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『How the Mighty Fall』衰退する企業の共通点

『How the Mighty Fall』/ Jim Collins

「世界最高の経営思想家」と名高いJim Collins (ジム・コリンズ)先生の名著。日本語版タイトルは『ビジョナリー・カンパニー③ 衰退の五段階』

本書は著者の前作『Good to Great』の対ともいえる本になっている。『Good to Great』では成功する組織の法則が描かれたのに対して、本書で描かれるのは衰退する企業の共通点。

前作『Good to Great』についてのまとめと併せて読んでほしい。

衰退の5段階

本書では衰退のための5つの段階が提示されている。

1. 傲慢になる
不思議なことに、実力が伴わないのにも関わらず成功してしまうということがある。その時のブームに乗っかって成功を収めたり、幸運が重なり良い成績を収めたりするなど。その時に「これは俺の実力だ!」と思い込む。そして次々と新規事業に手を出し失敗する。

2. 成長のための成長を追い求める
成長の味をしめてしまうと、次も次もと成長を追い求めるようになる。しかし、成長とは結果であって目的ではない。本来の企業の能力に見合わない目標に邁進しようとする。それは持続不可能な成長を招く。

3. ネガティブな情報を否定する
この段階になると衰退の兆候が表れだす。しかし傲慢になり成長を追い求めるあまり、組織内ではネガティブな情報は排除される。周囲がイエスマンだらけになってきたら危ないかも。

4. 起死回生の一手を求める
衰退の傾向がいよいよ隠し切れなくなってくる。一発逆転を狙って夢のような解決策に頼ろうとする。当然ながらうまくいくはずがない。

5. あきらめる
再生のための気力を失う。事業を畳むことや、売却することを考えるようになる。

詳細は別記事でケーススタディとともに紹介する予定。

衰退を避けるために知るべきこと

・長期の繁栄を築いた組織であっても、衰退は起こり得る
これは歴史が証明している。長期間にわたり支配を続けた帝国も衰退する。『Good to Great』ではGreatな企業として紹介された企業が、本書では衰退企業の一例として紹介されてもいる。

・フレームワークに当てはまらない衰退企業もたくさんある
悲しいことに、成功を収める企業と比較して衰退する企業の数はあまりに多い。そのため本書で紹介される衰退のフレームワークに当てはまらないケースも多いという。とはいえ、衰退の「主流」を知ることは成功するために重要な視点といえるだろう。

・衰退は避けることができる
今、自分の所属する組織が衰退の法則に当てはまっているからといって嘆かないでほしい。どの組織にも多かれ少なかれ当てはまるものである。傷が浅ければ立ち直ることもできる。事実、衰退寸前から不死鳥のように復活を遂げた企業も存在する。

まとめ

テレ朝の番組に「しくじり先生」という有名な番組がある。テレビをほとんど見ない僕ではあるが、好きな番組の一つだったりする。

本書は、しくじり先生ならぬ「しくじり企業」を教えてくれる。成功した組織のありがたい話を聞くのも悪くないが、失敗した組織からこそ学ぶことができるものも多くある。企業の失敗を体系的にまとめ上げた本書も、前作『Good to Great』に負けず劣らず名作であるといえる。

多くの組織にとって、偉大な成功例をマネすることは難しい。それならば逆に失敗例を研究し、「こうなりたくない!」という観点から方向性を決めてもよいと思う。

良い反面教師を持つことは、時によい師匠に出会うことよりも貴重なことだ。失敗しないためにも歴史から学んでいこう!

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