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#35【奇経八脈】陽蹻脈の流注、生理作用、治療について

前回は陰蹻脈について紹介しました。今回は陰蹻脈とは対になる陽蹻脈について書いていきます。
教科書的には奇経八脈それぞれが陰陽などの関係には無いとなっていますが、高野先生は奇経八脈も陰陽や五行の関係に当てはめることで見えてくるものがある、という立場です。

ですので、陽蹻脈は陰蹻脈と陰陽関係で捉えると理解しやすくなるかと思います。また陰蹻脈に比べて整体施術で扱いやすいのが陽蹻脈だと思います。その辺はまた別記事で書けるといいなと考えています。

とりあえず、陽蹻脈について、行ってみましょう。


1.陽蹻脈の流注と経穴

陽蹻脈は「膀胱の別脈」と呼ばれています。陰蹻脈が「腎」だったのでここも腎と膀胱の関係だと見るとやはり陰陽関係にあると言えそうですね。

流注は膀胱経のそれと似ていますが、それは体幹〜下肢までだけです。肩から上は手の陽経と胃経に乗り換えています。これは陽蹻脈の生理作用から考えると、なぜこうした流注になっているのかも理解しやすくなります。

陽蹻脈に含まれる経穴は陰蹻脈よりも多く、膀胱経の申脈・僕参・跗陽そして睛明。胆経の居髎。肩からは小腸経の臑兪、大腸経の肩髃と大巨、胃経の地倉・巨髎・四白・承泣。最後に再び胆経の風池まで伸びます。

2.陽蹻脈の生理作用

陽蹻脈の生理作用は、陰蹻脈と陰陽の関係にあるということから、陰蹻脈と対になる作用であると考えられます。
蹻脈は「足従り目に至る」ということから、腎経筋の滋養と睡眠(脳の休息)がその生理作用でした。これらに対抗するのが陽蹻脈の作用となります。

まず腎経筋に対して膀胱経筋の滋養が考えられます。ただし陽蹻脈は肩から上に関しては膀胱経以外の経絡を通っています。このことから膀胱経筋だけを滋養していると考えるのは不十分です。
腎経筋は腸腰筋や傍脊柱筋など体幹部の筋でしたがこれはインナーマッスルとも言い換えられます。すなわち陰蹻脈のインナーマッスルに対してアウターマッスル、これが陽蹻脈が滋養しているという考えで良いでしょう。
具体的には股関節や肩関節といった可動域の広い関節を動かす筋肉です。加えて顔面部にも繋がっていますので、表情筋の滋養も陽蹻脈の働きと言えそうです。

陰蹻脈の睡眠に対抗する陽蹻脈の作用は、覚醒(脳の活動)です。その為、陽蹻脈は嗜眠の治療に用いられると言われています。
睡眠は陰蹻脈に気が満ちることで起こるのに対して、覚醒は陽蹻脈に気が満ちることで起こるのです。

3.陽蹻脈の治療

陽蹻脈は肩関節や股関節を大きく動かすアウターマッスルを滋養している奇経八脈なので、肩関節や股関節の疾患に効果を発揮する可能性があります。
「足」という字が入っていることから、特に腰部や股関節の疾患には高い効果を発揮すると考えられます。

膀胱経筋とは、体の後面を走る筋肉だと考えられ、下腿三頭筋やハムストリング、脊柱起立筋などが想定されます。ハムストリングを施術すると股関節の可動域が改善することは経験的に知っていますが、この陽蹻脈による膀胱経筋の滋養という観点でそれが説明できるかもしれません。

また反り腰のような起立筋が過度に収縮している状態は陽蹻脈の実証というように見れるかもしれません。反り腰で腰が痛いというような方には、陽蹻脈を写すという視点で施術するのも面白いかもしれませんね。

具体的な経穴は申脈や跗陽でしょう。申脈は八脈交会穴であり、跗陽は郄穴です。陰蹻脈と同様に経脈の疎通を促すという見方で、睛明も同時に施術するといいかもしれません。

4.おわりに

整体をしていると、腓骨の可動性の無さやハムストリングの緊張が股関節の可動域を制限しているように感じることが多々あります。外果の下方に腓骨の可動性の低下が顕著に感じられるような気がしていましたが、そこはちょうど申脈のあるポイントでした。

申脈のポイントを押さえながら足首を動かすことで足関節の可動性が改善され、それに伴って股関節の動きも改善していくのは、今回の陽蹻脈の流注や生理作用とリンクしてくるところなのでとても興味深く感じています。

陽蹻脈についても陰蹻脈と同じように整体をしながら、施術に活かしていけるかを検証していこうと思っています。

参考文献・記事
◯高野耕造 臨床に役立つ奇経八脈の使い方 東洋学術出版社
◯伝統鍼灸一滴庵ブログ 不眠の原因を東洋医学的にどうとらえるか?その3(https://ittekian.com/blog/%E4%B8%8D%E7%9C%A0%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%9B%A0-3/

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