高齢者は歩けばいいの嘘

コロナの勢いも(安全かどうかの根拠はさておき)一先ず落ち着きつつある東京。
屋外ではマスクも外すなどの指針(?)が示されるなど、徐々に日常を取り戻す方向に進んでいる今日この頃。
とはいえ、下げ止まっているこの状況はリスクの高いご高齢の方々にとってはまだまだ不安の絶えない日々なのかもしれません。

引き続き、リスクの低い世代の我々(いやアラフィフの私はすでにリスク群か!?)には思いやりのある行動が求められるのかもしれません。

さて、
この頃は昼間の治療にいらっしゃる患者さんの顔ぶれにも、年齢層の高い患者様が増えてまいりました。
「お久しぶりです~!」といらっしゃる面々には相変わらず元気いっぱいな方も多い反面、足取りが怪しくなってしまった方もチラホラ。

膝や腰が痛むとご来院のAさん(80代女性)。
たどたどしい足取りで、とても痛々しい状態です。

調べてみると右膝には内側側副靭帯と鵞足と呼ばれる膝の内側の故障が、左膝には軽い腸脛靭帯炎が見つかりました。

腰は変形性腰椎症に起因する痛みのようで、伸展動作(後ろに反る動作)や側屈動作で腰椎部の痛みを訴えます。

切っ掛けとなるような出来事はないか伺ったところ、
健康のためにウォーキングを始めたとのこと。

大股で元気よく1万歩目指して歩き続け、ようやく1万歩が見えてきたころから膝や腰が痛みだしたんだそうです。

それでも歯を食いしばって歩いていたらとうとうパンクしてしまったわけです。

健康のためにウォーキングを始める

これ、筋力の落ちてしまったご高齢者にはよくある間違いなんです。
いや、ウォーキングが健康に悪いってことではないんです。
低体力状態の高齢者が筋力を取り戻すためにウォーキングを選ぶというのが間違いなんです。

それは、なぜか。

Aさん、膝と腰を痛めていらっしゃいますよね。
高齢者の筋力低下の特徴に、大殿筋と(内側広筋)の筋力低下が挙げられます。これらの筋肉はそれぞれ、腰椎(正しくは仙腸関節)や膝関節の安定性を担う筋肉です。
そして、ここが重要なんですが…これらの筋肉は比較的強めの運動で働く筋肉なのです。
これら腰や膝を守る筋肉たちは「しゃがんだ姿勢から立ちあがる」とか「階段を上がる」とか「軽く走る」といった動作では鍛えることができますが、「歩く」ことでは鍛えることができません。
つまり、ウォーキングでは膝や腰を守る筋肉はつかないんです。
それどころか、大殿筋や内側広筋(四頭筋)が弱いままウォーキングを頑張ると、腰椎や膝関節の「がたつき」を抑えることができずに痛めてしまうこともあるんです。
これ、けっこうよく診るケースなんです。
なので、高齢者でなくとも筋力が低下している方はいきなりウォーキングを長距離・長時間行うのではなく、足腰の筋トレから始める必要があるんです。

では何をすればいいのでしょうか?

答えは簡単です。
SQUAT(スクワット)を行いましょう。

特に高齢者(低体力者も)におススメなのが「スロースクワット」です。
以下に動画資料を貼っておりますので、よかったら試してみてください。
高齢者であっても適度な筋トレは健康に多くの効果をもたらしてくれます。

認知機能・記憶力の改善(ボケ予防)
動脈硬化の改善
抗がん作用
関節の保護

身体機能全般が高まれば日常の活動にも幅が広がりますし、人生も豊かになること間違いなしです。
ウォーキングよりもずっと短時間でより多くの効果を手にできますので、ぜひ、筋トレに時間をさいてみてください。


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