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#41【奇形八脈】八脈交会穴治療について。「後渓ー申脈」

奇経八脈の治療穴として、八脈交会穴があります。
八脈交会穴は、2つの経穴を組み合わせてセットで施術します。
今回は、督脈ー陽蹻脈の八脈交会穴治療について紹介します。

督脈と陽蹻脈の生理作用や治療について先に読んでおくと、理解が進みやすいかもしれません。リンクを貼っておきますので、是非ご覧ください。


1.八脈交会穴の治療システムについて

督脈と陽蹻脈の八脈交会穴は、それぞれ「後渓」と「申脈」です。
後渓は「手太陽小腸経」の経穴であり、申脈は「足太陽膀胱経」の
経穴です。
このシステムの本質は、同名経治療であるということが言えます。

どちらも太陽経という同じカテゴリーに属しており、この2穴への施術によって太陽経脈が活性化されるということです。つまり、手足の太陽経が走行する背部の気の流れが全面的に良くなるのです。

膀胱経は脊柱を挟んで縦に流れている経脈です。太陽経の気の流れが良くなるというのは、この膀胱経の気の流れが良くなるということです。
ここで、督脈と膀胱経の経絡は隣接しており両者は小絡や孫絡で接続されているというように考えられます。よって、膀胱経の気の流れが良くなることで督脈の気の流れも改善されることが想像されます。

したがって、太陽経である小腸経に属する「後渓」が督脈の治療穴として選ばれているということが言えます。また督脈と陽蹻脈がセットになっているのも、陽蹻脈は「膀胱経の別脈」と呼ばれている点から合点がいくかと思います。

2.臨床における「後渓ー申脈」の用い方

「後渓ー申脈」の組み合わせは、手足の太陽同名経の脈気を活性化させるため、身体の背面全体および頭部・前額部の治療ができます。
これらの部位の愁訴としては、腰背部痛、首の寝違え、筋緊張性の頭痛、眼精疲労に伴う目の奥の痛みなどがあります。

申脈は腰痛によく効果を発揮すると言われています。陽蹻脈は経筋との関係が強いため、経筋病の症状に対してよく効くのです。
また後渓が属する手太陽小腸経は肩から頚にかけて走行しており、頚の寝違え時の屈曲・伸展障害に効果が高い経穴です。

また、2点治療により手足の太陽同名経を活性化させることで、督脈の脈気を疎通する効果も期待できます。これは督脈上の圧痛の除去に力を発揮します。後渓と申脈に刺鍼した状態で、督脈上の経穴に施術をするのが良いようです。

督脈上の経穴は棘突起間に存在しますが、棘突起間はしばしば狭窄していることがあります。狭窄した部分については気の流れも滞っていると考えられます。このとき、「不通則痛」から督脈上の経穴に圧痛反応が出現します。
督脈上の圧痛が強い穴に施術をする際は、灸施術が無難だと言われています。灸施術をすると患部がゆるみ、棘突起間の隙間も開いてきますので、ゆるみを確認した後必要があれば施灸するのが良いようです。

さらに、督脈は脳髄までつながる経脈であり、陽蹻脈は体の運動に関与する経脈であります。これらのことから、「後渓ー申脈」の組み合わせは脳脊髄疾患に伴う体の運動機能低下の症状にも効果が期待されます。
脳血管障害時の片麻痺に、この八脈交会穴の組み合わせが応用されています。

3.まとめ

まとめますと、「後渓ー申脈」の組み合わせ治療は、太陽経脈を活性化させる選穴となっています。
そのため太陽経脈上に起こる愁訴に対して効果を発揮します。具体的には、腰背部痛、首の寝違え、緊張性頭痛、目の疲れ・痛みなどです。
また棘突起間のつまりなど、督脈上の問題にも効果的だと考えられます。
督脈の脈気が疎通されれば、中枢神経系由来の運動器疾患にも効果を発揮する可能性があります。脳血管障害による片麻痺などにも適用となる治療だということが言えます。

最後に、督脈と陽蹻脈の適応症について紹介して終わります。

督脈の適応症
脊柱上の症候・頭痛・眩暈・健忘・腰背部痛・遺精・遺尿・インポテンツ

陽蹻脈の適応症
運動器疾患(腰痛・五十肩・顔面の麻痺)・片麻痺による下肢症状(外反尖足)・嗜眠・視力低下

参考文献
高野耕造,2022,臨床に役立つ奇経八脈の使い方(第2刷),東洋学術出版社

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