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#19【膝蓋腱炎】膝蓋腱炎(ジャンパー膝)の原因と施術

前回は、膝蓋腱炎について復習する記事を書きました。

その中で膝蓋腱炎は、大腿四頭筋の遠心性収縮が原因になるというのがポイントだと言いました。
しかし同じように練習をこなしていながら、膝蓋腱炎になる選手もいればならない選手もいます。
ということは膝蓋腱炎になってしまう選手には、膝蓋腱に負荷がかかるような要因が必ずどこかに潜んでいるはずです。

整体で膝蓋腱炎の方を施術する際に重要なのは、膝蓋腱への負荷を減少させるような姿勢をつくってあげることです。
その為には、膝蓋腱への負荷を高めている要因を解消しなくてはなりません。
今回は、膝蓋腱炎のリスクになる体の状態とその施術について書いていきます。


1.膝蓋腱への負荷を考えるポイントは重心だ。

膝蓋腱への負荷を減らすというのは、言い換えると大腿四頭筋の遠心性収縮を最小限に抑えるということです。
では大腿四頭筋の遠心性収縮が大きくなってしまうのは何故でしょうか。

私は「重心」が大きく影響していると考えています。
筋トレの話になりますが、「スクワットをするときには膝を前に出さないようにしましょう」というのを聞いたことがあるかと思います。
これは膝の怪我を防ぐためなのですが、何故膝が前に出るといけないのでしょうか。

人の体の重心というのはおおむねお尻の少し前あたり(仙骨の前方)にあります。
それはスクワットをしたときも同様で、常にお尻のあたりにあります。
人がしゃがむ際、膝を支点と考えると重心が大腿骨を押し下げるようなカタチになります。
その時に膝が前に出てしまうということは、膝から重心までの距離が遠くなってしまうということです。

長い棒の先に重たい荷物をくくりつけると持ち上げるのが大変なように、膝から重心が遠く離れてしまうと膝にかかる負荷は大きくなってしまいます。
スクワットする際に重心が体の後方に残っていると、大腿四頭筋の遠心性収縮を強めてしまいますので、膝蓋腱に過度な負荷がかかり膝蓋腱炎を発症してしまうということです。

2.重心が下がる原因はハムストリングの柔軟性不足である。

膝蓋腱炎を発症する選手は、ジャンプの着地やストップ動作時に重心が後方に残るような姿勢になっています。
そして、重心が後方に残るのは何故かと言うと、まず例外なくハムストリングの柔軟性が不足しているからです。

ハムストリングの柔軟性が低下すると、股関節を屈曲させることができません。
股関節から体を折りたためないので、スクワットをすると上半身が起き上がってしまい、その結果重心が後方に残ってしまいます。重心が後方に残ると大腿四頭筋の遠心性収縮が強くなってしまいます。
さらにハムストリングには膝を屈曲させる作用もありますので、膝を屈曲方向に引っ張ることで大腿四頭筋の遠心性収縮はさらに強まってしまいます。

またハムストリングの柔軟性が不足しているのは、そもそも股関節を屈曲させる腸腰筋の機能が低下していることも考えられます。
主動作筋と拮抗筋には相反神経支配という関係があります。主動作筋が収縮すると、反射的に拮抗筋は弛緩するようになっています。
つまり、腸腰筋の筋力発揮ができないがために、ハムストリングの柔軟性が低下している可能性もあります。

いずれにせよ、ハムストリングの柔軟性不足が膝蓋腱炎を引き起こす最大の要因だと私は考えています。
ですので、整体施術をする際は、ハムストリングの柔軟性を改善させるような施術を行います。

3.膝蓋腱炎の患者への施術

膝蓋腱炎の患者への施術の狙いはハムストリングの柔軟性改善です。ざっくりと狙うのは以下の3点です。

①ハムストリングの筋緊張の緩和
②股関節屈曲筋である腸腰筋の筋緊張の緩和
③股関節屈曲の制限となる大腿筋膜張筋や内転筋の筋緊張の緩和

3-1.ハムストリングの筋緊張の緩和

ハムストリングをしっかり揉捻して緩めていきます。特に起始部・停止部周りや内側外側ハムストリングの筋間、腓腹筋との筋膜連結部などを揉捻するとハムストリングがゆるんできます。

3-2.股関節屈曲筋である腸腰筋の筋緊張の緩和

相反神経支配が働くためには腸腰筋の筋収縮が必要ですので、腸腰筋にも施術していきます。
腸腰筋の走行をイメージしながら鼠径部から腹部にかけて押圧していきます。
腹部ですのであまり強い刺激はかけません。硬結部位があれば、重点的に押圧します。

3-3.股関節屈曲の制限となる大腿筋膜張筋や内転筋の筋緊張の緩和

意外と盲点なのは、股関節屈曲の制限を別の筋肉がしているために、腸腰筋が収縮できなくなっているというパターンです。代表的なのは大腿筋膜張筋や内転筋です。
腸腰筋が収縮できなくなるために、これらの筋の緊張が増しているということもあります。
(これは鶏が先か卵が先かという話です)
大腿筋膜張筋や内転筋の硬結部位をしっかり押圧します。強い痛みを伴うことがありますので、加減には要注意です。

以上のような施術をすれば、ストレッチをせずとも股関節屈曲の可動域が変わります。
私は施術前と施術後にSLRテストで股関節の屈曲可動域を確認しますが、しっかり筋緊張が取れていればストレッチをしなくても可動域はかなり変わります。

ここまで施術して股関節の屈曲ができるようになったところで、私はハムストリングのストレッチをしっかり入れます。
以上のような流れで施術をすれば、膝蓋腱炎の痛みはその場で改善します。
しゃがめないほど膝が痛かった選手が、しゃがめるようになることも珍しくはありません。

今回の記事のような知識を持っていれば、膝蓋腱炎に対して自信をもって施術できるようになると思います。
いつも通り文字ばっかりの記事となりましたが、是非イメージしながら読んで頂き、施術に活かしていただければと思います。
現代人でハムストリングの柔軟性が不足していない方はまずいませんので、膝蓋腱炎以外の症状でも応用が効く内容だと思います。

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