの条件を提示した求人が人を集めることができたか」が分からないという状況を生みます。そうなると求人条件設定の際に最賃ルールが重視されがちになります。

テスト勉強に例えると、「優秀点ラインがいくらかわからないから、赤点ラインさえクリアできればいいや」といった感じですね。

高卒求人をずっと見ていると、高卒給与と最低賃金の相関関係が分かってきます。

高卒月給=最低賃金時給×175時間(1ヶ月の標準的な労働時間)×1.1~1.2

要するに、高卒初任給は最低賃金の1割から2割増しぐらい、ということです。実際そのとおりで、例えば北海道。北海道労働局発表の令和4年3月卒業者の高卒初任給は17万4千円でした。

北海道の2020年10月改訂の最賃時給額861円
861×175×1.15=173,276円
ほぼピッタリ。

もうひとつ行きますか。
同期の大阪府の高卒初任給平均は18万8千円でした。
大阪府の2020年10月改訂の最賃時給額964円
964×175×1.12=188,944円
やはり範囲内に収まります。

こうした状況は全国的に当てはまり、しかも、長くずっと続いているものです。平成27年ごろから求人倍率が高騰し、3倍を超えるようになってからも同じです。これは高卒就職市場に競争原理が機能していないことをあらわすものだと考えます。これは「人手不足なのに賃金が上がらない」状況の一因ともなっており、この問題の改善には十分な相場情報の供給が不可欠だと私たちは考えています。

賃上げと少子化対策が国の課題として急激にクローズアップされてきています。この2つの課題の重要なキーは若者の所得向上です。それには高卒初任給の改善がなくてはならないと思うのですよ。

下のホームページから2022年度の相場調査結果データをダウンロードいただけます。充足率・月給・年収・日給換算・年間休日数の5項目について、それぞれ都道府県別・産業種別に集計してあります。具体的な数字を伴う相場観の把握は、高校生への指導支援にも、採用計画の再編にも有効だと信じます。お役に立てていただければ幸いです。


こちらのリンクは私たちもボランティア参加しているNPO法人「高卒進路デジタル」のホームページです。高校の先生たち向けのメディアですが、一般の方もご覧になれますので、一度ご訪問ください。


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