#24【症例報告】股関節前部のつまり感を取る。
股関節前部のつまり感を訴える方は比較的多いのではないでしょうか。
つまりの自覚は無いけど股関節が内転・内旋しにくいという方もかなり多い印象です。
股関節のつまり感は股関節の不安定性が要因としてあります。そして股関節の不安定性は変形性股関節症など重大な疾患につながる可能性もあります。
痛みが出ていないうちにしっかり治したいですよね。
今回は股関節前部のつまり感のある患者さんへの施術について、実際に最近あった症例を元に書いていきます。
ちなみに股関節不安定性については一度記事を書いていますので、是非こちらも御覧ください。
こちらの記事で紹介している「obligate translation」についての理解は球関節を診るうえで必須の知識だと思います。
1.ストレッチ時に股関節前部のつまり感があるバレーボール選手
アマチュアのバレーボール選手が今回の患者さんです。以下、Mさんとします。
Mさんは練習前後や日頃自宅でもストレッチをしようとするものの、右脚のつけ根につまる感じがしてストレッチが上手くできないと訴えていました。
半年前くらいに、低いボールを右膝をつきながらレシーブした際に、股関節に痛みが走ったのがきっかけかもしれないということです。
その後痛みは落ち着き、バレーボールのプレーにも支障はないもののストレッチ時の詰まり感だけはずっとある、といった状態です。
2.所見
痛みが出たきっかけとなったレシーブの姿勢は、左脚は立て膝、右膝を地面に付くような姿勢でした。右股関節だけでみると、伸展と外転が強制されるような肢位です。
股関節の内転と内旋の動きが非常に悪く、FADIRテスト陽性でした。
また臀部のストレッチを他動的にかけると(股関節外旋・屈曲・内転)、鼠径部に強いつまり感がありました。
また骨盤の後傾位が強く、日頃から股関節を外旋位で維持している様子でした。
3.施術
まずは殿筋群からゆるめていきました。骨盤の後傾と股関節の外旋が強かったためです。
中殿筋をしっかりゆるめます。
そして大腿筋膜張筋から大腿の外側にかけて、大腿骨を内旋方向に誘導するイメージでゆるめていきます。
中殿筋や大腿筋膜張筋は押されるとくすぐったいと言っていました。
ある程度ゆるんだところでFADIRテストを再度実施しましたが、変化ありません。
続いてハムストリングをしっかり緩めていきます。
ハムの硬結はかなり多く、押されたときの痛みも強かったです。骨盤後傾も強いMさんなので、ハムが日頃より短縮していることが想像できます。
ハムをひとしきり緩めた所で再度FADIRテストを実施すると4割ほど股関節のつまりが解消していました。ここで初めて内転筋をゆるめていきます。
大内転筋をしっかりゆるめていきます。こちらも硬結が多く痛みもなかなかありましたが、耐えられるギリギリの圧を加え、しっかりゆるめていきます。
一通り内転筋を緩めたところでFADIRテストを実施すると、つまり感なく最終可動域まで動かすことができました。
イメージ的には、ハムと内転筋をゆるめることで、大腿骨頭が臼蓋にしっかりはまり込むようになったという感じですね。
最終可動域まで動けるようになったところで、すかさず殿筋のストレッチを入れていきます。
施術前は殿筋ストレッチの際もつまりがありましたが、施術後はつまり感が出ることもなく伸ばすことができました。
4.施術効果の検討と解釈
今回、Mさんの股関節もobligate translationが悪さをしていたと想像されます。
そう考えられる理由は、つまり感が出るきっかけとなったレシーブをした際の股関節の肢位です。膝は地面についていたので股関節は伸展強制されたのです。
股関節が強制伸展され、伸展要素である股関節後方の組織が短縮し、obligate translationに陥っていた可能性はあります。
・・・まあ仮説に過ぎないですが。
しかし、詰まり感が取れたのも事実です。
股関節の前部のつまり感を訴える患者さんに対しては、ハムと内転筋をしっかりゆるめ、つまりが取れたところで殿部のストレッチ。
この流れが自分の中では王道になりつつあります。
患者さんの股関節のつまりで悩んでいる方がいらっしゃれば、是非試してみてください。
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